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18 エラ
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残念な子だ。
リデル・カーターは本当に残念な子。
しっかりしているようで、情に訴えられると流されやすい。
はっきり悪意をぶつけてくる奴には、対抗出来るけど。
弱みを見せられたら、すぐに同情してしまう。
だから、シェリー・オドネルごときの泣き落としで、欠席するはずだった結婚式に行くと言う。
エラはリデルには教えられない情報を数多く持っている。
シェリーに関してもそうだ。
彼女こそが、カップルクラッシャーのシーナ・ワトリーを恨んでいるはず。
高等学園2年生だった秋に、工業科の技術室で。
商業科のシェリー・オドネルとマーティン・ガイルズが、3年生のシーナ・ワトリーが原因の痴話喧嘩をしていた、と教えて貰ったのだ。
ふたりは喧嘩をするのに商業科生に知られぬよう、わざわざ違う科の教室まで来てたので、本人達は気付いていないが目立っていたらしい。
シーナにクラークを奪われたリデルに、シェリーが同情しているのは確かだろうけれど、そこに自分の私怨が混じっているのを、彼女はリデルに隠している。
その上、シェリーが縫ったドレスなんか売り付けられて。
まだ見てもいないドレスを、リデルはシェリーの言い値で買った。
無料で借りるなんて出来ない、なんて。
そんなの、シェリーの方から着てって頼んでるんだから、とエラは呆れた。
洋品店を営むセンスが良いと評判のマーティン・ガイルズの母親が
「素人の作ったドレスなんて」と言ったのなら、その程度のドレスなんだろうに。
おまけにまだ招待もされていない結婚式にも着ていけるから無駄じゃない、と苦しい言い訳をする。
毎回、そのシェリー手作りのドレスで出席するつもりなのだろうか。
あまりにも、お洒落に関心が無さすぎるリデルに、エラは泣けてきた。
それでも、シェリーがリデルに言った
「その気になれば、シーナより素敵になる」には、完全に全面的に同意する。
あのジェレマイア様は貴族学院では第2王子殿下の取り巻きに選ばれていた。
あの見た目だし。
きっといろんな面で優秀なんだろう。
だけど、リデルに関しては、全く。
全然、駄目駄目だ。
リデルは優しい。
優しすぎる故に、残念な子だ。
本当に、残念な元若様とお似合いだ。
◇◇◇
シェリーから買い取ったドレスを受け取りに、エラは彼女の実家が営むオドネル手芸店へ急いだ。
エラはシェリーとは、友人ではないので自宅の住所は知らないし、店の方なら両親のどちらかは居るだろうと当たりを付けた。
明日結婚式で店を休むから、今日は絶対に営業しているはずで、オドネル氏が商売に熱心であるのは有名な話だ。
お針子でもない娘が趣味で作ったドレスを、結構な金額で売ったのに、リデルの自宅まで届けず。
当日に早めに来させて、その場で適当にサイズを合わせる、なんてエラからしたら許せぬ所業だ。
もし当日に何かトラブルが起こって時間が押したりしたら、最優先は花嫁のシェリーで、リデルはお化粧にしろ着付けにしろ簡単に済まされてしまうだろう。
そう考えただけで、エラの腸が煮えくり返る。
ドレスは自宅にあるから、とか抜かしやがったら。
今すぐ取りに行って渡さないなら返品するので、代金を返せと捩じ込むつもりで乗り込めば。
月曜日にリデルの物になったドレスは、土曜日の店のショーウィンドウに未だに飾られていた。
『うちの商品で作ったドレスです』と書かれたカードが胸の辺りにピンで止められていて、布と糸の宣伝のためにギリギリまで飾るなんて、抜け目がないにも程がある。
飾られたドレスは確かに薄いラベンダー色で、形も流行りで悪くはないが、近くで見たら粗もあるだろう。
エラが用事を思い出した、とリデルの家から帰ったのは、その粗をちゃんとしたものに変えるためだ。
リデルのサイズはエラの頭の中に入っている。
シェリーは、わたしに任せてくれたら素敵になる、と言ったらしいが。
それはわたしがやる、とエラは決めた。
このわたしが、リデルをシーナよりも。
何なら、主役の花嫁シェリーよりも。
綺麗で素敵な大人の女性に、してみせよう。
敗北の涙を流すのは、シーナだけじゃない。
だが、それには人手が要る。
それも、飛び切りの。
最高の腕を持つ人手が要るのだ。
加えて、この絶好のタイミング。
今日と明日は、騎士団の休暇で、邸内にはいつもより人が少ない。
メイド達の仕事もそれだけ減っている。
朝、仕事に向かう母も
「今日は楽が出来るわ」と言っていた。
午後のこの時間なら、母達はのんびりお茶でも楽しんでいることだろう。
だから、ジェレマイアに話を通す事にした。
何事も領内最高の腕が集まるのが、ご領主様の本邸だ。
最高の美的職人達の人海戦術で。
リデルの隠されたポテンシャルを、最大限に引き出してみせよう。
