【完結】きみは、俺のただひとり ~神様からのギフト~

Mimi

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17 ジェレマイア

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 中等部入学時に同じクラスになったテリオスとは、実験班が一緒になって。
 テリオス直々の指名で、彼の取り巻きに加えられたジェレマイアだった。

 
 王族と公侯爵家の令息達で構成される貴族学院のヒエラルキーの頂点に加わることになって戸惑う伯爵家のジェレマイアに、テリオス本人も早く馴染めるように気を回したのか、ジェレミーと愛称で呼び掛けられたが、それが嫌だと顔に出たのだろう。
 テリオスは直ぐに訂正した。


「いや、ジェレミーはやめた。
 お前の事はマイアと呼ぼう」


 
 ジェレマイアは王子殿下であろうと、ジェレミーとは呼ばれたくなかった。
 その名を呼ぶのは、限られた……特別なひとだけでいい。


 テリオスがそんな他人の機微に素早く気がつく所は、ジェレマイアも気に入ったが。
 彼にとって聖地であるイングラムから離れた、こんな嘘ばかりの場所で知り合った奴には、ジェレミーとは呼ばれたくなかった。


 いや、他の誰にも呼ばすものか。



 ◇◇◇


 
 胃痛で食欲の無いジェレマイアを元気付けるため、リーブスの尽力で往診に来てくれたリデルを、彼は逃がしてしまった。

 
 ジェレミーと呼んでくれなかったのは、寂しかったが。
 久しぶりに会えて、顔が見られて、言葉を交わし、手を握った喜びに。
 馬鹿な男が、距離感を間違えてしまった結果だ。 


 上衣を脱いだのも、純粋に痛む患部に触れて貰ったら、楽になると思ったからで。
 リデルが思い込んでしまったように、からかいや遊びでは決して無かった。

 だが、結果として。
 急にすんっとなったリデルは帰ってしまい、会えなかった時よりも今の方が喪失感は大きい。


 リーブスからも、しつこく手を握って離さなかった事、気持ち悪いくらいに見つめ続けていた事、何より言われてもいないのに勝手に上半身裸になった事を責められ、ジェレマイアは酷く落ち込んだ。


「貴方がそれ程、女性の扱いに慣れていないとは。
 王都に6年もいて、少しもラブアフェアを経験していないんですか?」
 
「そんなもん、するかよ……」


 ラブアフェアなんて1度でもしたら、身体が汚れると思った。
 身体が汚れてしまったら、リデルを想う自分の心も汚れると思った。


 王都は街で、学院で、女性と知り合う機会も多い。
 誘いは確かに何度もあった。 
 
 ちょっと年上から、うんと年上まで。
 だが全部婚約者の名前を出し、彼女が怖い情けない男のふりをして逃げた。


 それが1番しつこくされない方法で、アリシア嬢を便利に使わせて貰った。
 だからこそ、卒業後王都を離れるまで、婚約解消をする気がなかった自分勝手なジェレマイアだった。


 攻略されたことになっているミネルヴァ・ロバーツには、ただ皆の前でプレゼントを何品か渡しただけだ。
 入学してから誰1人として女生徒を近寄らせなかったジェレマイア・コートが、特定の女性にプレゼント攻勢をする、ただそれだけで彼女に堕ちた、と見なして貰えた。


 実際は、ミネルヴァにはキスは勿論のこと、抱き締めたり手を繋ぐなど身体の接触は何ひとつ許していない。
 それでも、今以上にそれ風に思い込ませようと、似たような感じでミネルヴァに夢中だと見なされていたテリオスが提案したのは、学院内の王族専用特別室にミネルヴァを連れ込む事だった。

 

「連れ込んで、するのに、私は参加しませんからね」

「そんなもん、するかよ」

 ジェレマイアがリーブスに言った台詞を、この時テリオスも口にした。



「催眠術をかけようと思ってる。
 俺達とそんな関係になった、とあれに記憶を植え付ける」

「催眠術って、殿下が本を読んで、試したくなっただけでしょう」


 案の定、ミネルヴァはテリオスの拙い催眠術にはかからなかった。
 仕方がないので、3人で楽しんでいると思わせるために、時間を掛けてカードを5ゲームして。
 別れ際に、甘く微笑むテリオスに頭を撫でられて髪を少し乱されたミネルヴァを、特別室から追い出した。


 艶やかな花達が競う王都でジェレマイアが経験した女性とのゲームは、恋愛ゲームではなく、そのカードゲームのただ1度きりだ。


 ジェレマイアの持つ容姿と財力と将来性に関係を繋げたいと希望する女性は多くいたが、彼自身はそんな事には興味を持たずに、ここまで来てしまったので。
 いざ肝心のリデルに関しては、どうしたら良いのか、全く分からなくなっていた。


 仲が良かった子供の頃のように接したら、逃げられてしまったのだ。
 一体、どうしろと言うのか。


 リーブスは叱るくせに、やり方を教えてくれない。
「積極的に応援出来る立場ではないので」と冷たい。

 冷たいのは、デイヴも同じで、何度否定しても、
「遊びでリデルに近付くな」と取り付きようも無い。


 
 それ故、せっかくリデルの友人のケールが
「リデルに伝言があれば」と尋ねてくれたのだが、それに続けて
「ご伝言を預かっても、リデルがそれを望まないなら、これきり」とはっきり言われた。

 
 あの日、帰っていったリデルの、あの勢いを思い出す。
 彼女は自分の伝言なんて、受け取りたくないかもしれないと思った。  
 それでもうこれきりになってしまうのなら、今回は伝言を預けるのは止めた方がいい、と判断した。 


 それは昨日の事で、しばらくはケールからの接触は無いと思っていたのだが、彼女が取り急ぎ、と面会を申し込んで来たと言う。

 
 確か、今日はリデルに会っているはず……

 
 リデルに何かあったのでは、と了承し、立ち会いを頼んだリーブスの案内でやって来る彼女をやきもきしながら待てば。
 

 ケールは1人ではなく。


 その後ろには、彼女の母親を始めとした本邸のメイド一同を従えていた。




  *****


 
 ジェレマイアがエラの事を、ケールと家名で扱うのは、リデル以外の女性のファーストネームは呼ばない、と決めているからです。
(ミネルヴァとアリアナ嬢は、彼のなかでは重きを置かれていない、既に無関係になった女性なので、お許しください)


 国王陛下は第2王子のテリオスには、王家の影の人員を割くことをしなかったので、彼は学院内では気楽に息をする事が出来ていました。
 テリオス本人が思うよりも、国王は父親として彼を愛していたのかも……しれません。

 ですが。自由にさせ過ぎて。
 テリオスは男爵令嬢に堕ちた愚かな王子を演じて、王都から逃げてしまいました。
 
 
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