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髪飾りを君に
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警戒をしながらも紳士のエスコートをするレイ君とローゼは人の沢山いる公園や、人で溢れかえるショッピング街などを堪能します。
田舎では絶対に売っていない何色にもなったソフトクリームも堪能します。
そして、別れの時刻がやってきます。
「ありがとう。そろそろ行かなくちゃいけませんわ」
「あっと、そうですねもう15時‥‥馬車停までは15分ほどです。歩けますか」
「えぇ。歩けますわ。ここからパルクールだって出来ますわ」
「パルクールって‥‥あの塀や手すりを飛び越えていくやつですか」
「えぇ。毎日そんな感じの生活ですもの、あの木だって登れますわ」
っと大きな銀杏の木を指さずローゼ。
クスリと笑うレイ君と銀杏並木を並んで歩きます。
「ここは年の瀬の聖夜祭になると夜も魔石のイルミネーションで飾りつけるのですよ」
「へぇ。そうなの‥‥綺麗だろうなとは思うけど可哀想ね」
今までそんな返しを聞いた事がないレイ君は驚きます。
「可哀想?どうしてです?」
「だって木だって夜はゆっくり寝たいって思うでしょう?明るかったら寝られないわ」
レイ君は木々を思いやるその言葉が当たり前のように口から出るローゼにまたもや胸がキュインと締め付けられます。
そして思い切って告白しようと…
「あの、ローゼ嬢…」
「あっ!馬車停ですわ!16番乗り場の札が見えますわ!」
ローゼの目には馬車停の自分の乗る馬車の位置を示す札しか見えていないと思うと切なくなります。
作者も読者様もいい加減鈍感すぎるローゼの後頭部をハリセンしたい気持ちでいっぱいですよ。
応援するから言っちゃえ!ギュゥゥゥって抱きしめちゃえ!
「ロ、ローゼ嬢…その…」
「うわっ!いけない忘れてましたわ!」
「どうされました?」
「お土産頼まれていますの。それにクルックゥサブレ―も買わないと!レイ君ごめんなさい。最後の最後なんだけど売り場ってどっちだったかしら」
レイ君は優しい目で背中のリュックから財布を取りだそうともがいているローゼを見つめます。
「動かないで。取ってあげますよ」
「本当?ネコさんの財布が入ってるの。取ってくださる?」
「えぇ。勿論」
そう言って背中をクルリと向けるローゼのリュックから財布を取り出します。
軽くまとめられた髪がレイ君の頬に吹いてきた風に乗って当たります。
「これですか」
「そう!ありがとう。えーっとね…ビーンズ屋の‥‥」
頼まれたと言うお土産リストが書かれた紙を財布から取り出すとブツブツ言いながら見ているローゼをまた優しい目で見つめます。
「こっちですよ。少し急ぎましょうか。行けますか」
「えっ?あぁ、大丈夫、パルクールでも行けるって言ったでしょう?」
「さぁ、人混みの中を横切りますから、手を。はぐれてはいけませんからね」
「はい。お願いしますわ」
レイ君の差し出した手に、ポンと置かれた細くて白くて柔らかい手。
レイ君はそっと壊れ物を手に取るかのように優しく握ります。
大量の土産物をカートに名前を確認するとポンポンと入れていくローゼを見ていると、ふいに一つの髪飾りに目が留まります。
自分の瞳と同じ色の翡翠がついた髪飾り。
ショーケースに入っていてそれなりのお値段がついておりますが、レイ君は近くにいた店員さんに声をかけ、その髪飾りを購入します。
大量の荷物に指先が千切れるぅぅぅっと涙目になっているローゼから荷物をさりげなく引き受けるレイ君。
【シャークレアゴ領行きの馬車はこっちだよー!】
【イキスーギタ領行きの馬車はこっちだよー!】
出立時刻の迫った馬車の御者が大声を張り上げていますね。
自分の乗る馬車の受付に切符を出すローゼ。
荷運び係に大量の荷物をバラバラにならないように紐で括ってもらうレイ君。
「ありがとう。本当に助かったし楽しかったわ!」
「いや、私も楽しかった。あの…ローゼ嬢よかったらこれを」
そっと差し出す翡翠の石がついた髪飾り。
「うわぁ綺麗ね。でも‥‥」
「貰ってほしいんだ。君と出会った記念に」
「いいの?」
「うん。つけても良いかな」
「えぇ。ありがとう。似合うかなぁ」
「似合うよ。とても似合っていると思うよ」
ローゼの髪にパチンとつけた自分の瞳の色の石がついた髪飾り。
レイ君、心なしか真っ赤になっていますね。
御者の声が聞こえてきます。
「じゃ、ありがとう。レイ君。元気で」
「うん。無事な旅を‥‥あの…ローゼ嬢、私は…」
言葉の途中で無情にも馬車が動き出します。思わずついて歩き出すレイ君ですが係員に止められます。
「こら!危ないだろう!動き出した馬車からは 離れるんだ!」
そんなレイ君を見てクスっと笑って手を振るローゼ。
レイ君も手を振り返します。
☆~☆~☆~☆
屋敷に戻ったレイ君。あれ?落ち込んでますね。どうしたんだろう?
