転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

【閑話】???年前のお話

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「ただいま~!!フェンリルさんたち遅くなっちゃった。」


〈おかえりリーナ…ってどうしたの!?〉


〈何があったのだ!?〉


 リーナは見るも無惨なボロボロ状態だった。


「あーちょっとね。感覚なくて治すの忘れてたや。ごめんごめん。ここに帰ること優先したのは失敗だったなー。」


 へらへら笑うリーナは見ていて痛ましい。フェンリルは急いで回復魔法をかける。


〈ひたすら回復魔法を練習したかいがあった…全く!説明しないか!〉


「前から言われてた仕事があったでしょ?それの報告に行ったの。それで情報不足だってお叱りを受けただけよ。」


〈リーナ頑張ってたじゃん!隣国の調査でしょ?あそこでの情報集め大変だったの僕は知ってるよ。城への侵入なんてそう易々と出来ない事もやってのけてたじゃん!〉


 まぁね。と力なく笑うリーナに大フェンリルは怒りが隠せない。


〈そなたの実力ならば、そのような傷を負わされることもないのではないか?まして、回復魔法は使えるだろう?〉


「あはは…買い被り過ぎだよ。魔力封じを付けられちゃったからさ、魔法は一切使えなかったの。」


〈体術があるだろう!武術にも才があるそなたならっ!!〉


「もういいよっ!!もう、いいから…ごめん。今日はもう先に寝るね。おやすみ。」


 リーナは9階の寝室へと向かった。






















〈父さん、リーナ大丈夫かな?なんでリーナにあんな事するんだろう。リーナは自分が嫌われ者だって言ってるけど、みんなから嫌われるような子じゃないよ?むしろ誰からも好まれるような…父さん?〉


〈……まさか、な。だが、もしそうだとしたら…〉


〈父さん!?〉


 小フェンリルは突然慌ててリーナを追いかけて行った父親に目を丸くする。





















 リーナは9階寝室へと足を運んでいた。ここはリーナ専用の寝室だ。リーナはベットに飛び込むように横になる。


「はぁ…ほんと嫌になる。」


 枕に顔を埋めるようにして呟く。そこに誰かがやってきて近づく気配があった。


〈リーナ…〉


「フェンリルさん?悪いけど今は1人にしてほしいの。」


〈我は知りたいのだ。そなたがなのかを。だから少しだけ我に付き合ってはくれぬか?〉


「………分かった。」


 リーナは身体を起こしベットの端に座り直した。


〈我には昔、ある人族の娘に知り合いがいた。その娘とはわずかばかりしか一緒には居られなかったがとても大切な思い出であり、消したい思い出でもある。その娘はな、村では厄介者にされていた。そなたの言うところの嫌われ者というやつだ。だがな、我はその娘を気に入っていた。心優しい愛らしい子だった。その娘にとって我は唯一の味方だったことだろう。だと言うのに…我はあの娘を見捨てた。〉


「えっ」


 フェンリルの見捨てたという言葉に戸惑いを隠せないリーナ。なぜならリーナにとってフェンリルたちは唯一の味方、フェンリルのいうと同じなのだから。もし、フェンリルの話が本当だとしたらリーナも見捨てられるかもしれない。リーナは来るかもしれない未来に恐怖した。


〈我は謝りたくて、その娘に会いに行った。だが全ては遅すぎた。我が村へと着いたとき、すでにあの娘は虫の息だった。全身血だらけで回復魔法が苦手な我にはどうしようもなかった。見捨てた我を、弱い我を、あの娘は恨むことすらしなかった。我儘と言って口にした言葉は「友になって欲しい」といった我儘ですらなかった。我が友だと言った瞬間、あの娘は満足だと言わんばかりに息を引き取った。我は謝ることが出来なかったばかりか助けることも出来なかったのだ。…リーナ?〉



「あ、あれ?なんだろう。おかしいな。こんなにも胸が痛いなんて。よく分からないけどフェンリルさんには自分を責めてほしくないな。フェンリルさん、あなたはその女の子を見捨ててなんかいないよ。私ね、フェンリルさんがその女の子を見捨てたって言った時、いつか自分も見捨てられるかもしれないって怖かった。けどね、最後まで聞いてそんなのありえないって思ったんだ。今でもその女の子の事を覚えている事が何よりの証拠だよ。その女の子は最後幸せだったはずだよ。きっと笑っていたでしょう?」


〈あぁ…その通りだ。あの娘は笑っていた。儚く美しい大好きな笑みだった。あの娘は我を憎んではいないだろうか。〉


 フェンリルは当時を思い浮かべる。


「私がその女の子だったら、きっとこう言うな。」


 フェンリルさん大好きだよ。



〈…っ!!〉


 フェンリルは目を見開く。その表情や言い方はあまりにもにそっくりで姿が重なって見える。


〈やはり…そなたなのだな。〉


「え?」


〈リーナよ、我と従魔契約をしないか?〉


「唐突に何!?」


 先程までのしんみりとした雰囲気はどこに消えたのやら。


〈従魔契約をすれば確固たる繋がりが出来る。神獣である我と契約など、得はあっても損はないぞ?〉


「損得の関係なんて嫌だからしない!」


〈クックック。ならば損得関係なく我と従魔契約をしてくれないか?〉


 リーナは断りを入れようとしたが、フェンリルのあまりにも真剣な目に口を閉ざす。


「なんで、そこまで私と?」


〈そうだな…ここは秘密ということにしておこう。〉


「秘密なの!?」


 ベットからズリ落ちそうになるリーナ。


「はぁ。うん、決めた。フェンリルさんと従魔契約をするよ。」


〈ありがとうリーナ。では、早速契約をしよう。〉


「うん!」


 リーナはフェンリルと従魔契約をするためにフェンリルへと魔力を流す。その魔力はフェンリルの魂へと結びつく。そして、フェンリルもまたリーナへと魔力を流し、リーナの魂へと触れる。
 

【サワルナ…サワルナ…サワルナッ!!】


〈ーーッ!この感じ…嫌でも覚えているぞ。悪いが今回は引かないっ!!リーナ、我に名を授けよ!〉


「わ、分かった!フェンリルさんの名前は…バルフ!バルフだよっ!」


 フェンリルの迫力に驚くリーナだが無事にフェンリルへと名付けが終わる。その瞬間、バルフとの繋がりがしっかりと感じられるようになった。


 
〈これで、これで…〉


「バルフ?成功したんだよね?」


〈ん?あぁ、これで我とリーナは正式に従魔契約が成されたぞ。少しリーナの核なる魂に細工をするぞ。〉


「へ?」


 バルフはリーナの核である魂から発せられるを封じ込めるように神力と魔力をもって抑える。バルフは神獣であり、少なからず神の力を持ち合わせている。とは言っても神とはまた別の存在であることには変わりないため、バルフの使う神力は神が使うものと比べると弱い。それでも神力には違いない。それと同時にバルフがもつ魔力も流し込むことでの影響を少しばかりか弱めることに成功した。


「んー?何か細工したの?全くわからないわ。」


〈リーナは気にしなくていい。悪いことをしたわけではないので、これと言って普段の生活に影響はない。気休めかも知れんが我の安心に繋がるのでな。〉


「ふーん。フェンリルさん、じゃなくて、バルフが安心出来る為なら全然いいよ!それじゃあ、今日はもう寝るね。」 


〈おやすみリーナ。良い夢を。〉


 バルフはリーナの頭に軽くキスすると部屋を後にした。
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