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7話目
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ヴィン様だけではなく、他のみなさまもわたくしをジッと見ております。ここはやはり、信じていただけなくても、わたくしの前世のことをお話したほうがいいのでしょう。
それでヴィン様に嫌われてしまったら悲しいですが、それは仕方がありませんし。
「あの……これからお話することは、その……」
「大丈夫だよ、ジル。嫌ったりしないし、僕はずっとジルを愛し続ける自信がある」
「ヴィン様……」
「だから、正直に話してごらん? どうして違うと言ったんだい?」
ヴィン様はわたくしの手をとり、大丈夫だと仰ってくださいました。それに勇気づけられ、すべてをお話することにいたします。
わたくしが語ったのは自分の前世のこと、この世界は前世のわたくしがやりこんでいたゲームの世界に似ていること。けれど、攻略対象者の年齢や立場が違うこと。そしてわたくしとヴィン様の生まれや学園会という呼び方が違うことを、正直に話しました。
みなさまはそんな荒唐無稽な話を笑うことなく、真剣に聞いてくださいます。
「正直に話してくれてありがとう。やはり、この世界はあのゲームの世界なのか……」
「そうですわね。確かに似てはおりますけれど、現実は違いますわね」
「俺たちも年齢が違うしな」
「性格も、ですね」
「あ、あの……?」
全員がなぜか頷いていらっしゃいます。そして王太子様とエル様が語られた言葉。もしかして、彼らも転生者なのでしょうか。
「察しているみたいだが、この場にいる全員が、日本からの転生者だ」
「そして、あのゲームの関係者でもあるの」
「え……?」
「そして僕は、前世ではジルの兄で、ヴィンフリートの声を担当していたんだ」
「あ、え? ええっ⁉」
まさか、全員が転生者だと思いませんでした。そしてヴィン様が兄だということも驚きました。
そして、兄に会えたことでじわじわと嬉しさが込み上げ、ついにわたくしは泣いてしまったのです。
「ジル……大丈夫、大丈夫だから。前世の約束通り、必ず幸せにするから」
「ヴィン様……っ」
「ほら、みんなもニヤニヤ笑っていないで、自分の前世を語りなよ」
「くくっ、そうだな」
わたくしの背中を撫でながら、ずっと「大丈夫」と仰ってくださるヴィン様。
ヴィン様なら、悪役令嬢になることはないと、はっきりとわかりました。
そしてわたくしが落ち着いた様子を見て、エル様がお茶を淹れ直してくださいます。それからは、彼らの前世の話でした。
前世の名前は今は関係ないからと省かれましたが、王太子様が監督、エル様がシナリオ、ガスパル様がイラスト関連、フェリペ様がBGMを含めた音楽関連、ロレンソ様がご自身の声を担当していた方だと話してくださいました。
声優本人が担当したキャラになるのは、ヴィン様を含めて二人目です。ただ、わたくしにとっては、ロレンソ様を担当した声優さんが、お付き合いをした方ではなかったことが救いでしょうか。
そこから他のことも伺いました。
前述の通り、メインヒーローであるオットマー様は第三王子で七歳、フアニート様は次男で八歳だそうです。もちろんフアニート様は、オットマー様のご友人として一緒に過ごしておられるそうです。
ゲームではそこにフェリペ様とロレンソ様、ヴィン様とわたくしが加わるはずなのですが、一番年齢が近いわたくしですらオットマー様よりも年上なのです。ですから、友人や幼馴染候補としても、婚約者候補としても、外されているのだと王太子様が教えてくださいました。
まあ、その話が行く前に、ヴィン様がわたくしに婚約を申し込み、それが受理されましたので、外した形だそうです。……危なかったですわね。
「あの……ヒロインはどうなのでしょうか」
「調べたけれど、一応存在しているわ。こちらもゲームのデフォルトのままで、【ローゼリア】というのはわかっているの」
「年齢は一番下で、今は五歳ですね」
「ゲームと同じように、パン屋の娘だよ」
「しかも、どうやら【ローゼリア】も転生者のようでね……」
溜息をつきつつもお話してくださった王太子様によると、いつも一人でぶつぶつと『オットマーに会いたい』だの、『ジークリットになにかされたらどうしよう』だのと仰っているそうです。
ゲームでの【ローゼリア】はパン屋の娘として生まれます。父親はテンプレのごとく男爵家の人間で、母親とは恋人関係でしたが実家に引き離され、その後は別の女性と婚姻します。
