10 / 44
姉が弟に託した大作戦
しおりを挟む
前日の夜に時間を巻き戻します。 ジーコジーコ。
あぁ、手動のゼンマイ時計です。作者がアナログなのです。スルーしてください。
宿屋に送ったローゼを思いながら屋敷に帰ってきたレイ君。
何時になく弟から生温かい風が吹いてくるのを姉のシュルペロローゼ(以下ルぺ)は感じ取ります。
「レイ、ご機嫌のようですね」
「姉上…ただいま戻りました」
「巡回はどうでしたの?変わった事はありませんでしたか」
「えぇ。酔っ払いのケンカと…客引きと…クックック」
どうやらドヴォルザー家は夜間の繁華街の巡回もしているようですね。
ですが、突然笑い出す弟にルぺは目が丸くなります。
「どうしたのです?笑い茸でも食べたのですか?」
ふとレイ君何かを思いついたようです。
姉のルぺは社交界でも名を知らぬ者がいないと言われるほどの女性です。
【蘭の君】と言えば姉、ルぺの事です。
「姉上、姉上は男性からの申し入れに応える時はどのようなアプローチをされた時ですか」
思わず持っていた扇を落っことし、途中まで下りた階段を踏み外そうになるルぺ。
あの堅物の弟が??雷鳴の貴公子と呼ばれ言い寄るご令嬢をバッチバチに黒焦げにする弟が??
「え、えぇっと…わたくしの耳に異常がないなら女性へのアプローチと聞こえましたが」
「えぇ。姉上ならどんな誘いをする殿方にと思いまして」
ルぺの頭の中は大混乱します。
WAIT!ウェイト!ウェイトッ!!待って。待って待って。
白い獅子ではないけれど!!お待ちなさい!わたくし思考回路が壊れたのかしら?
もしかすると先程からの生温かい風に鼓膜にカビが生えたのかしら!!
「ちょ、ちょっとお待ちなさい‥‥おかしいわ…ハァハァ‥‥不整脈かしら…」
「どうされたのです。姉上」
ハっとするルぺ。弟が近寄ってくるといつもは北極圏か!と思うようなトゲトゲの冷気を纏っているのに今の弟はどうでしょうか!!ポワっと丸くてフワフワした日向ぼっこのような温かさを感じます。
生温かい風の原因かこれか!っと危険を察知。トントントントン…重機の、いえ、省略します。
「レイ…あなたもしかして…」
「なんでしょうか」
「あ、姉のわたくしが言うのもどうかと思いますが…まさか‥‥恋?をしてるの?」
「恋‥‥あぁそうかも知れません。こんな気持ちは初めてなのでハッキリとは言えませんが…そうかも知れません」
ヒュっと息を止めるルぺ。
(認めた?ええっ?いえ、確かに認めたわ‥‥壊れたのかしら?世紀末?いえいえ一昨年新しい世紀になったばかりだわ…)
弟の瞳を見ると、それは恋をする瞳!!
(フォォォォ!弟にも!やっとやっと!春が来たのね!万年氷河期かと思っていた弟に!あぁ!神様こんな日を生きて迎える事が出来ようとは!!)
キリっと姿勢を整えたルぺは階段をゆっくりとしっかりおりてきます。
弟のレイの肩にバン!っと手を置くと
「よくやった。よくやったわ!我が弟よ!さぁ話してごらんなさい!どこのご令嬢なの?髪の色は?瞳は?身長は?スリーサイズはどう?足のサイズは?家族構成は??」
いやいや。。。前半は判るとしても後半をこの時点で知っていたらただのストーカーですよ!
知ってることがおかしいって!!
「髪はプラチナブロンドでこのくらいの長さで‥瞳は紫がかった赤で。155センチいや156かな。体重は食事前が44キロで食後は45を少し過ぎたかな…」
知ってるんかいー!!ヤバいやろ!何処で知った?広辞苑か?掲載されとらんわー!!
「多分…明日王都を観光すると思うのです」
ポっと頬を赤らめる弟に昔、手を引いて王子様ごっこをした事を思い出すルぺ。
(あぁ!こんな日が来るなんて!弟よぉぉぉぉ!萌える!燃える!任せなさい!姉様に任せなさい!)
と、言う事がありまして、夜中までさりげなく自分をアピールする服をコーデされた挙句、男性用パックで肌を整えられて、夜中の3時にまで及ぶ検討会議。
朝は使用人全員に父母を叩き起こし、小旗を振って見送ります。出征か!!
