7 / 54
1章
7話
しおりを挟む
「安全運転でって何度も言ったのに」
病院からバイクだと10分もしないうちに高弥の住むアパートに到着する。スピードは上げられたが、乗り物酔いをするような運転はされなかったのか、バイクから降りてもふらつきは無かったが文句を言わずにはいられないほどスピードを出された。
「無事に着いてんだからめっちゃ安全運転じゃねぇかよ。それにしても……お前、随分イイトコ住んでな」
バイクを停めて、高弥の部屋があるというアパートを胡散臭いものを見るような目で沢村は見る。
「ボロアパートって言いたいんでしょ」
「お前、いくらまだ研修医ったって、もうちっとマシなとこあんだろうが……」
「そこまで酷いですかね? ボロいですけど、風呂トイレもありますし、木造じゃないし、築30年そこそこってとこですよ? 」
「風呂なしトイレ共同とか見つける方が難しいだろ……今どき風呂トイレあるって胸張れるとこじゃねぇからな。でもま、 とりあえず部屋ん中見てみますかぁ。上? 下? 」
二階建てのアパートを指差して部屋は何階にあるのか沢村が問う。
「2階ですけど……ってもしかして、上がる気ですか?」
如何にも嫌そうな目を向けた高弥に
「お前、先輩に此処まで送らせておいて茶の一杯も出さねぇで帰すとかナシだろ」
と、宣うとさっさと階段を登った。もちろんエントランスにオートロック、なんてものは無いので横付けされている階段を登ればすぐに部屋だ。
「……見た目のとおりボロいですからね? 」
送ってもらって助かったのは事実なので、鍵を開けて沢村を招き入れる。
「うっわ。狭っ。マジで苦学生の部屋って感じじゃん」
小さな6畳の部屋にパイプベッド、 折り畳み式の小さなテーブル。窓は一応南側にあるが、高い建物がすぐ側にあるため日当たりは悪い。ただ、幸いにも部屋のサイズの割には大きな押し入れがあり、大概のものは其処に収納出来るので部屋は片付いていたが。
「ドラ●もんでも出てきそうな押し入れだな…… 」
「……居たら助かりますけどね。……つーか、文句あるなら帰ってもらっても全っ然構わないですけど」
高弥の言葉を無視して、不躾にも物珍しそうに色々見て回る沢村。
「コーヒーか麦茶しか出せませんけど、どっちにします? 」
高弥がキッチンから尋ねると
「どっちもいらねぇ」
と返答が返ってきた。
「あんたが茶でも出せって言ったんでしょうが。あ、まさかの紅茶党……? 」
「ちっげーよ、バカ。体調悪くて早退したんだろーが。さっさと寝ろ」
そう言った沢村にぐいっと腕を引かれた。
「痛っ……ちょっ引っ張んなっ……うぁっ」
高弥の抗議を無視して沢村は小さな部屋に置かれたパイプベッドの上に高弥をどさりと置いた。
ベッドの上に転がされたとき、 否が応でもこの前の情事を思い出して身を固くしたが、 沢村はそれ以上何かするつもりはないらしく、高弥から離れると部屋の電気を消した。
何か言おうと口を開いたが、慣れ親しんだベッドの上に転がると、思っていた以上に躯が睡眠を欲していたのだろう。くちびるから音がこぼれ落ちる前に、高弥は眠りへと堕ちていった。
病院からバイクだと10分もしないうちに高弥の住むアパートに到着する。スピードは上げられたが、乗り物酔いをするような運転はされなかったのか、バイクから降りてもふらつきは無かったが文句を言わずにはいられないほどスピードを出された。
「無事に着いてんだからめっちゃ安全運転じゃねぇかよ。それにしても……お前、随分イイトコ住んでな」
バイクを停めて、高弥の部屋があるというアパートを胡散臭いものを見るような目で沢村は見る。
「ボロアパートって言いたいんでしょ」
「お前、いくらまだ研修医ったって、もうちっとマシなとこあんだろうが……」
「そこまで酷いですかね? ボロいですけど、風呂トイレもありますし、木造じゃないし、築30年そこそこってとこですよ? 」
「風呂なしトイレ共同とか見つける方が難しいだろ……今どき風呂トイレあるって胸張れるとこじゃねぇからな。でもま、 とりあえず部屋ん中見てみますかぁ。上? 下? 」
二階建てのアパートを指差して部屋は何階にあるのか沢村が問う。
「2階ですけど……ってもしかして、上がる気ですか?」
如何にも嫌そうな目を向けた高弥に
「お前、先輩に此処まで送らせておいて茶の一杯も出さねぇで帰すとかナシだろ」
と、宣うとさっさと階段を登った。もちろんエントランスにオートロック、なんてものは無いので横付けされている階段を登ればすぐに部屋だ。
「……見た目のとおりボロいですからね? 」
送ってもらって助かったのは事実なので、鍵を開けて沢村を招き入れる。
「うっわ。狭っ。マジで苦学生の部屋って感じじゃん」
小さな6畳の部屋にパイプベッド、 折り畳み式の小さなテーブル。窓は一応南側にあるが、高い建物がすぐ側にあるため日当たりは悪い。ただ、幸いにも部屋のサイズの割には大きな押し入れがあり、大概のものは其処に収納出来るので部屋は片付いていたが。