田舎では絶対に売っていない何色にもなったソフトクリームも堪能します。
そして、別れの時刻がやってきます。
「ありがとう。そろそろ行かなくちゃいけませんわ」
「あっと、そうですねもう15時‥‥馬車停までは15分ほどです。歩けますか」
「えぇ。歩けますわ。ここからパルクールだって出来ますわ」
「パルクールって‥‥あの塀や手すりを飛び越えていくやつですか」
「えぇ。毎日そんな感じの生活ですもの、あの木だって登れますわ」
っと大きな銀杏の木を指さずローゼ。
クスリと笑うレイ君と銀杏並木を並んで歩きます。
「ここは年の瀬の聖夜祭になると夜も魔石のイルミネーションで飾りつけるのですよ」
「へぇ。そうなの‥‥綺麗だろうなとは思うけど可哀想ね」
今までそんな返しを聞いた事がないレイ君は驚きます。
「可哀想?どうしてです?」
「だって木だって夜はゆっくり寝たいって思うでしょう?明るかったら寝られないわ」
レイ君は木々を思いやるその言葉が当たり前のように口から出るローゼにまたもや胸がキュインと締め付けられます。
そして思い切って告白しようと…
「あの、ローゼ嬢…」
「あっ!馬車停ですわ!16番乗り場の札が見えますわ!」
ローゼの目には馬車停の自分の乗る馬車の位置を示す札しか見えていないと思うと切なくなります。
作者も読者様もいい加減鈍感すぎるローゼの後頭部をハリセンしたい気持ちでいっぱいですよ。
応援するから言っちゃえ!ギュゥゥゥって抱きしめちゃえ!
「ロ、ローゼ嬢…その…」
「うわっ!いけない忘れてましたわ!」
「どうされました?」
「お土産頼まれていますの。それにクルックゥサブレ―も買わないと!レイ君ごめんなさい。最後の最後なんだけど売り場ってどっちだったかしら」
レイ君は優しい目で背中のリュックから財布を取りだそうともがいているローゼを見つめます。
「動かないで。取ってあげますよ」
「本当?ネコさんの財布が入ってるの。取ってくださる?」
「えぇ。勿論」
そう言って背中をクルリと向けるローゼのリュックから財布を取り出します。
軽くまとめられた髪がレイ君の頬に吹いてきた風に乗って当たります。
「これですか」
「そう!ありがとう。えーっとね…ビーンズ屋の‥‥」
頼まれたと言うお土産リストが書かれた紙を財布から取り出すとブツブツ言いながら見ているローゼをまた優しい目で見つめます。
「こっちですよ。少し急ぎましょうか。行けますか」
「えっ?あぁ、大丈夫、パルクールでも行けるって言ったでしょう?」
「さぁ、人混みの中を横切りますから、手を。はぐれてはいけませんからね」
「はい。お願いしますわ」
レイ君の差し出した手に、ポンと置かれた細くて白くて柔らかい手。
レイ君はそっと壊れ物を手に取るかのように優しく握ります。
大量の土産物をカートに名前を確認するとポンポンと入れていくローゼを見ていると、ふいに一つの髪飾りに目が留まります。
自分の瞳と同じ色の翡翠がついた髪飾り。
ショーケースに入っていてそれなりのお値段がついておりますが、レイ君は近くにいた店員さんに声をかけ、その髪飾りを購入します。
大量の荷物に指先が千切れるぅぅぅっと涙目になっているローゼから荷物をさりげなく引き受けるレイ君。
【シャークレアゴ領行きの馬車はこっちだよー!】
【イキスーギタ領行きの馬車はこっちだよー!】
出立時刻の迫った馬車の御者が大声を張り上げていますね。
自分の乗る馬車の受付に切符を出すローゼ。
荷運び係に大量の荷物をバラバラにならないように紐で括ってもらうレイ君。
「ありがとう。本当に助かったし楽しかったわ!」
「いや、私も楽しかった。あの…ローゼ嬢よかったらこれを」
そっと差し出す翡翠の石がついた髪飾り。
「うわぁ綺麗ね。でも‥‥」
「貰ってほしいんだ。君と出会った記念に」
「いいの?」
「うん。つけても良いかな」
「えぇ。ありがとう。似合うかなぁ」
「似合うよ。とても似合っていると思うよ」
ローゼの髪にパチンとつけた自分の瞳の色の石がついた髪飾り。
レイ君、心なしか真っ赤になっていますね。
御者の声が聞こえてきます。
「じゃ、ありがとう。レイ君。元気で」
「うん。無事な旅を‥‥あの…ローゼ嬢、私は…」
言葉の途中で無情にも馬車が動き出します。思わずついて歩き出すレイ君ですが係員に止められます。
「こら!危ないだろう!動き出した馬車からは 離れるんだ!」
そんなレイ君を見てクスっと笑って手を振るローゼ。
レイ君も手を振り返します。
☆~☆~☆~☆
屋敷に戻ったレイ君。あれ?落ち込んでますね。どうしたんだろう?
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