【勝ってくるぞと勇ましくぅぅぅ~♪】
使用人たちの勇ましい軍歌に見送られて出陣したレイ君。
☆~☆~☆~☆
ソファで茫然とするレイ君を見て、まさかあれほどの作戦が失敗か!?と駆け寄るルぺ。
「ど、どうしたのです!本命ガチガチの出来レース並みに的中したのでしょう?」
「姉上‥‥やってしまいました」
あぁ、幼い日を彷彿させる目に涙を溜めた弟。
女の子のような見た目の弟にドレスをきせて生きた着せ替え遊びをして泣いてしまった弟を思い出すルぺ。
「まさかノルマンディー作戦が失敗したの??」
え?一応名前つけてたんですか?ってか、作戦って何ですか!!
「髪飾りは受け取ってもらえたのです」
「弟よ!勿論その髪飾りの石の色は!!」
「僕の瞳と同じ翡翠のついた髪飾りです」
「イヤッシャー!よくやった!で?何をそんなに塞ぎこんでいるの?」
「帰ってしまったんです‥‥領地へ…」
「そんなもの!追いかければよろしい!で?何処に帰ったの?」
うるうるとした目で姉のルぺを見る弟レイ。
「東の方‥‥しかわかりません」
えぇぇぇ??っと思わず後ずさるルぺ。
国土のほぼ西よりに位置する王都。東の方は一番遠くて馬車で2週間。一番領地の数が多いです。
読者の皆様の世界でいうならば、北極点に居て「南に行った」と言われるくらいの数の多さと思ってください。
はぁっと肩を落とす姉のルぺ。それ以上に落ち込むレイ。
やっと春が来たと昨夜温かかったサロンは、雨季に入ったように涙で湿気ておりました。
あぁ、手動のゼンマイ時計です。作者がアナログなのです。スルーしてください。
宿屋に送ったローゼを思いながら屋敷に帰ってきたレイ君。
何時になく弟から生温かい風が吹いてくるのを姉のシュルペロローゼ(以下ルぺ)は感じ取ります。
「レイ、ご機嫌のようですね」
「姉上…ただいま戻りました」
「巡回はどうでしたの?変わった事はありませんでしたか」
「えぇ。酔っ払いのケンカと…客引きと…クックック」
どうやらドヴォルザー家は夜間の繁華街の巡回もしているようですね。
ですが、突然笑い出す弟にルぺは目が丸くなります。
「どうしたのです?笑い茸でも食べたのですか?」
ふとレイ君何かを思いついたようです。
姉のルぺは社交界でも名を知らぬ者がいないと言われるほどの女性です。
【蘭の君】と言えば姉、ルぺの事です。
「姉上、姉上は男性からの申し入れに応える時はどのようなアプローチをされた時ですか」
思わず持っていた扇を落っことし、途中まで下りた階段を踏み外そうになるルぺ。
あの堅物の弟が??雷鳴の貴公子と呼ばれ言い寄るご令嬢をバッチバチに黒焦げにする弟が??
「え、えぇっと…わたくしの耳に異常がないなら女性へのアプローチと聞こえましたが」
「えぇ。姉上ならどんな誘いをする殿方にと思いまして」
ルぺの頭の中は大混乱します。
WAIT!ウェイト!ウェイトッ!!待って。待って待って。
白い獅子ではないけれど!!お待ちなさい!わたくし思考回路が壊れたのかしら?
もしかすると先程からの生温かい風に鼓膜にカビが生えたのかしら!!
「ちょ、ちょっとお待ちなさい‥‥おかしいわ…ハァハァ‥‥不整脈かしら…」
「どうされたのです。姉上」
ハっとするルぺ。弟が近寄ってくるといつもは北極圏か!と思うようなトゲトゲの冷気を纏っているのに今の弟はどうでしょうか!!ポワっと丸くてフワフワした日向ぼっこのような温かさを感じます。
生温かい風の原因かこれか!っと危険を察知。トントントントン…重機の、いえ、省略します。
「レイ…あなたもしかして…」
「なんでしょうか」
「あ、姉のわたくしが言うのもどうかと思いますが…まさか‥‥恋?をしてるの?」
「恋‥‥あぁそうかも知れません。こんな気持ちは初めてなのでハッキリとは言えませんが…そうかも知れません」
ヒュっと息を止めるルぺ。
(認めた?ええっ?いえ、確かに認めたわ‥‥壊れたのかしら?世紀末?いえいえ一昨年新しい世紀になったばかりだわ…)
弟の瞳を見ると、それは恋をする瞳!!
(フォォォォ!弟にも!やっとやっと!春が来たのね!万年氷河期かと思っていた弟に!あぁ!神様こんな日を生きて迎える事が出来ようとは!!)
