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第四部
09:引き寄せたエンディング
しおりを挟む『みけ』は化け犬たちの傷があったところを改めて確認している。
「完全に癒えてるな」
そう呟いて、ほっとしたように呟いた。この子たちの関係は詳しく知らないけど、お互いに大切な存在だというのは伝わった。
犬たちも今は落ち着いているのか、柴犬ぐらいの大きさでしっぽを振っている。
「この子たちは女の子と男の子?」
顔つきと声でそうかな、と思って聞くと、『みけ』は頷いた。
「そうだ、こっちが雌でこっちが雄」
凛々しいきつね顔で、耳が立っている子が女の子。狸顔で耳が垂れてる子が男の子だという。
どっちもしっぽがふさふさしてる。
「ふふ、可愛い~……いたッ」
思わずつぶやくと、ミケから猫パンチが飛んできた。
また浮気者って思ったんだろうな……。
「もう、ミケったら――、」
続けようとして、ふと考える。みけ、という響きが二人いる。これは後々不便だ。
うーん、と少し唸って、ひらめいた。
「キャリ」
いい名前では? と思って、少年の顔をした三毛猫をのぞき込む。
金色の瞳が真ん丸になって、こちらを見た。
「……は?」
「名前! 『みけ』だとうちのミケとかぶっちゃう。ほら、三毛猫ってキャリコキャットっていうし」
きっと、もう『みけ』は本当に望むように生きられる。だったら、新しい名前で生きてもいいんじゃないかと思った。
すると、ミケの表情がぱあっと明るくなった。
「キャリ! 響きが可愛いにゃ! 気に入ったにゃ!」
「呼びやすくていいな。わしもそう呼ぼう」
「おい!」
ミケにクロも便乗する。キャリは反論の声をあげるけど、もうこれは決定の方向だと思う。きょうだいたちがいいって言ってるし。
「――うん、まあ呼びやすいかも」
暫く考えるそぶりを見せた若葉も、頷いた。
「くそ、お前ら!!」
若葉も乗ってしまったので、キャリも諦めたっぽい。うんうん。いいね。
それを見ていた化け犬たちも大きく頷いている。
「みけ様……いや、キャリ様が楽しそうでよかった」
「よ、よかった、キャリ様、楽しそう」
化け犬たちが喜ぶ。
「そうだ、化け犬ちゃんたちには名前あるの?」
「名前らしい名前ではございませんが。わんこと呼ばれてました」
「お、おれは、わんたって呼ばれてた」
「それはまた……」
女の子がわんこ、男の子がわんたって……。記号じゃないんだから……。
「三毛猫にミケって名付けたお前がそれを言うか」
「うっ、その頃はまだわたしも小さかったもん」
「キャリコキャットからキャリをとるあたり、今でも安直だと思うけど」
クロに突っ込まれ、返したところで若葉にも突っ込まれる。あんたたちだって、さっきノってきたくせに。
「うるさいなあ。可愛いしいいじゃん」
「可愛いにゃ!」
そうそう、可愛いし解決! ミケも大賛成してるし。
「……ふん、なんでもいい。せっかくだ。犬たちにも名前をつけてくれ」
受け入れたらしいキャリはそう言ってわたしを見る。いや、こうやってまじまじ見ると……ほんとにこの子可愛いな……!?
(耳としっぽが動いてるのがほんとたまんないっ)
撫でたい衝動を抑えて、咳払いする。改めて、犬たちの顔を見る。
「そうだなあ、男の子がライトで、女の子がユメかな」
光と夢。うん、これから向かう先って思ったらいいかも!
「――ふむ。お前たちどうだ?」
キャリが確認する。ふさふさのしっぽは大きく揺れていた。
「ぜひ、今後はユメと」
「お、おれは、ライトか……いいな」
「……感謝する」
「ふふ、素直」
「笑うな」
「こんな風に終われるって思ってなかったから」
キャリがわずかにほほ笑むのを見て、安堵した。
本当は。もっと絶望的に終わるかもって思ってた。ううん。今だって、本当は解決してないことの方が多い。これからまたいっぱい悩むことがある。それでも。
「今日はいい日だなって」
「――なんだ、それは」
見上げた空は、とても澄んでいた。
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