そして母親のほうは手切れ金を渡されて「二度と会うな」と脅されておりましたが、そのときにはすでにお腹の中にヒロインがおり、シングルマザーとして生活していくのです。
その途中で母親は無理が祟って亡くなり、それを知った父親がヒロインを迎えに行き、貴族としてしっかり教育をしてから学園に編入させました。もちろん、編入試験を受け、合格してからです。
ただ、王太子様のお話によると、ヒロインには正規の父親がいます。もちろん原作通り男爵家の人間ですが、原作では嫡男でしたが父親は次男で、家を出て平民となりました。
パン屋をやるにあたって男爵家の父親に援助をしていただきましたが、それは借金という形で援助していただいているそうです。ですので、今は夫婦で頑張って借金を返済中なのだとか。
とても真面目に働き、パンの評判もよいことから、その借金もあと二回ほどで終わるそうです。
ここでもゲームとは違ってきています。
父親は男爵家出身ではありますが、籍を抜けているのであれば貴族になることはありません。貴族に戻れるのは嫡男が亡くなった場合ですが、もし弟がいた場合はそちらが優先的に当主となります。
その男爵家では次男の下に二人も男性がいますし、二人とも兄を補佐しているそうなので、領地経営にまったく関わっていない次男が男爵家を継ぐのは、その三人が亡くならないとダメだそうです。
嫡男は至って元気ですし、すでに男児が二人生まれているそうなので、現時点では【ローゼリア】が男爵家に行く可能性はないとのことでした。あるとすれば、【ローゼリア】の両親が亡くなった場合だけだそうです。
ただ、それも男爵家が拒否した場合はその家に入ることができず、年齢によっては孤児院に行くことになるそうですが。
学園は平民が通うことができませんから、現状では【ローゼリア】は学園に通うことはありません。たとえ優秀だとしても、平民が通うのは王立学院という専門の学校がありますから、そこに通うしかないのだそうです。
どうしても学園に通いたいのであれば、前述の通り両親を亡くして男爵家に引き取られるか、【ローゼリア】自身が優秀と判断され、貴族の養女になるしかないのです。
「養女もないな」
「ご両親が亡くなる可能性もありませんね」
「それはどうしてでしょうか」
「「「「「「彼女はバカだから」」」」」」
「……はい?」
意味がわかりません。
それでヴィン様に嫌われてしまったら悲しいですが、それは仕方がありませんし。
「あの……これからお話することは、その……」
「大丈夫だよ、ジル。嫌ったりしないし、僕はずっとジルを愛し続ける自信がある」
「ヴィン様……」
「だから、正直に話してごらん? どうして違うと言ったんだい?」
ヴィン様はわたくしの手をとり、大丈夫だと仰ってくださいました。それに勇気づけられ、すべてをお話することにいたします。
わたくしが語ったのは自分の前世のこと、この世界は前世のわたくしがやりこんでいたゲームの世界に似ていること。けれど、攻略対象者の年齢や立場が違うこと。そしてわたくしとヴィン様の生まれや学園会という呼び方が違うことを、正直に話しました。
みなさまはそんな荒唐無稽な話を笑うことなく、真剣に聞いてくださいます。
「正直に話してくれてありがとう。やはり、この世界はあのゲームの世界なのか……」
「そうですわね。確かに似てはおりますけれど、現実は違いますわね」
「俺たちも年齢が違うしな」
「性格も、ですね」
「あ、あの……?」
全員がなぜか頷いていらっしゃいます。そして王太子様とエル様が語られた言葉。もしかして、彼らも転生者なのでしょうか。
「察しているみたいだが、この場にいる全員が、日本からの転生者だ」
「そして、あのゲームの関係者でもあるの」
「え……?」
「そして僕は、前世ではジルの兄で、ヴィンフリートの声を担当していたんだ」
「あ、え? ええっ⁉」
まさか、全員が転生者だと思いませんでした。そしてヴィン様が兄だということも驚きました。
そして、兄に会えたことでじわじわと嬉しさが込み上げ、ついにわたくしは泣いてしまったのです。
「ジル……大丈夫、大丈夫だから。前世の約束通り、必ず幸せにするから」
「ヴィン様……っ」
「ほら、みんなもニヤニヤ笑っていないで、自分の前世を語りなよ」
「くくっ、そうだな」
わたくしの背中を撫でながら、ずっと「大丈夫」と仰ってくださるヴィン様。
ヴィン様なら、悪役令嬢になることはないと、はっきりとわかりました。