「ドラ●もんでも出てきそうな押し入れだな…… 」
「……居たら助かりますけどね。……つーか、文句あるなら帰ってもらっても全っ然構わないですけど」
高弥の言葉を無視して、不躾にも物珍しそうに色々見て回る沢村。
「コーヒーか麦茶しか出せませんけど、どっちにします? 」
高弥がキッチンから尋ねると
「どっちもいらねぇ」
と返答が返ってきた。
「あんたが茶でも出せって言ったんでしょうが。あ、まさかの紅茶党……? 」
「ちっげーよ、バカ。体調悪くて早退したんだろーが。さっさと寝ろ」
そう言った沢村にぐいっと腕を引かれた。
「痛っ……ちょっ引っ張んなっ……うぁっ」
高弥の抗議を無視して沢村は小さな部屋に置かれたパイプベッドの上に高弥をどさりと置いた。
ベッドの上に転がされたとき、 否が応でもこの前の情事を思い出して身を固くしたが、 沢村はそれ以上何かするつもりはないらしく、高弥から離れると部屋の電気を消した。
何か言おうと口を開いたが、慣れ親しんだベッドの上に転がると、思っていた以上に躯が睡眠を欲していたのだろう。くちびるから音がこぼれ落ちる前に、高弥は眠りへと堕ちていった。
138
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
巣作りΩと優しいα
伊達きよ
BL
αとΩの結婚が国によって推奨されている時代。Ωの進は自分の夢を叶えるために、流行りの「愛なしお見合い結婚」をする事にした。相手は、穏やかで優しい杵崎というαの男。好きになるつもりなんてなかったのに、気が付けば杵崎に惹かれていた進。しかし「愛なし結婚」ゆえにその気持ちを伝えられない。
そんなある日、Ωの本能行為である「巣作り」を杵崎に見られてしまい……
クローゼットは宝箱
織緒こん
BL
てんつぶさん主催、オメガの巣作りアンソロジー参加作品です。
初めてのオメガバースです。
前後編8000文字強のSS。
◇ ◇ ◇
番であるオメガの穣太郎のヒートに合わせて休暇をもぎ取ったアルファの将臣。ほんの少し帰宅が遅れた彼を出迎えたのは、溢れかえるフェロモンの香気とクローゼットに籠城する番だった。狭いクローゼットに隠れるように巣作りする穣太郎を見つけて、出会ってから想いを通じ合わせるまでの数年間を思い出す。
美しく有能で、努力によってアルファと同等の能力を得た穣太郎。正気のときは決して甘えない彼が、ヒート期間中は将臣だけにぐずぐずに溺れる……。
年下わんこアルファ×年上美人オメガ。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
回帰したシリルの見る夢は
riiko
BL
公爵令息シリルは幼い頃より王太子の婚約者として、彼と番になる未来を夢見てきた。
しかし王太子は婚約者の自分には冷たい。どうやら彼には恋人がいるのだと知った日、物語は動き出した。
嫉妬に狂い断罪されたシリルは、何故だかきっかけの日に回帰した。そして回帰前には見えなかったことが少しずつ見えてきて、本当に望む夢が何かを徐々に思い出す。
執着をやめた途端、執着される側になったオメガが、次こそ間違えないようにと、可愛くも真面目に奮闘する物語!
執着アルファ×回帰オメガ
本編では明かされなかった、回帰前の出来事は外伝に掲載しております。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけます。
物語お楽しみいただけたら幸いです。
***
2022.12.26「第10回BL小説大賞」で奨励賞をいただきました!
応援してくれた皆様のお陰です。
ご投票いただけた方、お読みくださった方、本当にありがとうございました!!
☆☆☆
2024.3.13 書籍発売&レンタル開始いたしました!!!!
応援してくださった読者さまのお陰でございます。本当にありがとうございます。書籍化にあたり連載時よりも読みやすく書き直しました。お楽しみいただけたら幸いです。
運命の番は姉の婚約者
riiko
BL
オメガの爽はある日偶然、運命のアルファを見つけてしまった。
しかし彼は姉の婚約者だったことがわかり、運命に自分の存在を知られる前に、運命を諦める決意をする。
結婚式で彼と対面したら、大好きな姉を前にその場で「運命の男」に発情する未来しか見えない。婚約者に「運命の番」がいることを知らずに、ベータの姉にはただ幸せな花嫁になってもらいたい。
運命と出会っても発情しない方法を探る中、ある男に出会い、策略の中に翻弄されていく爽。最後にはいったい…どんな結末が。
姉の幸せを願うがために取る対処法は、様々な人を巻き込みながらも運命と対峙して、無事に幸せを掴むまでのそんなお話です。
性描写が入るシーンは
※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。
物語、お楽しみいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる