転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

キャワルンズ

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 エリック隊長たちの影はすでに見えなくなった。残ったのは、私とスノウ。それからキャワルンズの3人。なに、この空気。


「えっと、お姉さんたち宿までよろしくお願いします?」


 私がそう言うと、あからさまに嫌そうな顔をする3人組。

〈なんなのこの女の人たち。エリックたちには媚びっ媚びだったのに居なくなった途端に態度に出し過ぎでしょ。〉


 スノウが唸り声をあげる。


「やだぁ。なんて躾のなってない獣なの~」
「こっちに近寄らないでよねぇ」
「きたな~い」


 な、なんなの!?


「スノウはすごく賢いんだよ!カッコカワイイはスノウの為にあるんだから!それに、スノウは汚くないもん。ちゃんとキレイにしてるもん。」


 スノウが感動したとでも言うかのように擦り寄ってくる。


「はぁー。子守とかめんどくさくない?」
「ペットの世話付きだしねぇ」
「男はみーんな騒ぎの方へ行っちゃったし」


 猫かぶりの達人!このお姉さん方は猫かぶりの達人だよ!!


「ねぇ、宿の名前は何?」


 やっと送ってくれる気になったのか。


「フラーレンの宿ってところです。」


「へぇ。結構、良いところの宿に泊まってるのねぇ。フラーレンの宿はここから真っ直ぐ行って、右に曲がって、そのあとまた曲がればいつか着くわよ。」


「え、はい?」


 ま、まさかだよね⁉︎


「だから宿の場所よ。教えたんだから1人で帰れるでしょう?」


 い、今の教えた事になるの!?


「どこまで真っ直ぐに行って、いつ右に曲がればいいんですか?それからまた曲がるって右か左か、いくつ目の角かを説明してくれないと分かりませんっ!!」


「頭悪すぎなんじゃない?めんどくさ~い。分からないなら、そこら辺の人にでも聞きなさいよ。近くの人に聞きながら帰ればいいじゃないの。」


〈お前らの方が絶対に頭悪いからな!!ティア、こいつら消してもいいよね?〉


 スノウ、それは視界から外すって意味とは違うよね。スノウのは存在を消すを指してない!?物騒な事をしないでね!?


「あっ、ちゃんと私たちが送り届けた事にしときなさいよ。いいわね?もし、告げ口でもしたら許さないから。」
「それじゃあ、頑張ってねぇ。」
「あの酒場に行きましょうよ!あそこの男は最高なのよね~」


 キャワルンズの3人はきゃっきゃ言いながら本当に去って行った。ぽつんと放置された私とスノウ。私は呆気にとられ、スノウはずっとキャワルンズが去って行った方を睨み続けていた。





 呆気に取られていた私だがハッと我にかえり、スノウを見つめる。


「スノウ、一緒に宿に帰ろうか。」


〈グルル…あの女たち絶対許さない…〉


「おーいスノウ?牙っ!牙出しちゃダメだから!!落ち着いて~」


 スノウはお怒りのようだ。ヨシヨシと撫でていると落ち着いてきたのかシュンとなって私の様子を伺う。


〈ティア…〉


 心配そうに私を見つめるスノウ。ちょんちょんと前脚を乗せてて可愛い。


「びっくりしたね。キャワルンズの人たち、なんか凄かったね。特に性格の面が。裏表はっきりしてて衝撃だったな。スノウの事を悪く言ったのは許せないけど!」


〈あいつら自分からティアを宿に送り届けるって言ったのに!自分たちの言葉に責任持ってないよ。僕らを置き去りにしたんだよ!〉


 たしかに。テルボーさんはこうなる事を見越してギルド依頼同等だって言ったのかもしれない。ギルド依頼同等なんだからしっかり役目は果たすだろうと思ったんだろうね。よほどの馬鹿じゃない限りギルマスの言葉を無視するような事はないし。なんなら罰則とかあるんじゃない?なによりスノウが私の知らぬ所で報復してそうだ。


「まぁ、悪い事ばかりじゃないよ。だって、おかげで宿までスノウと2人っきりだよ。ね?スノウとの時間を誰にも邪魔させないと思えば良い事でしょ?」


〈それは…うん確かに良い事だ。ティアと僕だけの時間。ふ、ふん!あの女たちにそこだけは感謝してあげなくもないね。〉


 尻尾がパタパタ揺れている。


「せっかくだから、ゆっくり帰ろうね!」


〈僕が付いてる限り、ティアには傷一つ付けさせないから安心してね!ヘヘッ、ティアとデートだぁ♪〉


 キャンキャキャーン♪と飛び跳ねるスノウはすっかりご機嫌だ。キャワルンズの存在はもう忘れたのではないだろうか。


 私とスノウは宿へ向けて歩き出した。




 




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