私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

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第二部

13:猫又さま帰路につく

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 わたしは名刺をキャリーケースのポケットに入れて、病院を出た。
 涙はまったく引っ込まなかった。お会計の時も、病院を出るときも、看護師さんに心配されたぐらいには泣いていた。
 今も、帰り道が重い。ミケは喋らない。たまに、くしゃみは聞こえるけど。
 話しかけても答えは返ってこないのはわかってる。
 まだお昼なのに、空気が淀んで見える。

(どうしよう)

 もちろん、正解はわかってる。
 
(そうだよ。わかってるけど、口に出したくないんだよ)

 先生たちがこれからのことを考えてくれているのはわかってる。
 これは、先生たちがわたしたちに出来る、一番の協力なのも。
 ミケのことを知っていて、その秘密だけじゃなくて、健康も守ってくれようとしてる。
 それは先生たちにしか出来ないことだから。
 もう一人の娘さんが動物看護師なのも、猫又の秘密を、これからを、守ってくれようとしてるから。

(なのに)

 大粒の涙が絶え間なく頬を流れて、頬を伝って、落ちていく。

 たまに通りかかる人がわたしを見てくるけど、それどころじゃない。

(ああ、本当に……)

 覚悟が足りないのはいつもわたし。

 ぽつ、ぽつ、

「……え?」

 涙とは違う、水の感触が手に触れた。

 慌てて顔をあげると、空に暗雲が立ち込めていた。

(……今日の降水確率って……?)

 ほぼ自宅で過ごしていたわたしは、天気予報を確認する日課がなかった。
 今日も確認していない。

 ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ、

 粒が大きくなる。

(――結界水が……!!)

 ざぁっと血の気が引いた。結界水は万能じゃない!


――『結界水とはいえ、水です。外に出るときは傘を忘れないようにしてください』


 ルナちゃんの言葉を思い出す。

「ミケ! ごめんね! 走るよ!!」
「にゃあ!?」

 わたしはキャリーケースを胸に抱えて、走る。家まではそう遠くない。

(お願い! 大降りしないで……!!)

 ぼつ、ぼつ、ぼつ、ぼつ、

 さっきの粒とは違う。線になってきた。

 ジリィ! と変な音がする。

 ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ……!!

 雷が鳴る。
 空が光る。

 そして。


 ――ザアアアアアアアアアアアアアアア!!

「あ……!」

 願いは通じなかった。空から無慈悲に水が降り注ぐ。そして。


 グルルルルルル!!
 ンナアオオオオ!!

 犬と、猫の唸り声。そして、

ガタガタガタガタ!! ミケの暴れる音。

「ミケ……!!」

 ――――フナアアアアアアアアアアア!!!!

 聞いたことのない、ミケの鳴き声。その首元で揺れるお守り。

 ジリィ! ジリィ! という音が、雨音よりも強く鼓膜を叩いた。

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