天使の分け前

ゆなな

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天使の証人A

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「黒磯!凄いぞ!今回の試験は二位だった!!」
 そう言って見たこと無いくらい上機嫌で迎えの車に乗り込んできた私の若き主、綾人様、こと蓮城綾人。
「は……ぁ?」
 それは私にとって実に不思議なことであったため思わずおかしな返答を返してしまった。定期試験で学年二位というのは非常に素晴らしい順位であることから、この喜び様は未だ高校生という年齢を考えれば特段不思議なことではないと一般的には思うだろう。
 だが、前回の試験。いや、幼稚舎の頃からずっと学年首位以外の順位を取ったことがない人が、二位を取ってしまったらがっかりするだとか、悔しがるだとか、そういった反応が正しいのではないだろうか?
 しかし、私のおかしな返答など上機嫌の綾人様は気にも留まらないようだった。
「一位を取ったのは高等部からの編入生らしいんだ。英語の授業でも留学経験もないらしいのに綺麗なクイーンズ・イングリッシュを話すからただ者ではないと思ってはいたが……」
 湧き起こる笑いが抑えられないといった様子だ。
 綾人様を抜き去り、学年一位を取得した神代陽也という人物について、邸宅に到着するまで綾人様は話し続けた。 
 一応私に向かって話しているようだったが、私の反応など正直なところどうでもいいと言った体であった。だが、恐らくこの人物についてのデータは少しでも多く蓄積しておいた方が良いと長年の勘から感じ取った私は綾人様の言葉に注意深く耳を傾けた。
 その人物はどうやら、素晴らしく優秀で豊富な知識を持ちながらも謙虚な人柄らしい。
もうすぐ邸宅に着くというところで
「灰だらけになって健気に頑張るお姫様、ね……どうやって捕まえようかな………」
 そう言って、くつくつと笑う綾人様の貌は、ぞっとするほど美しかったが、こういう貌をしたときの主は万事において素晴らしい力を発揮して下さるので、発言の内容は捨て置き、私は非常に頼もしく思ったのであった。

 これが、私の持つ陽也さんに関する記憶の中で一番古いものである。
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