キリっと姿勢を整えたルぺは階段をゆっくりとしっかりおりてきます。
弟のレイの肩にバン!っと手を置くと
「よくやった。よくやったわ!我が弟よ!さぁ話してごらんなさい!どこのご令嬢なの?髪の色は?瞳は?身長は?スリーサイズはどう?足のサイズは?家族構成は??」
いやいや。。。前半は判るとしても後半をこの時点で知っていたらただのストーカーですよ!
知ってることがおかしいって!!
「髪はプラチナブロンドでこのくらいの長さで‥瞳は紫がかった赤で。155センチいや156かな。体重は食事前が44キロで食後は45を少し過ぎたかな…」
知ってるんかいー!!ヤバいやろ!何処で知った?広辞苑か?掲載されとらんわー!!
「多分…明日王都を観光すると思うのです」
ポっと頬を赤らめる弟に昔、手を引いて王子様ごっこをした事を思い出すルぺ。
(あぁ!こんな日が来るなんて!弟よぉぉぉぉ!萌える!燃える!任せなさい!姉様に任せなさい!)
と、言う事がありまして、夜中までさりげなく自分をアピールする服をコーデされた挙句、男性用パックで肌を整えられて、夜中の3時にまで及ぶ検討会議。
朝は使用人全員に父母を叩き起こし、小旗を振って見送ります。出征か!!
【勝ってくるぞと勇ましくぅぅぅ~♪】
使用人たちの勇ましい軍歌に見送られて出陣したレイ君。
☆~☆~☆~☆
ソファで茫然とするレイ君を見て、まさかあれほどの作戦が失敗か!?と駆け寄るルぺ。
「ど、どうしたのです!本命ガチガチの出来レース並みに的中したのでしょう?」
「姉上‥‥やってしまいました」
あぁ、幼い日を彷彿させる目に涙を溜めた弟。
女の子のような見た目の弟にドレスをきせて生きた着せ替え遊びをして泣いてしまった弟を思い出すルぺ。
「まさかノルマンディー作戦が失敗したの??」
え?一応名前つけてたんですか?ってか、作戦って何ですか!!
「髪飾りは受け取ってもらえたのです」
「弟よ!勿論その髪飾りの石の色は!!」
「僕の瞳と同じ翡翠のついた髪飾りです」
「イヤッシャー!よくやった!で?何をそんなに塞ぎこんでいるの?」
「帰ってしまったんです‥‥領地へ…」
「そんなもの!追いかければよろしい!で?何処に帰ったの?」
うるうるとした目で姉のルぺを見る弟レイ。
「東の方‥‥しかわかりません」
えぇぇぇ??っと思わず後ずさるルぺ。
国土のほぼ西よりに位置する王都。東の方は一番遠くて馬車で2週間。一番領地の数が多いです。
読者の皆様の世界でいうならば、北極点に居て「南に行った」と言われるくらいの数の多さと思ってください。
はぁっと肩を落とす姉のルぺ。それ以上に落ち込むレイ。
やっと春が来たと昨夜温かかったサロンは、雨季に入ったように涙で湿気ておりました。
190
あなたにおすすめの小説
クリスティーヌの本当の幸せ
宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!
真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。
そこで目撃してしまったのだ。
婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。
よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!
長くなって来たので長編に変更しました。
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
今更ですか?結構です。
みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。
エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。
え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。
相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!
ユウ
恋愛
辺境地に住まう伯爵令嬢のメアリ。
婚約者は幼馴染で聖騎士、親友は魔術師で優れた能力を持つていた。
対するメアリは魔力が低く治癒師だったが二人が大好きだったが、戦場から帰還したある日婚約者に別れを告げられる。
相手は幼少期から慕っていた親友だった。
彼は優しくて誠実な人で親友も優しく思いやりのある人。
だから婚約解消を受け入れようと思ったが、学園内では愛する二人を苦しめる悪女のように噂を流され別れた後も悪役令嬢としての噂を流されてしまう
学園にも居場所がなくなった後、悲しみに暮れる中。
一人の少年に手を差し伸べられる。
その人物は光の魔力を持つ剣帝だった。
一方、学園で真実の愛を貫き何もかも捨てた二人だったが、綻びが生じ始める。
聖騎士のスキルを失う元婚約者と、魔力が渇望し始めた親友が窮地にたたされるのだが…
タイトル変更しました。
聖女の証を義妹に奪われました。ただ証だけ持っていても意味はないのですけどね? など 恋愛作品集
にがりの少なかった豆腐
恋愛
こちらは過去に投稿し、完結している作品をまとめたものになります
章毎に一作品となります
これから投稿される『恋愛』カテゴリの作品は投稿完結後一定時間経過後、この短編集へ移動することになります
※こちらの作品へ移動する際、多少の修正を行うことがあります。
※タグに関してはおよそすべての作品に該当するものを選択しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる