17 / 18
天使か悪魔か
しおりを挟む
ゆったりと紫煙を燻らせながらパリコレモデルも斯くもやという長い脚を組み直すとクスクス笑う声が聞こえて視線を上げる。
「見ーちゃった。いっけないんだー蓮城クン」
「お前か、驚かせるな」
そう言ってさらりと長い髪を憂鬱そうに掻き上げる姿は壮絶に色っぽい。 天使よりも悪魔のほうがぴったりだ。
「全然驚いて見えないんですけど。いいのかなー天使サマが煙草なんか吸って」
嘯きながら綾人の胸ポケットに入っていたジッポをすっと抜き取って唇に銜えた煙草に火を点けた藍澤。
「俺よりお前のがまずいだろう?鬼の風紀委員長じゃなかったか?」
艶やかな黒髪をタイトにセットしてシルバーフレームの眼鏡を掛けた藍澤はひょいっと片眉を上げて低く嗤った。
「息抜き、息抜き。天使だって息抜きが必要なら風紀委員長なんか尚のこと必要だろ?そんなことよりも、随分夢中らしいじゃないか」
「…何がだ?」
「惚けて見せても、情報は入ってきてるんだよ、綾人。髪の毛ばっさり切ったら、めちゃくちゃ色っぽくなっちゃって、神代君。『あの』天使様が骨抜きで、片時も傍を離れないって、すげぇ噂だぞ。こんなとこでボディーガードサボって一服なんてしてていいのかよ」
「下の進路指導室で担任と面談中だからな。さすがに面談中は大丈夫だろ」
「毎日毎日礼拝堂でデートしてるらしいじゃん。まるでギムナジウムを舞台にしたイケナイ映画みたいだって」
藍澤に綾人はゆっくりと長い睫毛に囲われた瞳を瞠目すると紫煙を吐き出した。
「イケナイ映画、ね」
藍澤の言葉に低く嗤う綾人。
「で、どうだった?学年トップを『あの』蓮城綾人と争う神代陽也クンのお味は?」
とニヤニヤ彼の冷たさの漂うクールな容貌を裏切る下卑た笑いを浮かべて藍澤は尋ねる。
「もったいなくて教えられるか」
綾人はふ、と煙を藍澤目掛けて吐き出す。
「何だよ、それ!余計に聞きたくなるじゃんか!」
ちらりと横目で綾人は藍澤を見遣ると、酷く淫猥な笑みを浮かべて
「すっげぇ、イイ」
と、嗤った。
壮絶な色気を醸し出す綾人に藍澤は思わずポカンと口が開いた。それから
「あちっ…っぶねー」
思わず煙草を取り落とした。
「何やってんだ」
呆れ顔の綾人に。
「えっろい顔すんじゃねぇよ、それにしても、そんなにイイんだ、ハルくん」
「気安く呼ぶな」
「いいじゃん、そんなにいいなら一回くらい貸してよ。綾人がそこまでお気に入りなら俺だってちょっと興味ある。あのうるうるしてるように見える大きな瞳、あーんなの前髪で隠してたなんてな。あんな目ぇされたら泣かせてみたくなるよな……っと」
藍澤が口にした瞬間。ざわりと周囲の温度が音を立てて冷たく冷えるのを感じた。綾人の纏う雰囲気があっという間に鋭いナイフのように鋭利になった。
「ハルは、駄目だ。指一本でも触れたら……」
この先は言わなくてもわかるだろう?と綺麗な瞳に酷く冷たい彩をせて藍澤を見遣る。この視線の恐ろしさを嫌と言うほど知っている藍澤は軽く両手を上げて降参のジェスチャーをして見せる。
「そんな怖い顔すんなって。綾人を敵に回すなんて命懸けなことするほど馬鹿じゃないって」
そんな藍澤を一瞥すると綾人は煙草を空き缶に捩じ込んで押し込み立ち上がった。
「先に戻る」
それから視線だけ藍澤に向けると
「じゃあ僕の煙草の後始末よろしく頼みますね、藍澤くん」
これまでの低い声とは違った清らかさを纏う透明感のある声色で綾人はそう言うと、吸殻の入った空き缶を藍澤の胸元に押し付けた。
「あ、はい……ってきったねぇぞ、綾人」
思わず空き缶を受け取ってしまって苦々しい顔の藍澤に
「便利だろ?コレ」
そう言って声を立てて楽しそうに笑うと陽に透けそうな髪をさらりと揺らして綾人はその場を後にした。
「見ーちゃった。いっけないんだー蓮城クン」
「お前か、驚かせるな」
そう言ってさらりと長い髪を憂鬱そうに掻き上げる姿は壮絶に色っぽい。 天使よりも悪魔のほうがぴったりだ。
「全然驚いて見えないんですけど。いいのかなー天使サマが煙草なんか吸って」
嘯きながら綾人の胸ポケットに入っていたジッポをすっと抜き取って唇に銜えた煙草に火を点けた藍澤。
「俺よりお前のがまずいだろう?鬼の風紀委員長じゃなかったか?」
艶やかな黒髪をタイトにセットしてシルバーフレームの眼鏡を掛けた藍澤はひょいっと片眉を上げて低く嗤った。
「息抜き、息抜き。天使だって息抜きが必要なら風紀委員長なんか尚のこと必要だろ?そんなことよりも、随分夢中らしいじゃないか」
「…何がだ?」
「惚けて見せても、情報は入ってきてるんだよ、綾人。髪の毛ばっさり切ったら、めちゃくちゃ色っぽくなっちゃって、神代君。『あの』天使様が骨抜きで、片時も傍を離れないって、すげぇ噂だぞ。こんなとこでボディーガードサボって一服なんてしてていいのかよ」
「下の進路指導室で担任と面談中だからな。さすがに面談中は大丈夫だろ」
