レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第四章 世界中が敵

第212話 戦争

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「…すまん。」


エスに到着すると、何やら緊迫した雰囲気が漂っていた。

嫌な予感を感じながら、王の元へ向かったロックたち。

そこにはハンナパーティもいた。

ロックたちを迎えた王の第一声は、謝罪だった。


「…何があったんですか?」

「…サンジャータとの交渉に失敗してしまった。
 あっという間に臨戦状態となり、サンジャータが進軍を始めてしまった。」

「僕たちがサンジャータで活動できるように交渉してもらったことで戦争に!?」

自分たちのせいで国間の戦争が今にも起きそうだという事実に、動揺するロックたち。

「ロックたちのせいではないよ。」

ハンナがそれを察して説明を補う。

「もともとサンジャータはこの国を狙っていたんだ。
 今の国王になってからね。
 いくらなんでもロックたちの件で戦争にまで発展するなんて、どう考えたってありえない。」

「力を合わせて魔王と戦っているこの状況で?
 そこまでしたい理由はなんなのかしら?」

「この大陸の2国間の関係は昔からいろいろとあってね。
 サンジャータが先代国王の時には友好関係を築けていたんだけど、当時側近だった現国王はずっとエスを支配するべきだと言い続けていたんだよ。
 現国王は力に溺れているところがあってね…。
 自分より弱い者が対等の立場でいることが耐えられないらしい。」

「そんな人を国王に…?」

「サンジャータには「強い者が国王になる」という決まりがあってね。
 強い者には国王になるための教育が施されるし、優秀なブレーンもつく。
 ただ、現国王の時は特別でね。
 元国王がボスモンスターに挑んで死んでしまった。」

「それは聞きました。
 でもなんで国王自らそんな無茶を…。」

「その詳しい経緯は知られてない。
 わかっていることは、国王候補を選ぶ前に国王が死んでしまって、現国王も候補に入ってしまい、そして国王になってしまったということだ。」

「で、でも、国王になってからも今までは攻めてこなかったんだよね!?」

「他の実力者たちが猛反対したからね。
 それでも、度々無茶な要求を突きつけてきた。
 サンジャータと争うわけにもいかず、理不尽な要求にも応えてきたのが現状だよ。
 事実上、属国に近いような扱いをされてるんだ…。」

「それで支配欲がある程度満たされていたわけか…。
 だが、今回の件でいよいよ攻め込ませるきっかけを与えてしまったと…。」

「じゃあやっぱり僕たちのせいで…。
 向こうの要求はなんなんですか?!
 僕たちが関係する要求なら、受け入れて戦争を回避することは…!?」

「…向こうの要求は、お主たちを引き渡すことじゃ…。」

「もしかして断ったんですか!?」

「無論じゃ。
 この国に貢献してくれたこともあるし、この世界にはお主たちが必要じゃ。
 そして…、要求はそれだけではない。」

「…なんですか…?」

「エスがサンジャータの完全な属国になることじゃ。」

「…!
 そんな理不尽な!?」

「向こうがそれだけの要求をしてきた理由はいくつかある。
 まず、国際的な犯罪者となっているお主たちを匿って、その上国王謁見の交渉をしたこと。
 次に、ボスモンスターを勝手に倒したこと。
 そして、お主たちの援助を得てS級冒険者を2人も増やしたことじゃ。」

「…おかしくないか?
 俺たちの件は怒る理由にはなる。
 だが、ボスモンスターを倒したり戦力を強くすることは自由だろう?」

「そうなんだけどね。
 なんでも、自国のボスモンスターを倒すことで魔族の侵攻を防ぎ、さらに戦力を増強したのは、サンジャータを攻めるためだと言っているらしい。
 なりふり構わず犯罪者の力を借りたことがその証拠なんだと。」

「そんな…。」

「それと、他国の助力が貰えるというのが戦争に踏み切った一番大きな理由らしい。
 指名手配のロックたちを捕まえるために、他の国も協力を拒否できないだろうと。
 国王は龍化して別の国へS級冒険者を迎えに行っているみたいだ。
 サンジャータの他の実力者も、ロックたちは冤罪だとは知らないから、とめられなかったようだ。」

「…やっぱり僕たちのせいで…。
 ……今、状況はどうなっているんですか?」

「国境付近の砦にサンジャータの戦力が近づいている。
 あと10日後には到着する見込みのようだ。
 その前に、助っ人を連れたサンジャータ国王も到着するだろう。」

現国王になってからエスの国土は減っており、エスの首都は国境にほど近い場所にある。

砦が攻め落とされることは、国が陥落することと同義であるといえる。

「…僕たちがきたばっかりに…すみません…。」

「言っただろう、あの国王はもともとこのチャンスを狙っていたのだと。
 実際この数年で国土も奪われ続けているし、こうなるのは時間の問題だった。
 むしろ、ロックたちのおかげで戦力を大きくあげられた。
 感謝こそすれ、謝罪される理由はない。
 そうですよね?
 国王様。」

「うむ。
 お主たちを信じたのはわし自身の判断じゃ。
 そして、交渉に失敗したのはわしの責任。
 逆に力不足で…すまぬ。」

「そんな!
 …せめて、僕にも手伝わせてください!」

「僕「たち」ね。」

「そうだな。」

「お主たちが加勢してくれれば、これほど心強いことはないが…。
 よいのか?
 国同士の争い…、言うなれば人同士の戦いじゃぞ?」

「…できたら、誰の命も奪わずに争いを終わらせたいです。
 何かいい方法はありませんか?」

「戦争だからな…。
 それは不可能に近いと思うよ。」

「そうじゃな…。
 しかし、エスはもちろんサンジャータだろうと民の血を流すことはできるだけ避けたい。
 一緒に考えてくれるか?」

「「「「はい!!」」」」


こうして魔族やモンスターではなく、「人」との戦いが始まってしまった。
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