転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

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「俺たちが掴んでいる情報は、このパッチーナを拠点として活動を始めた組織がかなり頭がイカれた奴らって事だな。俺たちも先日パッチーナに来たばかりで詳しくはテルボーさんから聞いた範囲にはなるがな。最近、港を利用する船から積荷が盗まれるという事が起きている。それから人攫いもだ。なかには死者も出ている。そこでパッチーナの領主と冒険者ギルド、商業ギルドらは連携をとり、捜査をしていた。そこで今日の爆発だ。アジトとしていた工場を特定してな、冒険者と商業ギルドの一部と、領主のみが主導で作戦を練っていたんだとよ。」


「冒険者と商業ギルドの一部と、領主のみでですか?各ギルド全体で動かないので?それから、領主の管轄している兵たちは?何故領主のみで作戦を?」


 ビスの疑問に答えたのはニールだ。


「現領主の方は大変人柄もよく、犯罪に手を染める事はないと私たちも知っているのですが、、、問題は御子息なのです。おそらく長男の方が犯罪組織に加担しているようなのです。さらには両ギルド内においても加担している者がいるのです。誰が裏切り、悪事に手を染めているのかがはっきりとしていない現状、本当に信用できる方たちだけで動いてるわけです。……まぁ、そのはずでした。どうやらその信用していた人の中にも裏切り者は紛れていたようでアジトにしている工場の場所を掴んだことを知られたのです。そして摘発する作戦が漏れていました。これにより証拠隠滅を図ったのか工場に時限爆発の魔法陣が組み込まれていました。一部は先行した冒険者ギルド職員が解除したのですが…」


 ニールはティアとパッチーナ巡りをしていた時の爆発を思い出す。


「被害は最小限には抑える事は出来たようなのですが、突如現れた者たち…ビスさんのお仲間さんですね。彼らはギルド職員たちが保護しようとしていた獣人の子たちを見て、敵だと思われたのか、頭に血が上って見境なく摘発に動いていた者たちにも攻撃をしてしまって…おかげでこちらも敵だと勘違いし、余計な負傷者もでていましたし、私たちが到着した時には犯罪組織の半数は逃げたあとですし、本当良い迷惑でした。」


「ニールさん、辛辣…」


 エリックはニールの言葉に苦笑する。


「事実でしょう?私はティアさんとの時間を潰されたのですよ?貴重な休暇を潰されて、仕事を増やされただけです。」


「いや、その、すみません。もしかしてなんですけど、最初にご迷惑かけて攻撃した奴って狼獣人じゃなかったですか?」


「ええ。片耳が無かった狼獣人でしたね。人族に強い恨みでもあるかのような方でしたね。アレは、憎しみとも言っていいかもしれませんね。」


「あぁ、やっぱり…ウォンがご迷惑をおかけしました。あいつにも色々事情があって。だからと言って善人を攻撃していい理由にはなりません。はぁ…だからラザージャで待機しろって言ったのに。」


 なんだかんだビスが苦労してそうな雰囲気にニールもこれ以上ビスを責める事はしない。


「ビス殿もそんな責任を感じなくていい。そのウォンとやらが最初に攻撃したやつは元冒険者で、悪いやつじゃないが顔は悪人面だからな。保護していた獣人の子らも泣いていたし勘違いしたのも分かる。俺もよく子供に泣かれるし…」


「バン、それ自分で言ってて哀しくないか?」


 エリックの言葉に、しょぼんとするバンに元気を出すようにデュースが背中を叩いている。


「だからと言って許されることではありません。ウォンにはまだ早いと、訓練するように言っていたのです。今回の先発隊には入れないと決定していたはずなのです。なのにウォンはその命令を押し切って参加しました。絶対に勝手な行動をするな、必ず状況確認しろという約束のもとでです。故に今回の件は国に持ち帰り、しかと処罰します。」


「そうしてくれ。そちらとてこの件を騒ぎにはしたくないだろう。国お抱えの部隊だったんなら下手すりゃ、国家間の問題にもなりかねんしな。幸いにもそのウォンって奴が暴れただけで他の獣人はそいつを止めてたしな、敵とみなし攻撃を始めたこちらに他の獣人たちは手を出す事はしなかった。上手く躱したりとしていた事もあり敵対意思の有無が他の者にはないと気づき多少の負傷で済んでいる。ウォンとやらにやられた奴ら以外はだがな(笑)」


「エリックさん、笑い事ではありませんよ?結果として、敵には無駄に逃げられたのですから。」


 ニールの刺すような視線に黙るエリック。


「とにかくですね、あの場にいた獣人の子達は無事保護していますし、獣人国から密猟した生き物たちも預かっています。」


「でだな…領主の長男はやって来て、ここにいるのは全員自分の所有物だって言い張ってだな。アレはただの馬鹿だな。そんなわけないのに堂々と関与してますって主張しやがってよ。とりあえず泳がせている。上手くいけば本拠点が見つかるかもしれねぇしな。心配事といえばビスがさっき言っていた犯罪組織が使う魔道具ってとこだな。さっきの話を詳しく説明頼む。」


「はい。」


 ビスはラザージャでの事を話し出した。

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