「毎日毎日礼拝堂でデートしてるらしいじゃん。まるでギムナジウムを舞台にしたイケナイ映画みたいだって」
藍澤に綾人はゆっくりと長い睫毛に囲われた瞳を瞠目すると紫煙を吐き出した。
「イケナイ映画、ね」
藍澤の言葉に低く嗤う綾人。
「で、どうだった?学年トップを『あの』蓮城綾人と争う神代陽也クンのお味は?」
とニヤニヤ彼の冷たさの漂うクールな容貌を裏切る下卑た笑いを浮かべて藍澤は尋ねる。
「もったいなくて教えられるか」
綾人はふ、と煙を藍澤目掛けて吐き出す。
「何だよ、それ!余計に聞きたくなるじゃんか!」
ちらりと横目で綾人は藍澤を見遣ると、酷く淫猥な笑みを浮かべて
「すっげぇ、イイ」
と、嗤った。
壮絶な色気を醸し出す綾人に藍澤は思わずポカンと口が開いた。それから
「あちっ…っぶねー」
思わず煙草を取り落とした。
「何やってんだ」
呆れ顔の綾人に。
「えっろい顔すんじゃねぇよ、それにしても、そんなにイイんだ、ハルくん」
「気安く呼ぶな」
「いいじゃん、そんなにいいなら一回くらい貸してよ。綾人がそこまでお気に入りなら俺だってちょっと興味ある。あのうるうるしてるように見える大きな瞳、あーんなの前髪で隠してたなんてな。あんな目ぇされたら泣かせてみたくなるよな……っと」
藍澤が口にした瞬間。ざわりと周囲の温度が音を立てて冷たく冷えるのを感じた。綾人の纏う雰囲気があっという間に鋭いナイフのように鋭利になった。
「ハルは、駄目だ。指一本でも触れたら……」
この先は言わなくてもわかるだろう?と綺麗な瞳に酷く冷たい彩をせて藍澤を見遣る。この視線の恐ろしさを嫌と言うほど知っている藍澤は軽く両手を上げて降参のジェスチャーをして見せる。
「そんな怖い顔すんなって。綾人を敵に回すなんて命懸けなことするほど馬鹿じゃないって」
そんな藍澤を一瞥すると綾人は煙草を空き缶に捩じ込んで押し込み立ち上がった。
「先に戻る」
それから視線だけ藍澤に向けると
「じゃあ僕の煙草の後始末よろしく頼みますね、藍澤くん」
これまでの低い声とは違った清らかさを纏う透明感のある声色で綾人はそう言うと、吸殻の入った空き缶を藍澤の胸元に押し付けた。
「あ、はい……ってきったねぇぞ、綾人」
思わず空き缶を受け取ってしまって苦々しい顔の藍澤に
「便利だろ?コレ」
そう言って声を立てて楽しそうに笑うと陽に透けそうな髪をさらりと揺らして綾人はその場を後にした。
243
あなたにおすすめの小説
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
悪夢の先に
紫月ゆえ
BL
人に頼ることを知らない大学生(受)が体調不良に陥ってしまう。そんな彼に手を差し伸べる恋人(攻)にも、悪夢を見たことで拒絶をしてしまうが…。
※体調不良表現あり。嘔吐表現あるので苦手な方はご注意ください。
『孤毒の解毒薬』の続編です!
西条雪(受):ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗(攻):勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
ファントムペイン
粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。
理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。
主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。
手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった……
手足を失った恋人との生活。鬱系BL。
※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。
人並みに嫉妬くらいします
米奏よぞら
BL
流されやすい攻め×激重受け
高校時代に学校一のモテ男から告白されて付き合ったはいいものの、交際四年目に彼の束縛の強さに我慢の限界がきてしまった主人公のお話です。
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
【BL】無償の愛と愛を知らない僕。
ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。
それが嫌で、僕は家を飛び出した。
僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。
両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。
それから十数年後、僕は彼と再会した。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる