転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢

「あと少しだ!奴らは袋の鼠!1匹残らず捕縛しろ!生きてりゃ問題はない。喋る口さえ残っていりゃあ、好きに弄べ!」


「「「了解っ!!」」」


 夜の闇に紛れ、追う者と追われる者たちが衝突していた。追う者はラザージャ王国の精鋭達である。彼らはラザージャで悪事を働く組織の尻尾を掴み、鎮圧狩りを行っていた。そして、追われている者たち、つまりは悪事を働いている組織は尻尾を掴まれ撤収しているところだ。既に数名は捕らえている。だが奴らは下っ端。有力な情報を得るには下っ端を束ねるリーダー格が必要だ。


 ラザージャの者たちが船場まで下っ端共を追いかけると、そこには探していたリーダー格らしき男が立っていた。


「いらっしゃい、間抜けな間抜けなラザージャの者たち。僕らを見つけるのが少々遅すぎるんじゃないかい?」


「ヤヤ様!こいつら中々強いです!ヤヤ様、やっつけてやって下さ……」


「煩いな。虎の意を狩るなんたらみたいに喚かないでくれないかなぁ?誰に命令してるわけ?つか、いつお前に僕の名前を呼ぶ権限与えたかなぁ?勝手にバラしてんじゃねぇよ。」


「す、すみま…ぐぎゃあァアア!!」


 ヤヤ様と呼ばれた男は、自身の名を呼んだ者に容赦なく剣を振るった。


「お、おれの右腕がッ!!!」


 ボトリと地面に落ちた右腕に半狂乱に陥る男。


「チッ、余計にうるさくなったな。これ以上、口を開くなら次は左腕を落とすよ?邪魔だから早くどいてくれる?」


 ヤヤという男は殺気を散らし、右腕を失い半狂乱に陥っていた男を一瞥する。


「ヒッィ‼︎わ、わがりまじだァ!!ずみまへん!!!」


「汚いなぁ。まともな言葉くらい使って欲しいものだね。」


 右腕を失くした男は仲間に支えられつつ、船へと乗り込んで行った。



「はははっ、お待たせして申し訳なかったね。改めて自己紹介でもしようか。僕の名前はヤヤ。ボスの忠実なしもべだよ。」


「つまり、お前さんがこの組織のトップ2ってわけか?」


 ラザージャの精鋭部隊の隊長を務めていたゴリラの獣人の男がヤヤに聞いた。


「ん~まぁ、そうなるのかな。ボスには勝てないけど、それ以外の奴なら余裕だしね~さっきの使えない奴みたいに笑笑」


「クズだな。仲間じゃないのか?」


「仲間ぁ?ははは!僕を含め彼らはみんなボスの駒だよ?」


 何か可笑しな事言ったかな?と首を傾げるヤヤにラザージャの者たちは顔を顰める。


「あんたには、手加減する必要はなさそうだ。」


「へぇ。僕に手加減してくれるつもりだったの?まぁ、そもそも僕相手に手加減なんて出来る余裕ないと思うけど。」


「言ってくれるじゃないか。これでもラザージャの一部隊の隊長を任されているんだ。舐められちゃ困る、なぁあ!!」


 ヤヤへと拳を振り上げ攻撃するラザージャの部隊長。


「おっと、危ないなぁ。話の途中で攻撃するなんて酷いじゃないか。」


「先手必勝って言葉を知らないのか?野生の掟には"よーいどん"なんてないんだよ!!」


「なるほど、たしかにそうだ。勉強になるよ。」


 と言って軽々攻撃を避け続けるヤヤ。


「チッ。すばしっこい奴め。ならコレはどうだ!」


ドゴン!!


「……ッ!!ウグッ!!」


「ははっ!澄ました顔が台無しだぞ?」


 ヤヤへと直接攻撃と見せかけ、地面を叩いたラザージャの部隊長。ゴリラ獣人ということもあり、腕力は凄い。さらに魔力を乗せたことで自身を中心に地面に振動が伝わり、ヤヤはバランスを崩した。そこを見逃す事はなく、すかさず腹目掛けてヤヤに一撃を喰らわした。


「ケホッ…へぇ、やるじゃん。あーあ、これ肋骨何本かダメになってるよ。久しぶりに痛みを味わったよ。いや~怖いなぁ?」


「むしろ、俺の今の一撃喰らってヘラヘラ笑っていられているお前が怖ぇわ。」


「僕に一撃を与えたんだ、ラザージャの部隊長さん、名前を教えてくれよ。僕は強者の名前は覚えておくタイプなんだ。」


「へぇ。強者だと認めてくれるのか。そりゃ、有難いね。俺の名前はムバードだ。しっかりその頭に刻んでおけよ。」


「ムバードか。じゃあ、改めて第二ラウンドと行こうか。」


 ニヤリと不気味な笑みを浮かべたヤヤはムバードへ迫った。一瞬でムバードの懐にまで接近したヤヤに目を見開き、咄嗟に防御の姿勢を取り、受け身をとった。


「今の反応できるんだ。やるねぇ~。」


 さも嬉しそうに再びムバードに迫るヤヤ。





 2人の闘いは白熱し、互いに決定的一撃を与えられず時間だけが過ぎていく。周りではヤヤの仲間とムバードの部隊の者たちが戦っている。そちらはラザージャの者たちが優勢らしく拘束されている者が多い。だが、船に乗っているヤヤ側の者たちは厄介で近づけていない。ヤヤとムバードが闘っていて船に近づけない事と船から魔石を用いて攻撃してくるのだ。




「ムバード、どうやら陸地ではこちら側が劣勢みたいだけど、船だけには近づけさせないよ?」


「みたいだな。船にあんなに魔石を積んでやがったとは思っていなかったよ。一体どこから大量の魔石を手に入れたんだ?船には何がある?何を守ってやがる?」


 言葉を交わしつつも攻撃の手を止めることはしない両者。


「魔石の出どころはねぇ、僕も知らないんだよね~。ボスがどっかから仕入れているらしいけど、教えてくれないんだ。船にはね、ラザージャで捕まえた珍しい生き物とか獣人の子供が乗ってるよ。まぁ、それは別に守ってるわけじゃないけどね。だって、餌か素材になるのがほとんどだし。本当に守ってるのは実験で成功したボスに献上するNo.94なわけ。」


「なおさら、逃がすわけにはいかない状況になったな。」


「そうだよね?逃したくなくなったよね?僕も、もっとムバードとは戦いたくて堪らないよ。だけど……どうやら時間切れのようだ。本当に残念だ。」


 ヤヤはとても残念そうに言うとムバードから距離をとり、船へと乗り移った。


「ムバード、楽しかったよ。最後にとっておきをプレゼントをしてあげる。」


 ヤヤは懐から掌サイズの瓶を取り出し、中から何かを出した。それは黒い靄がかかっており、本体が何なのか確認出来ない。黒魔石とはまた別のオーラであることは確かだ。ムバードは本能的に危険を察知した。


「全員、退避せよ!!今すぐ船から距離を取れッ!!」


「じゃあね、ムバード。」


 次の瞬間、ヤヤの持っていた黒い何かがムバード達に向けて音を出した。否、鳴いた。









 



 ビスを含めた応援部隊が到着した時、ムバードの隊はほぼ壊滅状態だった。


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢







 


 
















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