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安寧の国、サクパ王国。その王都はパステルの建物が立ち並び、そのカラフルな美しさは王都に立ち寄った者達の目を楽しませる。
けれど、その王都より少し北にある小さな町を知る者は王都を美しいとは言わない。その小さな町、セレネは王都と対照的に白く、そして真に美しい地域だった。
白くスベスベした建物に白い屋根。その屋根や窓は微細な彫刻により美しく飾られている。全ての壁や道は手入れがゆき届き、花のような香りまで漂っていて、まるで夢の国のようだった。各建物の入り口には可憐な花の飾りがいくつも付いており、いくつか蕾もある。
その中で唯一、何の花も飾られていない一際立派な建物の、更に最上級の部屋で二人の商人は話をしていた。
ゆったりとしたソファに座り、少し珍しい香りのコーヒーを飲みながら、彼らは人形の踊りを鑑賞している。
いや、人形にしか見えない女の子が踊っている。白い肌は生まれつきか、魔法によるものか、それとも化粧のためかは分からないが、見事な剣舞を待っているにもかかわらず、汗ひとつ浮かばない。
亜麻色の髪に黄金の瞳、かすかに浮かべた笑顔は乱れることもない呼吸と相まって人形にしか見えない。
「素晴らしい。相変わらず、カサブランカの舞は見事だな、カルス殿?」
「フランセン殿のお墨付きとは、光栄でございます」
フランセンと呼ばれた男は中年の男性だが、太い眉に大きな鼻が特徴的で確かな年齢は分からない。一方、カルスはふくよかというより、コロコロとしており、これはこれで年齢不詳だ。
「貴族の身分を得たそうじゃないか?カルス殿のご息女は王立魔法学院には入られんのかな?」
「おかげさまで、これでようやく人並みといったところでしょうか。しかし、学院には口添えが無ければ流石に……」
「興味がおありなら、口添えはするがな」
「まさか……誠でございますか?」
「まぁ、そちらにも都合もあるだろう。私の気の変わらぬうちに色よい返事を頼むぞ」
にやりと笑ったフランセンに合わせて、カルスも笑顔を見せる。見返りが金ならば良いが。
カサブランカと呼ばれた娘とカルスはフランセンを門の前まで見送り、部屋に戻った。
部屋に何らかの魔法、例えば盗撮や盗聴の魔法が残されていないかを確認した後、ようやくカサブランカは声を発した。
「お父様」
カサブランカがそう声に出した瞬間、彼女の容姿は変化した。男性が好みそうな適度な凹凸のある体型はやや細身となり、髪は黒く目も黒く、圧倒的な美少女は一見地味で普通の女の子へと戻ってしまった。しかしその切れ長で黒目がちの意志の強そうな目は、彼女が只者ではないと物語っている。
「……リサ、お前を学院にやることにする。苦労をかけるが……よろしく頼む」
「承知しております」
リサは穏やかに微笑んだ。
カルスもその容貌が多少変化している。少し痩せ、顔色が幾分かのドス黒さを帯びている。病魔に蝕まれているそれであった。
サクパの国は長らく争いは無い。数百年前に近隣の異民族を統治した後は飢饉や災害すら無く、完璧な平和と言っても過言ではなかった。外交を必要としない豊かな内在資源があったが、それ以前に地形の問題で周りに大きな国がなく、隣国は遥か遠い、さらにこの国を治めた歴代の王は治世に長けていた。
その政策の一つがセレナの町だ。王都でも北部は商業地や歓楽街となっている。そこからのみ伸びた道の先に色を売る町、セレナを作った。女も男も性や芸を売る町は完全に管理され、清潔ではあったが闇は深い。
商品達はドールと呼ばれており、それらの仕事場であるドールハウスは元々貴族や貴族の位を買った商人がオーナーであった。彼ら多くのオーナー達は色々な事業の一つとしてそれらを所有していた。
己の趣味や仕事の接待、または貴族のお遊びのためにドールハウスは作られたものだったが、色々な事情でただの商人に払い下げられるようになり、近年は各ドールハウスに独自性が生まれた。
