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本編
【閑話】???年前のお話
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〈感じる…来るぞ。ついに、この時が来た。準備はよいな?〉
〈うん。あぁ、すごく緊張する。早く会いたくて堪らないよ。〉
2匹のフェンリルは今か今かと待ち構えていた。
〈今、遺跡へと入ってきたようだ。〉
〈ダンジョンの扉が開かれるのも時間の問題だね。アティス様の話だと石碑があるんだよね。〉
〈その石碑が鍵となっていて、あの子にしか開けられないらしい。この地に来てから何度かあの子に呼びかけておるのだが…やはりあの子からの反応は返ってはこないようだ。一方的に声をかけている状態の我は、オバケか何かと思われてないだろうか?〉
〈父さんがオバケ…1つだけ言えるとしたら、誰も話してないのに何故か聞こえる声ってのはかなり不気味で怖いはずだよ。〉
事実、2匹の見えぬ所で彼らの待ち人である人物は怖がっていた。それを2匹は知らない。
そして、、、
〈〈ーーっ!!〉〉
2匹は確かに感じとった。ダンジョンへの扉が今開かれたことを。それは彼らが長年待ち望んでいた事で、止まっていた時間が動き出したかのようだ。
ドキドキ…
2匹は一言も喋る事なくただ一点のみを見つめていた。そこから現れるだろう相手を早く目に映したいというかのように。
突如、2匹が見つめていた先が光り出した。
〈〈……!!〉〉
そこから現れたのはまだ幼い女の子だった。
〈待っていた。おかえり。契約者よ。〉
〈おかえり!また会いたかったよ!〉
嬉しさのあまり目に涙を少し浮かべていた2匹だったが女の子の次の言葉に涙は綺麗さっぱり引っ込んだ。
「わんちゃん??」
〈〈犬じゃないっ!!〉〉
念願の再会であり感動的なシーンになるはずの空気は一瞬で消し飛んだ。
バルフは女の子が相変わらず自分たちをわんちゃんと呼ぶのを懐かしいと思いつつホッとした。それも次の女の子の言葉で飛ぶのだが…
「新獣フェンリル」
そう、女の子は神獣フェンリルと紹介したのに何をどう誤解したのか新獣フェンリルと言ったのだ。新種のフェンリルという生き物だと。流石に我慢ならずあの子の名前でついつい話してしまった。小フェンリルも同じくその名を口にしてしまっていた。女の子は不思議そうに誰の名前なのか聞いてくる。言葉に詰まった2匹。バルフは場所を移動しようと女の子に付いてくるように促した。
〈契約者よ、やはり覚えていないか我らの事を。〉
バルフは覚えていないだろうと思いつつも聞かずにはいられなかった。結果は予想通り。今の女の子に我らの思い出は残っていなかった。それどころか人違いではないかと尋ねてくる。それだけはありえない。あの子でなければ此処には来れないのだから。なによりバルフには感じるのだ。目の前の女の子と確かに魂の繋がりがあることを。再会したことで仮契約状態の歪な繋がりが、かなりしっかりとした繋がりへと変化したのだ。決して本来の確固たる繋がりではないが。なぜなら、バルフとリーナで結んだ従魔契約の為、バルフと女の子との真なる従魔契約ではないからだ。
バルフは女の子を愛しげに見つめる。
バルフは自身がもう長くないこと、女の子と共に在り続ける為に1つになりたいことを伝えた。女の子は悲しみの表情を浮かべ今にも涙が溢れそうだ。
あぁ、あの子と違って今のそなたは年相応に涙を流せるのだな。
バルフはその事が嬉しかった。オリビアやリーナはいつも我慢して泣くことを躊躇っていた。弱さを見せないように必死で隠していた。その変化に喜ばないわけがない。
我は最期のお願いだからと絶対に断れないようにずるい言い方をした。優しいそなたならきっと受け入れてくれるはずだから。女の子は涙を溢れさせながらも受け入れてくれた。
大丈夫、そなたは1人ではない。我が子がそなたの傍にいる。我もそなたの中で傍に在り続ける。決意が揺らがない内に行動に移さねば。別れが惜しくなる。そなたが運命から解き放たれることを切に祈る。最後に、これだけは伝えなくては…
〈我は…我はそなたと出会い終わりを迎える事が出来て幸せだ〉
我はそなたから幸せしか貰っていない。不幸などなかった。だから自分を恨む必要もないし、我を哀れむこともない。そなたと出会えた事が我の誇りだ。満足気に笑う。
「…待っていてくれてありがとう…大好きだよバルフ。」
女の子から呟かれた言葉に、、、我の名前に目を見開く。
やはり、あの子なのだな。姿が変わろうとそなたはそなたのままだ。最期の最期まで我を幸せにしてくれるのだな。
