転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

血は受け継がれるらしい

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「あら?思ったより早く来たのね。」
 

「急いで来ました。もしかしたら帰ってしまうかもしれないので。」


 ぎくっ!まさに帰ろうとしてましたよ。 顔を見るのが怖いなぁ。でも見なきゃだよね…


「……っ!!!」


 やっぱりあの男の子だよぉ!!しかも、しっかり目が合っちゃったよ。1人あたふたしていると耐えきれなかったのか笑い出した。


「ふっ…もうダメ。はははっ!」


「むぅ!そんなに笑わないでよー」


「ごめんごめん。だって僕が誰か知ってそんなに驚くなんて思わなかったんだもん。あー可笑しい。」


 ひどい!膨らませたほっぺをつんつんして遊ばないで下さい。
  

「なんだ?やっぱり知っていたのか?」


「この前一度だけ会ったの。」


「あらいつかしら?教えてティアちゃん。」


 セルーナ様がそう言った瞬間、第2王子様が青ざめた。


「つい最近だけど、騎士寮にいた時に会ったの。」


「へぇ…騎士寮ねぇ?まさか1人で行ったなんて言わないわよね…レオンハルト?」


 セルーナ様が怖いです。後ろに吹雪が見えます。どうやら第2王子様にとって余計な事を言ってしまったようです。確かにあの時、「親には言ってきたのか?」って聞いたら返事は曖昧にされたけど間違いなく言ってきてなかった感じだった。近所の子どもとかなら許されるかもしれないけど、王子ともなると流石にまずいよね。


「母上、これには深ーい理由がありまして。」


「あらあら。一体どれくらい深い理由なのかしらね?」


 うわぁ。セルーナ様すごい笑顔なんだけど。ほら見てよ。ガル様なんて自分が怒られてるかのようにビクビクしてるよ。第2王子様に向かって憐れんでるよ。いや、感謝してる?怒られてるのが自分じゃなくて安心してるよね!?そんなにセルーナ様が怖いのね。


「そ、そうだ!僕、ティアに城の中を案内して来ますね!」


 え?ちょっ!手を引っ張られてそのまま走り出した第2王子様。てか、何気なく名前で呼ばれてるんだけど!?


「待ちなさいレオンハルト!!!」


 セルーナ様の怒りの声が響いた。これは戻るに戻れない。


「ティアーー!!!」


 エリック隊長の叫びも聞こえる。ごめんなさいエリック隊長!私にはこの第2王子様を止める事は出来ません。









♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

「もう大丈夫かな?」


 はぁはぁ…疲れた。お城の中を走り回ったよ。後ろから追いかけてきた人たち(たぶん第2王子様付きの人たち)を撒く為に色んな所に隠れたりしたからね。これで大丈夫じゃなかったら振り回された意味!!


「もっとゆっくり走って下さいよ…」


「無茶言う。あれでもティアに合わせて少しゆっくり走ったんだよ。おかげで何回も隠れてやり過ごしたんだから。」


 何故、私が悪いみたいに言う!?やれやれみたいなこと言わないでよー


「……で、ここはどこですか?」
 

「待ってもう少し……ほら着いた!見てごらん。僕のお気に入りの場所なんだ。」


 第2王子様に促されて見ると……


「うわぁ!すごいっ。綺麗!!」


 そこは庭園のような場所だった。綺麗に手入れされた花が咲き誇っていて光が差し込みキラキラと輝いているかのようだった。


「ここは今は使われてない所なんだ。使われていないだけで手入れはしっかりされているからこんなにも美しいんだ。どう?気に入ってくれた?」


「うん!凄く気に入った!」


 ニコニコして言うと照れ臭そうに第2王子様はした。


「あとお願いがあるんだけど、今みたいに話して欲しいな。この前会った時は僕が誰か知らなかったからってのもあるけど普通に接してくれたでしょ?今日なんてと言うか…さっきまで王子として対応してたでしょ!」


 うぅ…そうなんだよね。気が抜けて今は普通に話してたんだよね。


「でも第2王子様だし……」


「僕が良いって言ってるから良いの!」


「分かったよ!これでいいでしょう、レオンハルト様!!」


「まだダメ。僕の事はレオンって呼んで。」


 出たぁぁあ!!間違いなくガル様とセルーナ様の血を受け継いでるよ。



「レオン様」


「…………」


 え?なんで無言?


「レ、レオン様?」


「…………」


 だからなんで無言なの?ま、まさか呼び捨てにしろってこと?冗談でしょ。あ、これ冗談じゃないわ。


「レオン」


「ん。よく出来ましたティア。」


 よく出来ましたという結果に強制的にさせらせたの間違いだよね。一種の脅迫だからね!


「でも時と場合で使い分けるからね。」


「……仕方ないか」


 仕方なくない!当たり前だよ。一国の王子に向かってそんなに親しくしてたら何て言われることやら。人気者と下手に親しくしていたら恨みを買うだけなんだよ。特に女子は怖いんだから……


「それにしても、また会えて嬉しかったよ。あの時はほんの少ししか話せなかったから」


「私は後悔してますよ。もしレオンが王子だって知っていたらあんな事言わなかったのに……」


「あんな事って?」


 そのニヤニヤ顔やめてくれないかな。なんか悔しい。


「その…自意識過剰とか」


「ぷっ…あははは!!あれは最高だったよ。まさか自意識過剰なんて言われるなんて。初めて言われたよ。この国じゃ銀髪は僕ら王族だけだろうしね。しかも銀髪にこの瞳の色。この組み合わせは僕と父上だけだから。兄上は母上と同じ瞳の色だし。なんていうかティアの反応が新鮮だったよ。」


 くぅ!!馬鹿にしてるな。


「レオンが王子らしくなかったから仕方ないんじゃない?」


「変装しなくても周りに馴染めていたって褒めてくれてるんだ?」


 反撃失敗だ。むむむ。


「そんなに睨んでも可愛いだけだよ?」


「お世辞はいいから!!」











 そして、エリック隊長たちに見つかるまで2人はたくさん話したり遊んだりしていたのだった。














 
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