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本編
【閑話】???年前のお話
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バルフたちが眠りについた後、リーナは1人涙を流した。先程までは堪えていた涙も限界を達していた。
「ーーっ。ぁあ…ふぅ…泣くなリーナ。覚悟は決めたはずでしょう。」
リーナはフェンリルたちを撫でると涙を拭い前だけを向いた。
「よしっ。ダンジョンの契約者が命ずる。10階層ハウス、フェンリルの家を一時封印し、出口を閉じよ。今後、フェンリルの家へと辿り着く者が現れるまで封鎖せよ。ゴーレムたちに命ずる。契約者である私が帰るまでこのダンジョンを守りなさい。」
ダンジョンは契約者リーナの意思を忠実に守るため、10階層への空間を封じ、ゴーレムへの指示も通った。
リーナはダンジョンそのものも封鎖する為、ダンジョンへ入る扉までやってきた。
「この玄関扉も閉めなきゃね。んー。あれが必要か。」
リーナは契約者たる証を刻んだ石碑を思い出した。
「契約の印、石碑よここに顕現せよ。」
光の粒が現れ次第に石碑へと変わる。
「いや重いって!顕現したのはいいけどドーンって急に落とすのはやめて欲しいよっ!身体強化、少しでも遅れてたら私の足に絶対落ちてた!キャッチ出来て本当に良かったぁ。冷や汗やばっ。」
石碑を持ったリーナはダンジョンの扉のそばに石碑を設置した。
「この石碑を読む事でダンジョン扉もとい、私たちの家への玄関扉が開く仕掛けにしてと…うん、いい感じ!これでダンジョンへ入る術は未来の私にしか出来なくなったわ。後はここまでの道よね。樹の中に入って、ダンジョン扉までの道は複雑でも単純でもなく、簡単と言えば簡単。罠はいくつか用意してるけど不安ね。樹自体にも認識魔法を使っておくか。」
リーナは外へと出ると樹に認識魔法をかけた。効果は樹がそこにあるという認識を薄れさせるもの。どれほど持続するかは分からない。だがリーナほどの魔法師にかかればおそらく百年単位では保つだろう。
「これでやる事はやったわね。思い残す事なんて……あるに決まってるじゃない。なんでなのよ。なんで私なのよ。あーぁ。明日死ぬのかぁ。死にたく、ないなぁ。」
空を見上げたリーナ。そこには空いっぱいに輝く星々たち。
「ははは…綺麗だなぁ。眩しいくらいに輝いてるや。この光景が見れる夜も今日が最後なんだよね。あっ、流れ星。叶う事はないけれど願うのは自由よね…」
リーナは手を合わせ流れ星に願った。
(どうか私を死から救って下さい)
夜が明けた。リーナは国へと帰って来ていた。
「貴様は第一軍として戦いの最前線で敵を蹴散らせ。」
「仰せのままに…」
リーナは王座に座る男の命令に返事をすると立ち上がり、そのまま戦場へと赴く。
「うぉおおお!!」
「あぁああ!!」
カキンカキンッ
剣がぶつかり合う音、魔法のぶつかり合う音、そして命のぶつかり合う音。舞う血が地面を濡らし、動かなくなった生きていた者たち。地獄の戦場の中で一際動き回る影が一つあった。
「ーーっ!はぁぁあ!!」
束になって掛かってくる者たちを1人で相手にしている少女がいた。他の戦士たちよりも一回り小さい彼女は誰よりも血に染まっていた。彼女の敵は隣国の戦士たち。だけではなかった。自国の戦士たちは敵を引きつけている少女諸共攻撃を仕掛けるのだ。広範囲攻撃魔法で少女ごと狙うこともある。その度に少女は防壁魔法を使って避けているが完全に回避する事は不可能であり、着々と傷が増えている。
「うぁ…はぁ、はぁ。」
立っているのもやっとの状態の少女の名はリーナ。レイピアを杖代わりにして立ち上がり、周りを見渡す。
「これじゃあ、どっちが味方で敵か分からないじゃない。」
リーナを取り囲むようにして攻撃を準備しているのは、自国と敵国両方の戦士たちである。
「いいわよ…どっちも相手してあげようじゃないの!!」
リーナは痛む身体に鞭を打ち、眼を据えると雄叫びを上げて動き出す。
「アァァアア"ッ!!!」
【フレイムトルネード】
リーナは魔法を展開した。それは1つだけでなくいくつも発生させた。戦地の各地で炎の竜巻が現れ、敵味方関係なく命を奪っていく。リーナの近くにいた戦士が剣でリーナを斬った。
「ーーッ!グハッ…ま、まだよ。私はまだ生きてるッ!!」
斬りつけてきた戦士を投げ払いトドメを刺す。
「はぁはぁ…ウグッ!嫌だ、死にたくない。生きたい。また私は生きてあの場所にッ!」
グサグサっ
「ぁ…」
リーナは地中から突き出てきた土槍で串刺しにされた。