ありがとう
バルフは光の粒へと変わり、女の子の魂と1つになった。
〈うん。あぁ、すごく緊張する。早く会いたくて堪らないよ。〉
2匹のフェンリルは今か今かと待ち構えていた。
〈今、遺跡へと入ってきたようだ。〉
〈ダンジョンの扉が開かれるのも時間の問題だね。アティス様の話だと石碑があるんだよね。〉
〈その石碑が鍵となっていて、あの子にしか開けられないらしい。この地に来てから何度かあの子に呼びかけておるのだが…やはりあの子からの反応は返ってはこないようだ。一方的に声をかけている状態の我は、オバケか何かと思われてないだろうか?〉
〈父さんがオバケ…1つだけ言えるとしたら、誰も話してないのに何故か聞こえる声ってのはかなり不気味で怖いはずだよ。〉
事実、2匹の見えぬ所で彼らの待ち人である人物は怖がっていた。それを2匹は知らない。
そして、、、
〈〈ーーっ!!〉〉
2匹は確かに感じとった。ダンジョンへの扉が今開かれたことを。それは彼らが長年待ち望んでいた事で、止まっていた時間が動き出したかのようだ。
ドキドキ…
2匹は一言も喋る事なくただ一点のみを見つめていた。そこから現れるだろう相手を早く目に映したいというかのように。
突如、2匹が見つめていた先が光り出した。
〈〈……!!〉〉
そこから現れたのはまだ幼い女の子だった。
〈待っていた。おかえり。契約者よ。〉
〈おかえり!また会いたかったよ!〉
嬉しさのあまり目に涙を少し浮かべていた2匹だったが女の子の次の言葉に涙は綺麗さっぱり引っ込んだ。
「わんちゃん??」
〈〈犬じゃないっ!!〉〉
念願の再会であり感動的なシーンになるはずの空気は一瞬で消し飛んだ。
バルフは女の子が相変わらず自分たちをわんちゃんと呼ぶのを懐かしいと思いつつホッとした。それも次の女の子の言葉で飛ぶのだが…
「新獣フェンリル」
そう、女の子は神獣フェンリルと紹介したのに何をどう誤解したのか新獣フェンリルと言ったのだ。新種のフェンリルという生き物だと。流石に我慢ならずあの子の名前でついつい話してしまった。小フェンリルも同じくその名を口にしてしまっていた。女の子は不思議そうに誰の名前なのか聞いてくる。言葉に詰まった2匹。バルフは場所を移動しようと女の子に付いてくるように促した。
〈契約者よ、やはり覚えていないか我らの事を。〉
バルフは覚えていないだろうと思いつつも聞かずにはいられなかった。結果は予想通り。今の女の子に我らの思い出は残っていなかった。それどころか人違いではないかと尋ねてくる。それだけはありえない。あの子でなければ此処には来れないのだから。なによりバルフには感じるのだ。目の前の女の子と確かに魂の繋がりがあることを。再会したことで仮契約状態の歪な繋がりが、かなりしっかりとした繋がりへと変化したのだ。決して本来の確固たる繋がりではないが。なぜなら、バルフとリーナで結んだ従魔契約の為、バルフと女の子との真なる従魔契約ではないからだ。
バルフは女の子を愛しげに見つめる。
バルフは自身がもう長くないこと、女の子と共に在り続ける為に1つになりたいことを伝えた。女の子は悲しみの表情を浮かべ今にも涙が溢れそうだ。
あぁ、あの子と違って今のそなたは年相応に涙を流せるのだな。
バルフはその事が嬉しかった。オリビアやリーナはいつも我慢して泣くことを躊躇っていた。弱さを見せないように必死で隠していた。その変化に喜ばないわけがない。
我は最期のお願いだからと絶対に断れないようにずるい言い方をした。優しいそなたならきっと受け入れてくれるはずだから。女の子は涙を溢れさせながらも受け入れてくれた。
大丈夫、そなたは1人ではない。我が子がそなたの傍にいる。我もそなたの中で傍に在り続ける。決意が揺らがない内に行動に移さねば。別れが惜しくなる。そなたが運命から解き放たれることを切に祈る。最後に、これだけは伝えなくては…
〈我は…我はそなたと出会い終わりを迎える事が出来て幸せだ〉
我はそなたから幸せしか貰っていない。不幸などなかった。だから自分を恨む必要もないし、我を哀れむこともない。そなたと出会えた事が我の誇りだ。満足気に笑う。
「…待っていてくれてありがとう…大好きだよバルフ。」
女の子から呟かれた言葉に、、、我の名前に目を見開く。
やはり、あの子なのだな。姿が変わろうとそなたはそなたのままだ。最期の最期まで我を幸せにしてくれるのだな。
ありがとう
バルフは光の粒へと変わり、女の子の魂と1つになった。
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