年上幼馴染の一途な執着愛

青花美来

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第一章

いつも通り

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*****

懐かしい夢を見た。
私とお兄ちゃんと、日向と三人で一緒にお祭りに行った日の夢。

私はどうしてもりんご飴が食べたくて。でもどうせ全部は食べきれないからってお母さんにはダメって言われてた。
不貞腐れてたら、日向が隠れて買ってくれたんだ。


"間違って買っちゃったから、やる"


顔を赤くしながら渡してくれた姫りんごの飴を受け取った時、嬉しかったのを覚えてる。
でも結局お母さんの言う通り全部は食べきれなくて、家に帰ってから私だけじゃなくて日向までこっぴどく叱られた。

だけど、日向は私に笑ってくれた。


"また来年買ってやるよ"


頼もしくて、キラキラに輝いて見えたなあ……。



そんな夢から目覚めた時、目の前に日向の寝顔があって一瞬思考が停止した。

……そうだ。私、日向と……。

思い出すとボン!と爆発したように赤面してしまう。

まさか、ずっと兄のように慕っていた日向とこんなことになるなんて……。

付き合ってもいないのに、むしろ別れたばっかりなのに、日向の色気と場の雰囲気にやられてしまって私まで欲情してしまうなんて、そんな。

でも……気持ちよかったな……。

今までの男性経験の中でも、あんなに乱れたのは今日が初めてだったかもしれない。
それくらい気持ち良くて、私も日向を求めてしまった。
たくさんキスしてくれて、大事にされているとわかる、そんな時間だった。

身体を重ねることが、こんなに尊いもので気持ち良いものだなんて知らなかった。
今までの私の男性経験って、一体何だったんだろう。そう思ってしまうくらい、幸せな時間だった。

愛されてるって勘違いしそうになった。あれだけ昔から綺麗な女性ばかりを侍らせていたような日向が私を?そんなわけないのに。
でも……。


"俺にしろよ。俺にしとけよ。そうしたら、絶対お前を泣かせねぇし絶対幸せにするから"


じゃあ、あの言葉はどういう意味だったんだろう。

考えれば考えるほどわからなくて、数時間前までの情事を思い出してまた赤面してしまう。
今にも叫び出したい衝動に襲われるけれど、そうもいかずに悶えるだけ。
そんな私の激しい感情の起伏など全く知らない日向は、私の隣でぐっすりと眠っている。
穏やかな寝顔は改めて見るととても綺麗で、毛穴一つ見えない肌に嫉妬してしまいそうだ。

私の頭の下には日向の腕があり、反対の腕は私の腰を抱きしめている。


「……日向も昨日眠れなかったんだっけ……」


静かな寝息を聞きながら、しばらく寝顔を見つめる。
多分、しばらく起きないだろう。

窓から見える外もまだ明るいから、そんなに時間は経っていないようだった。
日向がかけてくれたであろう布団の中は、お互い何も身につけていない。
少し汗ばんでいる日向の胸が、情事の激しさを物語っているようだった。

とりあえず服を着よう。
そう思って日向の腕から抜けようとするものの、なぜか逆に力を入れてきて抜けない。
それどころかギュッと抱きしめられてしまい、私の顔は日向の胸に押し付けられる形になった。

