チョイス伯爵家のお嬢さま

cyaru

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お使いをするお嬢様

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夕食の中、母がローゼに話しかけています。

「ローゼ。来週は王都に行ってテリーに会ってきなさい」
「お兄様に?どうして?」
「婚約をするそうよ。祝いを持って行って頂戴」
「お母様が行けばいいじゃないの」
「わたくしは離縁をした身です。如何なる事情があろうともドレイン伯爵家を訪れる事は出来ないのです」
「親子なのに?」
「えぇ、ドレイン伯爵家には貴女の御爺様、お婆様がおられます。貴女にはお爺様、お婆様ですがわたくしにとっては遺恨のある他人…としかまわりは見ませんからね」
「お貴族様ってややこしぃ~」
「貴女も貴族です。伯爵令嬢ですよ」
「はーい」
「返事は短く」
「軍隊かっ!」
「ローゼ‥‥言葉」
「はい、気を付けます」

夕食が終わり、部屋に戻ると小さなカバンに着替えを詰めます。
コンパクトにまとめますねぇ。慣れている感じですが伯爵領に来て5年。
実は何処にも行った事はございません。
荷物がコンパクトなのは、荷物そのものが少ないからです。

コンコン

「はぁい」

扉が開くとそこにはお爺様がいますね。

「どうしたの?お爺様」
「いや、コレでね。買ってきて欲しいものがあるんだ」
「何を買ってくればいいの?」
「チーター印の水ようかんだ」
「そんなのあったっけ?」
「王都名物じゃないが、馬車停の各地の名産コーナーにある」
「それ‥‥土産とは言わないような…」
「細かい事を気にしてはいかん。おつりは小遣いにしなさい」
「えっ?やった!お爺様大好き!」

御爺様が出て行って少しするとまたノックの音がします。

コンコン

「はぁい」

扉が開くとそこにはお婆様がいますね。

「どうしたの?お婆様」
「いや、コレでね。買ってきて欲しいものがあるのよ」
「何を買ってくればいいの?」
「ビーンズ屋のゴールデンカスティィィラよ」
「そんなのあったっけ?」
「王都名物じゃないけど、馬車停の各地の名産コーナーにあるの」
「それ‥‥土産とは言わないような…」
「細かい事を気にしては淑女の名折れよ。おつりはお小遣いにしなさい」
「えっ?やった!お婆様大好き!」

土産をそれなりの量買っても十分にお小遣いの出来たローゼ。
満面の笑みで王都への旅に出ます。
旅と言っても、乗合馬車を3回間違わずに乗り継げば王都です。片道2日の旅ですよ。

ガラガラと荷馬車の旅を終えると、田舎の伯爵領とは違って人が多いです。

「ん~っと…お兄様が来てくれているはずなんだけど…」

あたりをキョロキョロとしますが5年ぶりに会うのではなく兄に会うのは13年ぶりです。
ローゼが4歳の時に隣国の学園に入り、伯爵領に行ってから2年後に帰国した兄。
お互い見つけられるかなぁ・・・っと思ったら

【ドレイン伯爵家はこちら】

と書いた桃太郎旗を背中につけた男性がキョロキョロしています。
超目だっています。クルックゥなハトバスのお姉さんの旗より目立ちます。
お伽噺の桃太郎は本当に背中にこんな旗をつけていたのでしょうかね。

桃太郎旗の元にローゼは人の波に逆らうように近寄っていきます。

「こんにちは!チョイス伯爵家からきましたローゼです」
「えっ?貴女がローゼお嬢様‥‥大きくなられましたね」
「えぇっと‥‥どなた‥‥でしたっけ?」
「わたくしは家令のデザモンドでございます」
「あっ!思い出しましたわ!!デザモン!」

おいおい‥‥進化するボールに入るヤツじゃないんだから!!
なんという呼び方をしているんでしょうか。

「馬車は向こうに。お荷物をお持ちします」
「大丈夫。これだけだから!」

っと背中のリュックを見せるように半分だけ回転します。
難波のオバちゃんを彷彿させるようなヒョウ柄のリュックに思わず顔がひきつるデザモンドです。

☆~☆~☆~☆

「やはり‥‥いないか」

変装をした王太子殿下。少し離れた位置に護衛もおりますが休暇時期にはいり徐々に人の多くなる馬車停に来ております。
王太子殿下もキョロキョロとしておりますね。
落し物でもしたのでしょうか。

ふと、王太子殿下の目線が一点を凝視します。

「いた!多分そうだ!!」

その方向に向かおうとしますが、丁度観光ツアーの団体様が!しかもトイレは何処だとガイドを詰るオバちゃんたちの群れが王太子殿下の行く手を阻みます。
このオバちゃんの群れはまるで大移動するヌーのようです。横切れるものではありません。
トイレに急ぐオバちゃんの群れはもう敵などいません。無敵です。

ドドドドドド!!

オバちゃんの群れが途絶えた時、やっと見つけたと思った目標は消えています。
直ぐに護衛を!と思いましたが、オバちゃんの群れに襲われていると思った護衛は王太子殿下の盾となっており、立っているのがやっとの状態。

「仕方ないね。王都にはいるんだ。ゆっくり探すか」

盾となった護衛にご苦労と声をかけていましたよ。
優しいね。殿下っ!
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