その中で最も成功したのが、カルスだった。カルスのドールハウスは色は売らない。つまり性交渉は行わない。色を売らないドールハウスはカルスのところだけだ。色を売らずとも、その芸とドールの美しさ、提供される食事の見事さに定評があった。商談やお遊びでも色を必要としない場合、正しくは女を買っていると思われたくない者達はカルスのハウスを重用した。そして、カサブランカを始めとするドールに魅入られるのだ。夫の仕事に帯同してきた妻がそのままファンになる事もある。
ドールは通常、売られてきたり孤児院でスカウトされた者達だった。だから、カルスの娘のリサがドールとして働いている事は一般的にあり得ない事であり、外に漏れてはならない。
容貌変化の魔法はかなり強い魔力が必要だ。リサは生まれ持った力で最も人気の出るであろう容姿となり、ハウスを支えている。生まれた時から身につけ続けている芸と、魔法による容姿でカサブランカはセレナ一の遊女と呼ばれていた。色を売らないからこそ、孤高の花として咲き誇っていた。
カルスのドールハウスは秘密こそ抱えていたが、ここ数年は順風だった。しかし、今はカルスの体には病魔が宿っている。色を売らないカルスのドールハウスをリサの秘密ごと守ってくれる後継者が必要となり、だから、カルスは貴族の身分を買って社交界でリサの相手を探そうとしていたのだ。
その矢先に王立魔法学院の話が降ってきた。昼は学院、夜はカサブランカとして働かねばならない事をカルスは娘に詫びた。
「皆のため、自分で選んだ道ですから。それにこれも母さまのお導きかもしれません」
異民族だった亡き妻もドール達を娘として可愛がっていた。だからこそ、カルスもドール達の色を売る事が出来なかった。それを理解している娘の健気さにカルスは思わず目頭を押さえた。
「お父様、今日はお疲れです。お早めにお休みくださいまし」
優しく微笑んだままリサは部屋を出た。
――――――――――――――――――――――――――
「お嬢様、学院に行くんだって?」
「あら、流石に耳が早いわね」
ハウスの裏にある自宅に戻ると、早速ヨンゴが声をかけてきた。ヨンゴはうちの情報戦の要だ。
「で、婿探し、本当にやるの?ああ、やらなさそうだね。その顔じゃ」
言われて気がつき鏡を見る。にやーっと悪巧みしてますというのがモロバレの顔だった。「オフとオンの差、相変わらず激しいね」とヨンゴはリサのおでこを弾いた。
「絶対しない訳じゃないわよ。にっちもさっちも行かなくなったら、ちゃんとやるわ」
「にっちもさっちもの前は?」
「もちろん、将来の金蔓確保よ。うちは表向き清廉潔白な場所だから、ここでの遊びを覚えてもらっても問題無いと思うのよねー」
「大有りだな。鐘(金)を突く突く(尽く尽く)ドラ息子を量産してどうする」
「ドラ娘でも良くてよ」
ヨンゴはやれやれとため息をついた。ヨンゴは二十歳は超えているが、その中性的な顔立ちは幼く十五歳のリサと同じ歳だと言っても通るレベルだ。
「ヨンゴも付いてくる?」
「まぁ、付人の登録はしとくけど……」
「女で?」
「そらそうでしょ。どっちか選べるんだから」
ヨンゴに性別は無かった。魔法でどちらの性にもなれるが、常は両性無具。ヨンゴはそれを生きる術にしていた。学院は貴族の位を持つ者しか行かないが、付人の帯同は許可されている。王族など以外はあまり学院内で連れて歩いてはいないかも知れないが……
「上手く立ち回って見せるわ。私一人でもこのドールハウスをやっていけるってお父様に安心してもらうの」
ドールハウス自体はヨンゴや他のドール、裏方皆で支えている。けれど、責任者に女、しかも若いリサ一人を置くような事は聞いた方が無い。前例が無いならば作るしか無いが、父親は良くも悪くもお人好しだ。リサからすれば、このドールハウスを理解できる異性に会うことの方が困難だと思っている。最悪、名前だけ結婚とか、手の上で転がせる相手を見繕うしか無い。母親もその母親も短命で、子を産んですぐに亡くなっている。リサはハウスの安定のために結婚して子を産むというのはリスクが高いと考えていた。