息苦しい。けれど、嫌な苦しさじゃない。
日向の香りだろうか。フェロモンってやつ?
なんだか落ち着くいい匂い。
それを嗅いでいると、またウトウトしてきて。

そうだ、私も昨夜は全然眠れなかったんだった……。


「ちょっとだけ……」


そのまま、また眠ってしまった。



次に目を覚ました時には、日向も起きていた。


「はよ」

「……おはよ」

「よく寝てたな」

「一回起きたけど、日向が離してくれなかったから……」

「それはごめん。夕姫に逃げられそうになる夢見てたからそれかも」

「ははっ、なにそれ」


寝起きの甘い声にどきりとしながらも、普段通りの雰囲気に笑う。
そう思っていたのに、


「夕姫」


急に呼ばれて顔を上げると、そっと唇が重なった。


「もう夕方だ。夕姫ん家帰ろ」

「うん……」


どんな顔で日向を見ればいいのかわからない。


「俺先に部屋出てるから、準備できたらおりてきて」


私が頷くより前に、日向はベッドの下に落ちていた服を取って着ていく。
そんな姿から目を逸らしているうちに、部屋のドアが閉まる音がした。


「……なんで日向はいつも通りなのよ……」


意識してるのは私だけなのかと思うとなんだかムカつく。

ひとまず私も散らばった服を急いで着て、鞄に入っていた鏡で身なりを確認してから部屋を出た。


「準備できた?」

「うん……」

「じゃ帰るか」


そう言った日向は、私にペットボトルのお茶を渡してくる。

確かに喉が渇いたから、ありがたい。
受け取ってキャップを開けて、ごくりと流し込んだ。


帰り道、雪は止んでいてパキッとした空気が今の火照った頭にはちょうど良かった。
とは言え寒いことには変わらず、風が吹くたびに震えてしまう。
いつもなら他愛無い話をするのだけれど、今は何を話していいのかがわからず、日向の実家を出てからはずっと黙って歩いていた。

このまま家に着いたら、気まずくなっちゃうのかな……。

そう思っていると、


「……少しは忘れられた?」


と日向が私の頭に手を乗せた。


「え?」

「クソ男のこと、忘れられた?」

「あ……」


言われて、今の今まで日向のことで頭がいっぱいになっていたと気がつく。


「……うん。なんか、少し忘れたかも」

「そうか。よかった」


日向はそのまま寄り添うように私の肩を引き寄せると黙ってしまい、私も口を閉ざす。
しかし、ふとあることに気がついて日向を見上げた。


「ねぇ」

「ん?」

「……お兄ちゃんには言わないでね」


よく考えたら、日向はお兄ちゃんに対してものすごく口が軽い。
昔から二人でなんでも相談し合っているのを知っている。
まさか言うわけないと思うけど、今日のことはお兄ちゃんにだけは知られたくない……!
家族にそんな話されるの、さすがに無理すぎる。
どうにか口止めしたいけれど、そんな私に日向はにやっと笑った。


「何を?」

「何をって……その、日向と私が……」

「俺と夕姫が? なに?」

「その……ああもうっ! わかってるくせに言わせないでよ!」

「ははっ、悪い、ついつい夕姫の反応が可愛くて」


なんだか、昨日から日向がやけに甘い気がする。からかわれてるのがわかるからムカつくけど、可愛いって言われるのは慣れてなくて胸焼けしてしまいそうだ。


「その、可愛いとかも調子狂うからやめて……」

「なんで? いいじゃん。可愛いんだから」

「今まで私にそんなこと言ったことなかったじゃん! なんか日向からストレートにそんなこと言われると慣れてなくて……その、照れるから……」


だんだんと語尾が小さくなり、恥ずかしさにマフラーに顔を隠すように埋める。

すると、


「……今のはずるくないか?」

「え? 何が?」

「はぁー……」

「なに?」


日向はなぜかため息をついてしまい、困惑する。
ずるいって何が?そう聞きたいけど、日向は一人で納得したように小さく笑っている。
そして私の方を向いて、


「まぁいいや。俺は元々星夜に言うつもりは無かったよ。だけどそこまで言うなら、黙ってる代わりにまた俺と会ってくれるか?」


と微笑んだ。


「それは……うん。いいけど……」


日向と気まずくなるのは嫌だから、それはありがたい申し出。お兄ちゃんに黙っててくれるなら断る理由なんてない。
でも普段は日向は関西だし、私は都内だ。
会うにしたって遠いから難しい気もする。

だけど、


「じゃあ決まりな」


そう嬉しそうに笑う日向を見たら、何も言えなかった。


家に帰ると、お兄ちゃんがいつのまにか帰ってきていたみたいで、


「お前らどこで何してたんだ? 遅くね?」


と不思議そうに見られたけど、


「暇だったから俺ん家でゲームしてた」


と日向が適当にはぐらかしてくれてその場を乗り切った。


「……じゃあ」

「あぁ」


そう言ってそれぞれ部屋に戻ると、私はまず布団の中に潜り込む。
何も考えたくないのに、うまく眠ることはできなくて。
一人でいると何かしら考えてしまう。

結局、晩ご飯で呼ばれるまで眠ることはできなかった。


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