そしてわたくしが落ち着いた様子を見て、エル様がお茶を淹れ直してくださいます。それからは、彼らの前世の話でした。
前世の名前は今は関係ないからと省かれましたが、王太子様が監督、エル様がシナリオ、ガスパル様がイラスト関連、フェリペ様がBGMを含めた音楽関連、ロレンソ様がご自身の声を担当していた方だと話してくださいました。
声優本人が担当したキャラになるのは、ヴィン様を含めて二人目です。ただ、わたくしにとっては、ロレンソ様を担当した声優さんが、お付き合いをした方ではなかったことが救いでしょうか。
そこから他のことも伺いました。
前述の通り、メインヒーローであるオットマー様は第三王子で七歳、フアニート様は次男で八歳だそうです。もちろんフアニート様は、オットマー様のご友人として一緒に過ごしておられるそうです。
ゲームではそこにフェリペ様とロレンソ様、ヴィン様とわたくしが加わるはずなのですが、一番年齢が近いわたくしですらオットマー様よりも年上なのです。ですから、友人や幼馴染候補としても、婚約者候補としても、外されているのだと王太子様が教えてくださいました。
まあ、その話が行く前に、ヴィン様がわたくしに婚約を申し込み、それが受理されましたので、外した形だそうです。……危なかったですわね。
「あの……ヒロインはどうなのでしょうか」
「調べたけれど、一応存在しているわ。こちらもゲームのデフォルトのままで、【ローゼリア】というのはわかっているの」
「年齢は一番下で、今は五歳ですね」
「ゲームと同じように、パン屋の娘だよ」
「しかも、どうやら【ローゼリア】も転生者のようでね……」
溜息をつきつつもお話してくださった王太子様によると、いつも一人でぶつぶつと『オットマーに会いたい』だの、『ジークリットになにかされたらどうしよう』だのと仰っているそうです。
ゲームでの【ローゼリア】はパン屋の娘として生まれます。父親はテンプレのごとく男爵家の人間で、母親とは恋人関係でしたが実家に引き離され、その後は別の女性と婚姻します。
そして母親のほうは手切れ金を渡されて「二度と会うな」と脅されておりましたが、そのときにはすでにお腹の中にヒロインがおり、シングルマザーとして生活していくのです。
その途中で母親は無理が祟って亡くなり、それを知った父親がヒロインを迎えに行き、貴族としてしっかり教育をしてから学園に編入させました。もちろん、編入試験を受け、合格してからです。
ただ、王太子様のお話によると、ヒロインには正規の父親がいます。もちろん原作通り男爵家の人間ですが、原作では嫡男でしたが父親は次男で、家を出て平民となりました。
パン屋をやるにあたって男爵家の父親に援助をしていただきましたが、それは借金という形で援助していただいているそうです。ですので、今は夫婦で頑張って借金を返済中なのだとか。
とても真面目に働き、パンの評判もよいことから、その借金もあと二回ほどで終わるそうです。
ここでもゲームとは違ってきています。
父親は男爵家出身ではありますが、籍を抜けているのであれば貴族になることはありません。貴族に戻れるのは嫡男が亡くなった場合ですが、もし弟がいた場合はそちらが優先的に当主となります。
その男爵家では次男の下に二人も男性がいますし、二人とも兄を補佐しているそうなので、領地経営にまったく関わっていない次男が男爵家を継ぐのは、その三人が亡くならないとダメだそうです。
嫡男は至って元気ですし、すでに男児が二人生まれているそうなので、現時点では【ローゼリア】が男爵家に行く可能性はないとのことでした。あるとすれば、【ローゼリア】の両親が亡くなった場合だけだそうです。
ただ、それも男爵家が拒否した場合はその家に入ることができず、年齢によっては孤児院に行くことになるそうですが。
学園は平民が通うことができませんから、現状では【ローゼリア】は学園に通うことはありません。たとえ優秀だとしても、平民が通うのは王立学院という専門の学校がありますから、そこに通うしかないのだそうです。
どうしても学園に通いたいのであれば、前述の通り両親を亡くして男爵家に引き取られるか、【ローゼリア】自身が優秀と判断され、貴族の養女になるしかないのです。
「養女もないな」
「ご両親が亡くなる可能性もありませんね」
「それはどうしてでしょうか」
「「「「「「彼女はバカだから」」」」」」
「……はい?」
意味がわかりません。
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