魔法も礼儀作法も学業もそれなりに自信はある。入学式をひと月も過ぎた今学院デビューでころぶ訳にはいかない。
リサは学院の情報を収集をヨンゴに指示した。
けれど、その王都より少し北にある小さな町を知る者は王都を美しいとは言わない。その小さな町、セレネは王都と対照的に白く、そして真に美しい地域だった。
白くスベスベした建物に白い屋根。その屋根や窓は微細な彫刻により美しく飾られている。全ての壁や道は手入れがゆき届き、花のような香りまで漂っていて、まるで夢の国のようだった。各建物の入り口には可憐な花の飾りがいくつも付いており、いくつか蕾もある。
その中で唯一、何の花も飾られていない一際立派な建物の、更に最上級の部屋で二人の商人は話をしていた。
ゆったりとしたソファに座り、少し珍しい香りのコーヒーを飲みながら、彼らは人形の踊りを鑑賞している。
いや、人形にしか見えない女の子が踊っている。白い肌は生まれつきか、魔法によるものか、それとも化粧のためかは分からないが、見事な剣舞を待っているにもかかわらず、汗ひとつ浮かばない。
亜麻色の髪に黄金の瞳、かすかに浮かべた笑顔は乱れることもない呼吸と相まって人形にしか見えない。
「素晴らしい。相変わらず、カサブランカの舞は見事だな、カルス殿?」
「フランセン殿のお墨付きとは、光栄でございます」
フランセンと呼ばれた男は中年の男性だが、太い眉に大きな鼻が特徴的で確かな年齢は分からない。一方、カルスはふくよかというより、コロコロとしており、これはこれで年齢不詳だ。
「貴族の身分を得たそうじゃないか?カルス殿のご息女は王立魔法学院には入られんのかな?」
「おかげさまで、これでようやく人並みといったところでしょうか。しかし、学院には口添えが無ければ流石に……」
「興味がおありなら、口添えはするがな」
「まさか……誠でございますか?」
「まぁ、そちらにも都合もあるだろう。私の気の変わらぬうちに色よい返事を頼むぞ」
にやりと笑ったフランセンに合わせて、カルスも笑顔を見せる。見返りが金ならば良いが。
カサブランカと呼ばれた娘とカルスはフランセンを門の前まで見送り、部屋に戻った。
部屋に何らかの魔法、例えば盗撮や盗聴の魔法が残されていないかを確認した後、ようやくカサブランカは声を発した。
「お父様」
カサブランカがそう声に出した瞬間、彼女の容姿は変化した。男性が好みそうな適度な凹凸のある体型はやや細身となり、髪は黒く目も黒く、圧倒的な美少女は一見地味で普通の女の子へと戻ってしまった。しかしその切れ長で黒目がちの意志の強そうな目は、彼女が只者ではないと物語っている。
「……リサ、お前を学院にやることにする。苦労をかけるが……よろしく頼む」
「承知しております」
リサは穏やかに微笑んだ。
カルスもその容貌が多少変化している。少し痩せ、顔色が幾分かのドス黒さを帯びている。病魔に蝕まれているそれであった。
サクパの国は長らく争いは無い。数百年前に近隣の異民族を統治した後は飢饉や災害すら無く、完璧な平和と言っても過言ではなかった。外交を必要としない豊かな内在資源があったが、それ以前に地形の問題で周りに大きな国がなく、隣国は遥か遠い、さらにこの国を治めた歴代の王は治世に長けていた。
その政策の一つがセレナの町だ。王都でも北部は商業地や歓楽街となっている。そこからのみ伸びた道の先に色を売る町、セレナを作った。女も男も性や芸を売る町は完全に管理され、清潔ではあったが闇は深い。
商品達はドールと呼ばれており、それらの仕事場であるドールハウスは元々貴族や貴族の位を買った商人がオーナーであった。彼ら多くのオーナー達は色々な事業の一つとしてそれらを所有していた。
己の趣味や仕事の接待、または貴族のお遊びのためにドールハウスは作られたものだったが、色々な事情でただの商人に払い下げられるようになり、近年は各ドールハウスに独自性が生まれた。
