私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

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第二部

14:猫又さまと化け犬の遭遇

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 世界から取り残されたようだった。さっきまでまばらに居たはずの人の姿がない。あったはずの道も、家も、雨と闇に取り残されたかのように。

「ミケ……!」
「フナアアアア!!」

 ガタガタガタガタ!!

「ミケ!」

 手が震える。唇が、全身が、雨の冷たさだけじゃなくて。ミケと闇に放り出された恐怖に。ぬるりと現れた巨大な獣への恐怖に……!

 ――グルルルルルル!!

「っ、ひ……!!」

 赤い目。逆立つ毛。むき出しの牙が、わたしの目線の遥か上にある。
 これが、みんなが言ってた化け犬!?

「桜ちゃん! わたしを出すにゃ!!」

 ガタガタ!!
 暴れ続けるミケ。
 フ――! フ――! と息を荒げながら叫ぶ。出して、逃げてくれるならいい! でもミケは絶対にわたしを守ろうと無茶をする!! 出せるわけがない!!

「だめ……!!」

 わたしはキャリーケースをぎゅうっと抱え込む。絶対にミケを守る!!

「女、その猫を置いて行け」

 唸り声の後、化け犬が喋る。ミケを寄越せと言う。

「ぜったいに、いや!!」

 渡せない! わたしがミケを守る!!

(ルイくんが言ってたっ)

 ――『お前の言霊は『願う力』が異常に強い。少しの雑念もなく口にした願いは『引き寄せる力』になる』

 そうだ。わたしの『言霊』は強い!!

 ガチガチと歯がかみ合わない。
 それでも、すうっと大きく息を吸い込む。

 化け犬の大きな前足が迫る。跳ねのけないと……!!

「――――――渡さない!!」

 大きく、声を発した。喉が熱い……っ

「……!!」
「桜ちゃん!?」

 何かが、化け犬の前足を弾いた気がする。――だけど。

「っ……!」

 ズキンっと喉が引きつる。
 次の、言葉が、でない!? 弾いただけじゃ意味がないのに!!

「――この女からも九尾のにおいがするな」
「つ、つれていこう。ぜったい、みけ様、よろこぶ」

(!?)

 一匹じゃなかったの!? 化け犬がゆるりとぼやける。その後ろからもう一匹……!!

 ううん、それより。

(『みけさま』……?)

「『あの猫』は始末できたか?」
「う、う、に、にげた」
「逃がしたか。逃げ足の速い……」

 頭がぼうっとする。どういうこと……?

「桜ちゃん、桜ちゃん!!」

 ミケがわたしを呼ぶ。どうしよう。どうしたらいいの……!!

(わたしの『言霊』は……!)

 言葉にならなければ意味がない! 
 ジリィ! ジリィ! と、あの音はずっと鳴り続けてる。

 振り続ける雨音よりも、ずっとけたたましく。


「桜ちゃん!!」

 ミケの叫びと、わたしごと捕らえようとする化け犬の動き。
 それから、



 シャララ――ン――……

 いつかのガムランボールの音が、大きく響いた。

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