天使の分け前

ゆなな

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7話

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「ん………」
    陽也の意識がふわふわとゆっくりと浮上していく。
うっすらと瞳を開けると真っ白で柔かな寝具に包まれていた。この季節、暑くて汗だくになって目が覚めてしまう陽也のアパートとは異なり、暑くもなく寒くもなくちょうどよい心地よい温度。此処は何処であったかぼんやりと霞かかった頭で記憶の糸を辿ろうとすると。
「起きたかな?おはよう、ハル」
    真っ白なシャツに麻のパンツを身に纏った綾人がいつものように優しい微笑みを浮かべてベッドサイドに腰掛けた。
「オレンジジュース飲める?」
    グラスに注がれている爽やかなジュースの色を見て、こくり、と陽也は頷いて身を起こした。綾人は甲斐甲斐しくストローを差してグラスを陽也に差し出す。
「ありがと……」
   受け取ってお礼を言った自らの声が驚くほど掠れていた。
(え、と……どうして……?あ……っ)
    陽也の掠れた声にクスクス笑う綾人の香りに昨夜の記憶が一気に甦る。はっとして自分の躯を見ると綾人のものだろうか、大きめのシャツを着せられていた。
「どうしたの?飲めない?」
    優しい綾人の声に思わず顔を上げ綾人を見ると、昨夜のひどく雄臭かった彼の姿は欠片もなく、いつもの綺麗で清廉なイメージそのものの綾人が其処に居た。
(も……もしかして、夢でも見たのか……?)
    陽也を押さえつけて一晩中貫き続けたことが信じられないほどに朝陽に照らされた綾人は神々しく天使のように清らかで。
「あ……大丈夫。飲めるよ」
    昨日は何があったかなんて、こんな清らかな綾人に聞けるはずなんかなくて。
    ひと口オレンジジュースを口に含むと甘酸っぱい爽やかなオレンジの香りと味が広がった。
「おいし……」
思わず陽也が言うと、綾人は華が咲いたように笑った。
「さっき僕が絞ったんだ、それ」
「え?綾人が?」
「そう。朝食にパンケーキも焼いてきてあげるよ」
いつもどおりの、優しくてすごく気の利く綾人。
「あのさ……あの……綾人……」
「ん?パンケーキ嫌いなわけじゃないよな?」
「あ、うん……」
「よかった。実は自信持って作れるのはパンケーキだけでさ。朝食のあとは陽也が観たがってた映画部屋で一緒に観よう?」
    クスクス笑う綾人の笑顔はキラキラ眩しくて、陽也はそっと目を細めて、それからグラスのオレンジジュースを飲み干した。
    昨日、何かあったかどうかなんて、やっぱり聞けるわけがない。
(俺、頭おかしくなっちゃったのかな……それとも……)
昨夜のことはなかったことにして……これからもずっと親友でいてくれるということなのだろうか?
    飲み干したグラスを綾人はすっと受け取ると
「朝食の前にシャワーする?」
と尋ねた。
「でも……」
    昨日お風呂に入った記憶がないからシャワーは浴びたいけれど……陽也が遠慮した様子を見せると
「僕の部屋のバスルーム使えばいいから遠慮しないで」 
    綾人はにっこり笑って部屋の奥の扉を指し示す。
    促されるままにバスルームを借りようと起きあがりベッドから脚を下ろして立ち上がろうとしたときだった。
     脚に力が全く入らず、陽也はその場にぺたりと座り込んでしまった。そして……つぅ、と生暖かく白い体液が躯の奥から溢れ落ち陽也の陽に焼けていない白い肌を伝い柔かな絨毯に吸い込まれていった。
「あ……っ」
    陽也が狼狽えた声をあげると、くくっと低い嗤い声が部屋に響いた。
「あんなに何時間も脚を開きっぱなしにされたら、足腰立たなくもなるよね。ごめんね、お詫びに今日は僕がハルの足になってあげるよ」
と綾人は言ったかと思うと、昨夜この部屋に拐って来たのと同じように軽々と陽也を抱き上げた。
 そして陽也が溢した白濁を見咎めると
「なかったことになんて、してあげないよ。ハルはもう、僕のものになったんだよ?シャワー浴びたら朝食を一緒に食べて、その後映画を観たら……溢した分、またちゃんと注がないと、ね?」
とにっこり天使のような顔で綾人は微笑んだ。            
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