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アンジェ
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予想していた答えだとはいえ、パティは大きな衝撃を受けた。
アンジェはフウッと小さくため息をついてから口を開いた。
「パティ。わたくしとお前が出会ったのも何かの縁だ。一つわたくしの昔話を聞いてはくれまいか?」
パティはコクリとうなずいた。アンジェも小さくうなずく。
「わたくしは、このグルニア国ができるはるか昔、パンドール国で生まれました」
パンドール国。パティのルーツだと考えられる国だ。パティの表情が変わった事に気づいたアンジェは一つうなずいてから言った。
「そうだ。黒い髪で黒い瞳のパティの両親の国だ。そして、ターニャの故郷だ」
アンジェは視線をさまよわせ、虚空を見つめながら話し出した。まるで懐かしい過去の記憶を思い出すように。
アンジェはパンドール国の裕福な貴族の一人娘に生まれた。両親はアンジェを深く愛し、天使という名をつけた。
アンジェはその名の通り天使のように美しく成長し、もうすぐ神から魔法を授かる年齢に近づいた。
アンジェの両親の魔法は《ジュエル》。美しい宝石を作り出す魔法で、莫大な財産を得ていた。
当然両親はアンジェに《ジュエル》の魔法を授かるように言っていた。
だがアンジェには胸に秘めた野望があった。自分の美しさを永遠に保つ魔法を欲したのだ。
《不老不死》の魔法は禁忌とされていた。だがアンジェはその誘惑にあらがう事ができなかった。
神からの魔法を授かった後、両親はアンジェに宝石を作るように頼んだ。アンジェは手のひらを両親の前に突き出して、一生懸命宝石の出現を願うが、もちろん宝石なんて出てこない。
アンジェの魔法は《ジュエル》ではないのだ。両親は、最初は誰でもすぐに魔法は使えない。練習すれば必ずできるようになると笑っていた。
だが二年、三年経ってもアンジェは宝石を作り出す事ができなかった。それどころか、すくすく育っていたアンジェの成長がピタリと止まってしまったのだ。
ついに両親はアンジェが授かった魔法が何であるかに思いいたった。両親はアンジェに対して、怒り嘆き悲しんだが、ついには永遠に生きなければならない愛しいわが子のために計画を立てた。
両親はアンジェに永遠に生活に困らないほどの宝石を授け、宝石の鑑定の仕方、宝石の売買の知識を授けた。
両親が年老いて亡くなる頃、アンジェは十歳の姿のまま、あらゆる宝石と知識を持った宝石商人になっていた。
アンジェは両親と自身が住んだ屋敷をしかるべき者に託し、アンジェの秘密を知る忠臣だけを連れ、旅に出た。
アンジェはパンドール国内を渡り歩き、巨万の富を得た。アンジェの家臣たちは自然の流れにより年老いて死に、アンジェは新たな自分の家臣になる子供たちを育てた。
アンジェが《不老不死》の魔法を授かってから、ちょうど五百年が経った頃、パンドール国の近くに異国人たちの国が建国された。
その国はパンドール国よりもはるかに技術が遅れていたが、何より国民の数が多かった。国民の外見の容姿は多岐にわたり、金髪や茶色い髪、赤い髪。肌は白、黄色、茶色、と様々だ。
アンジェは新しくできた野蛮で未開な国にどことなく危機感を覚えた。それは五百年という長い時間を生きてきた賢者の予感だったのかもしれない。
アンジェは家臣たちを連れ、宝石商としてグルニア国に入国する事にした。その当時グルニア国は、先進国であるパンドール国の知識や商品を強く欲していた。アンジェたちは宝石商として、グルニア国の有力者たちに宝石を売りさばいた。
アンジェは確実にグルニア国に根を伸ばしていった。
アンジェはフウッと小さくため息をついてから口を開いた。
「パティ。わたくしとお前が出会ったのも何かの縁だ。一つわたくしの昔話を聞いてはくれまいか?」
パティはコクリとうなずいた。アンジェも小さくうなずく。
「わたくしは、このグルニア国ができるはるか昔、パンドール国で生まれました」
パンドール国。パティのルーツだと考えられる国だ。パティの表情が変わった事に気づいたアンジェは一つうなずいてから言った。
「そうだ。黒い髪で黒い瞳のパティの両親の国だ。そして、ターニャの故郷だ」
アンジェは視線をさまよわせ、虚空を見つめながら話し出した。まるで懐かしい過去の記憶を思い出すように。
アンジェはパンドール国の裕福な貴族の一人娘に生まれた。両親はアンジェを深く愛し、天使という名をつけた。
アンジェはその名の通り天使のように美しく成長し、もうすぐ神から魔法を授かる年齢に近づいた。
アンジェの両親の魔法は《ジュエル》。美しい宝石を作り出す魔法で、莫大な財産を得ていた。
当然両親はアンジェに《ジュエル》の魔法を授かるように言っていた。
だがアンジェには胸に秘めた野望があった。自分の美しさを永遠に保つ魔法を欲したのだ。
《不老不死》の魔法は禁忌とされていた。だがアンジェはその誘惑にあらがう事ができなかった。
神からの魔法を授かった後、両親はアンジェに宝石を作るように頼んだ。アンジェは手のひらを両親の前に突き出して、一生懸命宝石の出現を願うが、もちろん宝石なんて出てこない。
アンジェの魔法は《ジュエル》ではないのだ。両親は、最初は誰でもすぐに魔法は使えない。練習すれば必ずできるようになると笑っていた。
だが二年、三年経ってもアンジェは宝石を作り出す事ができなかった。それどころか、すくすく育っていたアンジェの成長がピタリと止まってしまったのだ。
ついに両親はアンジェが授かった魔法が何であるかに思いいたった。両親はアンジェに対して、怒り嘆き悲しんだが、ついには永遠に生きなければならない愛しいわが子のために計画を立てた。
両親はアンジェに永遠に生活に困らないほどの宝石を授け、宝石の鑑定の仕方、宝石の売買の知識を授けた。
両親が年老いて亡くなる頃、アンジェは十歳の姿のまま、あらゆる宝石と知識を持った宝石商人になっていた。
アンジェは両親と自身が住んだ屋敷をしかるべき者に託し、アンジェの秘密を知る忠臣だけを連れ、旅に出た。
アンジェはパンドール国内を渡り歩き、巨万の富を得た。アンジェの家臣たちは自然の流れにより年老いて死に、アンジェは新たな自分の家臣になる子供たちを育てた。
アンジェが《不老不死》の魔法を授かってから、ちょうど五百年が経った頃、パンドール国の近くに異国人たちの国が建国された。
その国はパンドール国よりもはるかに技術が遅れていたが、何より国民の数が多かった。国民の外見の容姿は多岐にわたり、金髪や茶色い髪、赤い髪。肌は白、黄色、茶色、と様々だ。
アンジェは新しくできた野蛮で未開な国にどことなく危機感を覚えた。それは五百年という長い時間を生きてきた賢者の予感だったのかもしれない。
アンジェは家臣たちを連れ、宝石商としてグルニア国に入国する事にした。その当時グルニア国は、先進国であるパンドール国の知識や商品を強く欲していた。アンジェたちは宝石商として、グルニア国の有力者たちに宝石を売りさばいた。
アンジェは確実にグルニア国に根を伸ばしていった。
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