【完結】深く青く消えゆく

ここ

文字の大きさ
3 / 7

3.ミッシェルの父は

しおりを挟む
ミッシェルの父アレスは夢を見ていた。その夢とは、愛しい妻との息子に騎士になって活躍してもらうことだった。
だが、妻はミッシェルを産むときに亡くなり、残されたミッシェルは女の子だった。アレスは最初はあきらめようと思った。妻の忘形見である娘と、細々と生きていけばよいと。
だが、成長するにつれ、ミッシェルには魔法の才能があることがわかった。
アレスはミッシェルを鍛えてみようと思った。才能がなければ、やめればいい。

「まだまだだ」
黙々と訓練に取り組むミッシェルには才能があった。非力なのはなかなか厳しいのだが、身体強化魔法でカバーすることができた。ミッシェルの魔力はかなり強い。魔力だけなら、魔法騎士長に引けをとらないほどだ。ミッシェルは魔法騎士を目指して、日々鍛錬を続けている。

アレスは家の存続、つまりはミッシェルの結婚については、何も考えていなかった。
ミッシェルが本当は女であることを隠したことは一度もない。特に騎士は男でなければならないという決まりはなかった。だから、もし今のミッシェルと結婚したい男がいても、頭から反対する気はなかった。ただ、気持ちも腕っぷしも強い男でなければ許す気はない。今のところ、ミッシェルは現状に前向きに見えた。父に鍛えられることも嫌そうには見えなかった。

いつかもっと大人になって、騎士は嫌で普通の女性として暮らしたいと言われれば、受け入れるつもりではある。
「才能がなければ、あきらめたのだが」
アレスは自分のやっていることを悪いことだとは思わない。だが、ミッシェルをちゃんとした女の子らしい女の子に育てなかったことを妻は怒っているかもしれないとは時々思った。

ミッシェルとよく一緒にいるレオのことはよく知っている。まさか、ミッシェルの性別を知らないとは思わなかった。二人はとても仲がいい。アレスにだってわかるほどに。あるいはレオが、求婚してきたならば、事態はかなり変わるだろう。ミッシェルにぴったりの相手だとアレスは思う。ただ、その場合、ミッシェルは騎士を目指すのをやめてしまうだろうか。

アレスはミッシェルの幸せを望んでいたが、それが騎士になること込みだといいと思っている。自分勝手で嫌になるが、ミッシェルを騎士にしたい。それはどうしてかわからないほどの執着があった。ミッシェルだって嫌がっていないのだから。いつか立派な騎士になって、こう言ってくれる。
「今の自分になれたのは父さんのおかげだ」
それがアレスの夢なのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おにょれ王子め!

こもろう
恋愛
レティジアは公爵令嬢で、王子フリードの婚約者。しかし現在、フリードとの関係はこじれまくっている。 見た目は気が強そうだが実は泣き虫なレティジアは人知れず毎日涙を流し、フリードはなんだかイライラしている。 そんな二人の前に現れるのは……!

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様

さくたろう
恋愛
 役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。  ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。  恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。 ※小説家になろう様にも掲載しています いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

僕の婚約者は今日も麗しい

蒼あかり
恋愛
公爵家嫡男のクラウスは王命により、隣国の王女と婚約を結ぶことになった。王家の血を引く者として、政略結婚も厭わないと覚悟を決めていたのに、それなのに。まさか相手が子供だとは......。 婚約相手の王女ローザもまた、国の安定のためにその身を使う事を使命としていたが、早い婚約に戸惑っていた。 そんなふたりが色々あって、少しづつ関係を深めていく。そんなお話。 変わり者の作者が、頑張ってハッピーエンドを目指します。 たぶん。きっと。幸せにしたい、です。 ※予想外に多くの皆様に読んでいただき、驚いております。 心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。 ご覧いただいた皆様に幸せの光が降り注ぎますように。 ありがとうございました。

疑惑のタッセル

翠月 瑠々奈
恋愛
今、未婚の貴族の令嬢・令息の中で、王国の騎士たちにタッセルを渡すことが流行っていた。 目当ての相手に渡すタッセル。「房飾り」とも呼ばれ、糸や紐を束ねて作られた装飾品。様々な色やデザインで形作られている。 それは、騎士団炎の隊の隊長であるフリージアの剣にもついていた。 でもそれは──?

俺の婚約者は悪役令嬢を辞めたかもしれない

ちくわ食べます
恋愛
王子である俺の婚約者は、打算的で、冷徹で、計算高い女だった。彼女は俗に言う悪役令嬢だ。言っておくけど、べつに好きで婚約したわけじゃない。伯爵令嬢だった彼女は、いつの間にか俺の婚約者になっていたのだ。 正直言って、俺は彼女が怖い。彼女と婚約破棄できないか策を巡らせているくらいだ。なのに、突然彼女は豹変した。一体、彼女に何があったのか? 俺はこっそり彼女を観察することにした

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

【完結】地味令嬢の願いが叶う刻

白雨 音
恋愛
男爵令嬢クラリスは、地味で平凡な娘だ。 幼い頃より、両親から溺愛される、美しい姉ディオールと後継ぎである弟フィリップを羨ましく思っていた。 家族から愛されたい、認められたいと努めるも、都合良く使われるだけで、 いつしか、「家を出て愛する人と家庭を持ちたい」と願うようになっていた。 ある夜、伯爵家のパーティに出席する事が認められたが、意地悪な姉に笑い者にされてしまう。 庭でパーティが終わるのを待つクラリスに、思い掛けず、素敵な出会いがあった。 レオナール=ヴェルレーヌ伯爵子息___一目で恋に落ちるも、分不相応と諦めるしか無かった。 だが、一月後、驚く事に彼の方からクラリスに縁談の打診が来た。 喜ぶクラリスだったが、姉は「自分の方が相応しい」と言い出して…  異世界恋愛:短編(全16話) ※魔法要素無し。  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆ 

処理中です...