魔力も空になり、傷だらけの身体では避けることは出来なかった。
「ははっ…やっぱり帰れそぅに…なぃや…」
リーナ・クロレスの意識はここで途切れ、以後目醒めることはなかった。
「ーーっ。ぁあ…ふぅ…泣くなリーナ。覚悟は決めたはずでしょう。」
リーナはフェンリルたちを撫でると涙を拭い前だけを向いた。
「よしっ。ダンジョンの契約者が命ずる。10階層ハウス、フェンリルの家を一時封印し、出口を閉じよ。今後、フェンリルの家へと辿り着く者が現れるまで封鎖せよ。ゴーレムたちに命ずる。契約者である私が帰るまでこのダンジョンを守りなさい。」
ダンジョンは契約者リーナの意思を忠実に守るため、10階層への空間を封じ、ゴーレムへの指示も通った。
リーナはダンジョンそのものも封鎖する為、ダンジョンへ入る扉までやってきた。
「この玄関扉も閉めなきゃね。んー。あれが必要か。」
リーナは契約者たる証を刻んだ石碑を思い出した。
「契約の印、石碑よここに顕現せよ。」
光の粒が現れ次第に石碑へと変わる。
「いや重いって!顕現したのはいいけどドーンって急に落とすのはやめて欲しいよっ!身体強化、少しでも遅れてたら私の足に絶対落ちてた!キャッチ出来て本当に良かったぁ。冷や汗やばっ。」
石碑を持ったリーナはダンジョンの扉のそばに石碑を設置した。
「この石碑を読む事でダンジョン扉もとい、私たちの家への玄関扉が開く仕掛けにしてと…うん、いい感じ!これでダンジョンへ入る術は未来の私にしか出来なくなったわ。後はここまでの道よね。樹の中に入って、ダンジョン扉までの道は複雑でも単純でもなく、簡単と言えば簡単。罠はいくつか用意してるけど不安ね。樹自体にも認識魔法を使っておくか。」
リーナは外へと出ると樹に認識魔法をかけた。効果は樹がそこにあるという認識を薄れさせるもの。どれほど持続するかは分からない。だがリーナほどの魔法師にかかればおそらく百年単位では保つだろう。
「これでやる事はやったわね。思い残す事なんて……あるに決まってるじゃない。なんでなのよ。なんで私なのよ。あーぁ。明日死ぬのかぁ。死にたく、ないなぁ。」
空を見上げたリーナ。そこには空いっぱいに輝く星々たち。
「ははは…綺麗だなぁ。眩しいくらいに輝いてるや。この光景が見れる夜も今日が最後なんだよね。あっ、流れ星。叶う事はないけれど願うのは自由よね…」
リーナは手を合わせ流れ星に願った。
(どうか私を死から救って下さい)
夜が明けた。リーナは国へと帰って来ていた。
「貴様は第一軍として戦いの最前線で敵を蹴散らせ。」
「仰せのままに…」
リーナは王座に座る男の命令に返事をすると立ち上がり、そのまま戦場へと赴く。
「うぉおおお!!」
「あぁああ!!」
カキンカキンッ
剣がぶつかり合う音、魔法のぶつかり合う音、そして命のぶつかり合う音。舞う血が地面を濡らし、動かなくなった生きていた者たち。地獄の戦場の中で一際動き回る影が一つあった。
「ーーっ!はぁぁあ!!」
束になって掛かってくる者たちを1人で相手にしている少女がいた。他の戦士たちよりも一回り小さい彼女は誰よりも血に染まっていた。彼女の敵は隣国の戦士たち。だけではなかった。自国の戦士たちは敵を引きつけている少女諸共攻撃を仕掛けるのだ。広範囲攻撃魔法で少女ごと狙うこともある。その度に少女は防壁魔法を使って避けているが完全に回避する事は不可能であり、着々と傷が増えている。
「うぁ…はぁ、はぁ。」
立っているのもやっとの状態の少女の名はリーナ。レイピアを杖代わりにして立ち上がり、周りを見渡す。
「これじゃあ、どっちが味方で敵か分からないじゃない。」
リーナを取り囲むようにして攻撃を準備しているのは、自国と敵国両方の戦士たちである。
「いいわよ…どっちも相手してあげようじゃないの!!」
リーナは痛む身体に鞭を打ち、眼を据えると雄叫びを上げて動き出す。
「アァァアア"ッ!!!」
【フレイムトルネード】
リーナは魔法を展開した。それは1つだけでなくいくつも発生させた。戦地の各地で炎の竜巻が現れ、敵味方関係なく命を奪っていく。リーナの近くにいた戦士が剣でリーナを斬った。
「ーーッ!グハッ…ま、まだよ。私はまだ生きてるッ!!」
斬りつけてきた戦士を投げ払いトドメを刺す。
「はぁはぁ…ウグッ!嫌だ、死にたくない。生きたい。また私は生きてあの場所にッ!」
グサグサっ
「ぁ…」
リーナは地中から突き出てきた土槍で串刺しにされた。
魔力も空になり、傷だらけの身体では避けることは出来なかった。
「ははっ…やっぱり帰れそぅに…なぃや…」
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