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1 リデル
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リデル・カーターが住むイングラム伯領の、次期領主だった若様。
ジェレマイア・コート・イングラムが領地に戻される、と聞いたのは。
リデルが交際していたクラーク・ライナーと別れた日の夕食の席。
専門高等学園を卒業する前に、クラークの方から申し込まれての交際だったのに、別れもまたクラークからで。
わずか半年間の交際は、彼に振り回された形で終了した。
悲しいというよりは、苦い想いを噛み締めて、その日の夕食を用意して。
食欲もあまり無く、共に食卓を囲む父のデイヴには申し訳なかったけれど、おしゃべりする元気も無く。
とにかく早く、ひとりになりたかった。
デイヴは、多弁だ。
だが、きちんと娘の話も聞いてくれる。
だから、父との会話は楽しくて、リデルもその日あった事、何をどう思い感じたか等、話すことが出来た。
しかし、今日は無理だ。
何故なら、女生徒達から人気があったクラークから交際を申し込まれて、その場で受けた話をしたら父が微妙な顔をしたのを、リデルは忘れていない。
その時、父は何か言いたかったかも知れないが、何も言わなかった。
生まれて初めての愛の告白をしてくれた男性との交際に、期待と未来を夢見た娘に何も言えなかったのだろう。
多分、その未来が困難であることを、人生経験が豊富な父からは想像がついていたのかもしれない。
だから……父さん、どうか、今も『それ』を察して欲しい。
明日になれば、明日の朝になれば。
「クラークにふられちゃったの」と軽い調子で言えるから。
そう決めていたのに。
今夜だけは、学園で過ごしたクラークとの楽しかった日々の思い出にひたり。
明日からはそれを忘れて、また新しく始めるの、と笑おうと決めていたのに。
いつもと明らかに違う娘の様子に気づいているだろうに、父は何も尋ねない。
ようやく食事を終え、2人分の食器を重ねるリデルにデイヴが話し出した。
「明日の夜、若様がこちらにお戻りになる、と聞いた」
「……夜に、何故?」
「……人目につきたくないのだろうな。
事の経緯は、お前も知っているだろう。
ご領主様は若様を、恥じておられるようだ」
「……」
その知らせに、何も返せなかったけれど。
父の語尾は疑問文ではない。
その通り、リデルも。
遠く離れた王都で吹き荒れた嵐の経緯は、知っている。
王立貴族学院で吹き荒れた嵐。
それはある男爵令嬢が第2王子殿下や、そのご友人の高位貴族令息達を誘惑して、巻き起こった嵐。
我が領の若様。
次期イングラム伯爵閣下になるはずだった若様。
ジェレマイアは、その令息のひとり、だった。
ジェレマイア・コート・イングラムが領地に戻される、と聞いたのは。
リデルが交際していたクラーク・ライナーと別れた日の夕食の席。
専門高等学園を卒業する前に、クラークの方から申し込まれての交際だったのに、別れもまたクラークからで。
わずか半年間の交際は、彼に振り回された形で終了した。
悲しいというよりは、苦い想いを噛み締めて、その日の夕食を用意して。
食欲もあまり無く、共に食卓を囲む父のデイヴには申し訳なかったけれど、おしゃべりする元気も無く。
とにかく早く、ひとりになりたかった。
デイヴは、多弁だ。
だが、きちんと娘の話も聞いてくれる。
だから、父との会話は楽しくて、リデルもその日あった事、何をどう思い感じたか等、話すことが出来た。
しかし、今日は無理だ。
何故なら、女生徒達から人気があったクラークから交際を申し込まれて、その場で受けた話をしたら父が微妙な顔をしたのを、リデルは忘れていない。
その時、父は何か言いたかったかも知れないが、何も言わなかった。
生まれて初めての愛の告白をしてくれた男性との交際に、期待と未来を夢見た娘に何も言えなかったのだろう。
多分、その未来が困難であることを、人生経験が豊富な父からは想像がついていたのかもしれない。
だから……父さん、どうか、今も『それ』を察して欲しい。
明日になれば、明日の朝になれば。
「クラークにふられちゃったの」と軽い調子で言えるから。
そう決めていたのに。
今夜だけは、学園で過ごしたクラークとの楽しかった日々の思い出にひたり。
明日からはそれを忘れて、また新しく始めるの、と笑おうと決めていたのに。
いつもと明らかに違う娘の様子に気づいているだろうに、父は何も尋ねない。
ようやく食事を終え、2人分の食器を重ねるリデルにデイヴが話し出した。
「明日の夜、若様がこちらにお戻りになる、と聞いた」
「……夜に、何故?」
「……人目につきたくないのだろうな。
事の経緯は、お前も知っているだろう。
ご領主様は若様を、恥じておられるようだ」
「……」
その知らせに、何も返せなかったけれど。
父の語尾は疑問文ではない。
その通り、リデルも。
遠く離れた王都で吹き荒れた嵐の経緯は、知っている。
王立貴族学院で吹き荒れた嵐。
それはある男爵令嬢が第2王子殿下や、そのご友人の高位貴族令息達を誘惑して、巻き起こった嵐。
我が領の若様。
次期イングラム伯爵閣下になるはずだった若様。
ジェレマイアは、その令息のひとり、だった。
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