リデル・カーターは本当に残念な子。
しっかりしているようで、情に訴えられると流されやすい。
はっきり悪意をぶつけてくる奴には、対抗出来るけど。
弱みを見せられたら、すぐに同情してしまう。
だから、シェリー・オドネルごときの泣き落としで、欠席するはずだった結婚式に行くと言う。
エラはリデルには教えられない情報を数多く持っている。
シェリーに関してもそうだ。
彼女こそが、カップルクラッシャーのシーナ・ワトリーを恨んでいるはず。
高等学園2年生だった秋に、工業科の技術室で。
商業科のシェリー・オドネルとマーティン・ガイルズが、3年生のシーナ・ワトリーが原因の痴話喧嘩をしていた、と教えて貰ったのだ。
ふたりは喧嘩をするのに商業科生に知られぬよう、わざわざ違う科の教室まで来てたので、本人達は気付いていないが目立っていたらしい。
シーナにクラークを奪われたリデルに、シェリーが同情しているのは確かだろうけれど、そこに自分の私怨が混じっているのを、彼女はリデルに隠している。
その上、シェリーが縫ったドレスなんか売り付けられて。
まだ見てもいないドレスを、リデルはシェリーの言い値で買った。
無料で借りるなんて出来ない、なんて。
そんなの、シェリーの方から着てって頼んでるんだから、とエラは呆れた。
洋品店を営むセンスが良いと評判のマーティン・ガイルズの母親が
「素人の作ったドレスなんて」と言ったのなら、その程度のドレスなんだろうに。
おまけにまだ招待もされていない結婚式にも着ていけるから無駄じゃない、と苦しい言い訳をする。
毎回、そのシェリー手作りのドレスで出席するつもりなのだろうか。
あまりにも、お洒落に関心が無さすぎるリデルに、エラは泣けてきた。
それでも、シェリーがリデルに言った
「その気になれば、シーナより素敵になる」には、完全に全面的に同意する。
あのジェレマイア様は貴族学院では第2王子殿下の取り巻きに選ばれていた。
あの見た目だし。
きっといろんな面で優秀なんだろう。
だけど、リデルに関しては、全く。
全然、駄目駄目だ。
リデルは優しい。
優しすぎる故に、残念な子だ。
本当に、残念な元若様とお似合いだ。
◇◇◇
シェリーから買い取ったドレスを受け取りに、エラは彼女の実家が営むオドネル手芸店へ急いだ。
エラはシェリーとは、友人ではないので自宅の住所は知らないし、店の方なら両親のどちらかは居るだろうと当たりを付けた。
明日結婚式で店を休むから、今日は絶対に営業しているはずで、オドネル氏が商売に熱心であるのは有名な話だ。
お針子でもない娘が趣味で作ったドレスを、結構な金額で売ったのに、リデルの自宅まで届けず。
当日に早めに来させて、その場で適当にサイズを合わせる、なんてエラからしたら許せぬ所業だ。
もし当日に何かトラブルが起こって時間が押したりしたら、最優先は花嫁のシェリーで、リデルはお化粧にしろ着付けにしろ簡単に済まされてしまうだろう。
そう考えただけで、エラの腸が煮えくり返る。
ドレスは自宅にあるから、とか抜かしやがったら。
今すぐ取りに行って渡さないなら返品するので、代金を返せと捩じ込むつもりで乗り込めば。
月曜日にリデルの物になったドレスは、土曜日の店のショーウィンドウに未だに飾られていた。
『うちの商品で作ったドレスです』と書かれたカードが胸の辺りにピンで止められていて、布と糸の宣伝のためにギリギリまで飾るなんて、抜け目がないにも程がある。
飾られたドレスは確かに薄いラベンダー色で、形も流行りで悪くはないが、近くで見たら粗もあるだろう。
エラが用事を思い出した、とリデルの家から帰ったのは、その粗をちゃんとしたものに変えるためだ。
リデルのサイズはエラの頭の中に入っている。
シェリーは、わたしに任せてくれたら素敵になる、と言ったらしいが。
それはわたしがやる、とエラは決めた。
このわたしが、リデルをシーナよりも。
何なら、主役の花嫁シェリーよりも。
綺麗で素敵な大人の女性に、してみせよう。
敗北の涙を流すのは、シーナだけじゃない。
だが、それには人手が要る。
それも、飛び切りの。
最高の腕を持つ人手が要るのだ。
加えて、この絶好のタイミング。
今日と明日は、騎士団の休暇で、邸内にはいつもより人が少ない。
メイド達の仕事もそれだけ減っている。
朝、仕事に向かう母も
「今日は楽が出来るわ」と言っていた。
午後のこの時間なら、母達はのんびりお茶でも楽しんでいることだろう。
だから、ジェレマイアに話を通す事にした。
何事も領内最高の腕が集まるのが、ご領主様の本邸だ。
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リデルの隠されたポテンシャルを、最大限に引き出してみせよう。
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