その中で最も成功したのが、カルスだった。カルスのドールハウスは色は売らない。つまり性交渉は行わない。色を売らないドールハウスはカルスのところだけだ。色を売らずとも、その芸とドールの美しさ、提供される食事の見事さに定評があった。商談やお遊びでも色を必要としない場合、正しくは女を買っていると思われたくない者達はカルスのハウスを重用した。そして、カサブランカを始めとするドールに魅入られるのだ。夫の仕事に帯同してきた妻がそのままファンになる事もある。
ドールは通常、売られてきたり孤児院でスカウトされた者達だった。だから、カルスの娘のリサがドールとして働いている事は一般的にあり得ない事であり、外に漏れてはならない。
容貌変化の魔法はかなり強い魔力が必要だ。リサは生まれ持った力で最も人気の出るであろう容姿となり、ハウスを支えている。生まれた時から身につけ続けている芸と、魔法による容姿でカサブランカはセレナ一の遊女と呼ばれていた。色を売らないからこそ、孤高の花として咲き誇っていた。
カルスのドールハウスは秘密こそ抱えていたが、ここ数年は順風だった。しかし、今はカルスの体には病魔が宿っている。色を売らないカルスのドールハウスをリサの秘密ごと守ってくれる後継者が必要となり、だから、カルスは貴族の身分を買って社交界でリサの相手を探そうとしていたのだ。
その矢先に王立魔法学院の話が降ってきた。昼は学院、夜はカサブランカとして働かねばならない事をカルスは娘に詫びた。
「皆のため、自分で選んだ道ですから。それにこれも母さまのお導きかもしれません」
異民族だった亡き妻もドール達を娘として可愛がっていた。だからこそ、カルスもドール達の色を売る事が出来なかった。それを理解している娘の健気さにカルスは思わず目頭を押さえた。
「お父様、今日はお疲れです。お早めにお休みくださいまし」
優しく微笑んだままリサは部屋を出た。
――――――――――――――――――――――――――
「お嬢様、学院に行くんだって?」
「あら、流石に耳が早いわね」
ハウスの裏にある自宅に戻ると、早速ヨンゴが声をかけてきた。ヨンゴはうちの情報戦の要だ。
「で、婿探し、本当にやるの?ああ、やらなさそうだね。その顔じゃ」
言われて気がつき鏡を見る。にやーっと悪巧みしてますというのがモロバレの顔だった。「オフとオンの差、相変わらず激しいね」とヨンゴはリサのおでこを弾いた。
「絶対しない訳じゃないわよ。にっちもさっちも行かなくなったら、ちゃんとやるわ」
「にっちもさっちもの前は?」
「もちろん、将来の金蔓確保よ。うちは表向き清廉潔白な場所だから、ここでの遊びを覚えてもらっても問題無いと思うのよねー」
「大有りだな。鐘(金)を突く突く(尽く尽く)ドラ息子を量産してどうする」
「ドラ娘でも良くてよ」
ヨンゴはやれやれとため息をついた。ヨンゴは二十歳は超えているが、その中性的な顔立ちは幼く十五歳のリサと同じ歳だと言っても通るレベルだ。
「ヨンゴも付いてくる?」
「まぁ、付人の登録はしとくけど……」
「女で?」
「そらそうでしょ。どっちか選べるんだから」
ヨンゴに性別は無かった。魔法でどちらの性にもなれるが、常は両性無具。ヨンゴはそれを生きる術にしていた。学院は貴族の位を持つ者しか行かないが、付人の帯同は許可されている。王族など以外はあまり学院内で連れて歩いてはいないかも知れないが……
「上手く立ち回って見せるわ。私一人でもこのドールハウスをやっていけるってお父様に安心してもらうの」
ドールハウス自体はヨンゴや他のドール、裏方皆で支えている。けれど、責任者に女、しかも若いリサ一人を置くような事は聞いた方が無い。前例が無いならば作るしか無いが、父親は良くも悪くもお人好しだ。リサからすれば、このドールハウスを理解できる異性に会うことの方が困難だと思っている。最悪、名前だけ結婚とか、手の上で転がせる相手を見繕うしか無い。母親もその母親も短命で、子を産んですぐに亡くなっている。リサはハウスの安定のために結婚して子を産むというのはリスクが高いと考えていた。
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