この度、変態騎士の妻になりました

cyaru

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結婚が決まった

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翌朝、特に寝不足では御座いませんがよく判らない展開に頭が痛くなり薬を服用致しましたがそれでも眠れず夜更かしをしたのが良くなかったようです。瞼が重い。

「眠い」

それだけでしたのでまだ温かさが残るお布団に潜り込もうと致しましたが、侍女のアルワナの奇声と聞いた事もないようなドタドタとした足音が致しました。
バタンと扉が開くときっと肩で息をしているのでしょう。ハァハァよりもゼィゼィという息遣いが聞こえます。わたくしが生まれた時からお世話をしてくださっていてアルワナももう55歳。
【更年期が酷くって】が口癖なのですがいったいどうしたのでしょうか。

「まだ寝ているなんて!起きてくださいまし!お嬢様っ!」

起きろと言われると余計に眠くなくても起きたくなくなるわたくし。
しかし敵もわたくしを生後0秒から世話をしている、いわば「エトランゼの達人」です。
うつ伏せで寝るわたくしを熟知しているアルワナは55歳とは思えぬ俊敏さで、ガっと足を掴かみ【ボストンクラブ】を華麗に決めると洗面器を持ったメイドが口頭で

「カンカンカンカン!ウィナー!アルワァナッ!!」

っとテンカウントも行わずに早々の勝利宣言をしております。
タップをする間もなく敗者となったわたくしがする事は顔を洗い、寝台から下りて着替えです。
連携の取れた【チーム エトランゼ】には敵いません。

ボーっとしておりましたが、そんな中でも心なしか着替えも化粧も手早い気がします。
しかしいつ見ても化粧をされるとまるで別人。
よくこれで父も母もわたくしだと気が付くものだと感心してしまいます。

昨日、婚約破棄をされてしまいましたが、ビフォーアフターを見る事になる旦那様には今から哀悼の意を捧げたいと心から思うのです。

「お嬢様、とっても可愛いです。流石です」

特殊メイクとも言えるのですからアフターが可愛いのは判りますがほめ過ぎです。
褒められれば褒められるほど居た堪れないのですよ。

「さぁさぁ、早く。お嬢様にお客様が来られているのですよ。旦那様もお待ちでございます」

この時間、お父様は王宮に出向かれている時間だと思うのですが有給の消化なのでしょうか。
あぁそう言えば先月の月初めから有給の買取は禁止となったのでした。
ですがお父様の年間有給は180日を超えます。2日に1度の休みにするか、半年働いて半年休むとするか。その規模での有給なので王宮務めはホワイトなのですが…いえ、それは良いんです。

なぜ、お父様が?

この疑問が晴れないうちにサロンに入ったわたくしは更なる疑問を抱えるのです。

何故我が家にエリクサー王太子殿下がおられるの?
何故ギルバート様のお父様であるディッシュ伯爵が床に正座をされているの?
何故マチコリウス公爵ご夫妻がにこやかにわたくしに笑いかけておられるの?

そして何より!
昨日屋敷に送ってくださった「仮称 ジャギ様」が満面の笑みで手を差し出しているの?!

「おぉ!エトランゼ。さぁこちらに来なさい」
「はぁ…」

至近距離で見るエリクサー王太子殿下が眩しすぎるッ!王族のオーラは半端ない!
そしてマチコリウス公爵ご夫妻からは流石セレブ!って一挙手一投足から目が離せないッ!

でも、それまで威厳があると思っていたディッシュ伯爵様はなんかショボく感じるのです。
あぁ、これはきっとそうですわ。
お気に入りの曲ばかりを選定して1枚の魔石CDに集めたのに何故かすっ飛ばす曲が出来てしまうという現象に違いありません。良いと思っていても実際のところはそれほどでも?と気が付くあの瞬間です。

満面の笑みで語りかけるエリクサー王太子殿下は仰いました。

「では結婚式は予定通り2か月後に行いますが、規模としては現在の5倍。差額は慰謝料の一部としてディッシュ伯爵家が全額を負担よろしいかな?」

何事?と思いましたがわたくし以外は承諾のようです。

「良かったね。明日からは遠慮なく王宮にも遊びに来て欲しい」
「は?…はい?」
「いやぁ良かった良かった。史上最大の変態犯罪者をこの国から出す所だった」
「史上最大?犯罪者?」
「外堀は完全に埋まっている。やっと私も最後の防壁という立場を降りられる」
「防壁でございますか」

よく判らないわたくしでございましたが、公爵ご夫妻がわたくしの手を握り涙を流しておられます。

「郊外だけれど土地付きの屋敷を構えてある。直ぐに引っ越しの手配をこちらで行わせてもらうよ」
「それはどうも(棒)」
「どうなる事かと思ったが…本当にありがとう!我が息子ながらもう制御が出来なかったんだ」
「制御‥‥」

ちらりと「仮称 ジャギ様」を見ると目が合います。軽く会釈をすると途端に白いお肌が真っ赤に。
いったいどうされたのか。

「大丈夫。あなたのお部屋の扉は内鍵を何重にも仕掛けてあるわ」
「内鍵?でございますか?」
「ついでに要らないと思うものは全部処分しても構わないわ」
「処分…でございますか?」

まだよく判らないわたくしはお父様に尋ねます。

「あのこれはいったい…」
「エトランゼ。お前の嫁入り先が決まったんだ。王太子殿下だけでなく両陛下も後見となってくださる」
「嫁ぎ先が決まったと?」
「そうだが?お前は昨日、プロポーズを受けたと聞いたが?」

えっ?まさか‥‥あの場から逃げようと思っての「判りました」が承諾になったと?!

しばし悩みましたがわたくしも伯爵家とはいえ貴族の娘。
娘は家の為に自分の意思とは関係なく何処かに嫁がねばなりません。家長である父が許可をしたのならわたくしにどうこういう権利は御座いません。腹をくくりましょう。

ですが‥‥

夫となる騎士の隊服を着用され、顔を赤くされておられる大変眉目秀麗な殿方にお聞きしました。

「お名前をお伺いしても?」
「マチコ‥‥」

言いかけて口を押えております。先程よりもお顔が赤いように見受けられ、首に巻いたスカーフを頭からかぶられてしまいました。
何故かしら…仮称しか存じないわたくしは名前を聞いただけですのに。

見かねたエリクサー王太子殿下が教えてくださいました。
夫となる方のお名前は

【アルベルト・ユヴェル・マチコリウス公爵令息】様だそうです。
家名から仰るとは。余程、家を大切にされておられる方のようです。

2カ月後、ギルバート様と挙げる予定だった教会で、元々の規模よりも5倍以上に盛大で特注のドレスを身に纏ったわたくしはアルベルト様の妻になりました。

「君には隠し事はしたくない」

と言って初夜の夜、案内された部屋の扉が開いた瞬間わたくしの意識は途切れてしまいました。
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