レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン

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第四章 世界中が敵

第224話 戦況を変えるスキル

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「ま、まじで!?
 あの人やられちゃったよ!?」

主戦力であるカシミールがやられてしまって、明らかに動揺するヴァンパイアロード。

全体の戦況はというと、【吸魔】でMPを奪われないように分裂体がヴァンパイアロードの影分身を警戒。

だが、敵は魔法をふんだんに使ってくる。

やはり、他のMP回復手段を持っているようだ。

現在は均衡状態であるが、MPが枯渇してくると不利になってくるだろう。


そんな中、突破口はやはり【スキルスナッチ】。

ハンナの【神速】でヴァンパイアロードの【影分身】による撹乱を躱し、敵のスキルを奪う。

味方を強化できるようなスキルでなければ、次に奪ったスキルで上書きしていく。

そうしていくつめかで【全能力50%UP】を奪った。

「ハンナさん、【全能力50%UP】が奪えましたが、いりますか?」

「う~ん。
 【神速】がけっこうMP使うからね。
 やめとくよ。」

「じゃあ…、デイジーさんはどうかな。」

「彼女はMP消費の多いスキルもないし、いいかもしれないね。」

ロックとハンナはデイジーのそばに移動した。


「使わせていただきます。」

デイジーのスキルは、【剣神】【奥義】【先読み】の3つ。

【奥義】は★3で[武技]の威力を常時20%上げるスキルで、MPも必要ないため使い勝手のいいスキルだ。

★4の【全能力50%UP】はMP消費が激しいが、その分強力な力を得ることができる。

[武技]でしかMPを使わないデイジーは、【奥義】と【全能力50%UP】を入れ替えることにした。

S級としては低レベルではあるが、今いるメンバーの中でもアッサールを超え、ファルクに次ぐ攻撃力を誇るほどになった。

ファルク・デイジーが各個撃破し、敵の数を少しずつ減らしていく。

ロックたちが攻勢になってきた。

しかし、MPが枯渇すれば、状況は一気にひっくり返る。


「いるはずだ。
 あのスキルを持つ敵が。」

ロックはあるスキルを持つ敵を探していた。

そして、そのスキルを保持しているだろう敵の目星もついていた。

明らかに周りから守られている敵がいる。

しっかり守られているため、【神速】を使ってもスキルが奪えない。

「ファルクさん!
 デイジーさん!」

ロックがファルクとデイジーを呼ぶ。

「なんだ!?」

「なんでしょう?」

「あそこで守られている敵のスキルを奪いたいんですが、陣形が崩れなくて奪えないんです。
 なんとか、切り込んでもらえませんか?」

その言葉にファルクがニヤリと笑う。

「ちゃんと仲間を頼れるようになってきたな。」

「い、いえ、いつも頼ってますよ。」

「そうかな?
 まあ、答えはもちろんOKだ!」

「任せてください。」

2人はそう言うと、敵の中に突っ込んでいく。

【全能力50%UP】を使いユニークスキルの【剣神】をふるうデイジーは【先読み】で相手の行動を読みながら強力な攻撃を叩き込んでいく。

ファルクはそれ以上の動きで、陣形の中枢まで一気に入り込んでいった。

その際ダメージを受けたが、【再生】がその傷を癒していく。

そして、

「【豪龍化】!!」

フォースドラゴンへと姿を変えた。

【龍化】すると[武技]は使えなくなるが、その分ステータスの力や体力が2倍になる。

体が大きくなることで、単純に攻撃範囲も広範囲となる。

大雑把な攻撃となってしまうので避けられやすくなるが、陣形を崩すには十分であった。


「ナイスです、ファルクさん、デイジーさん!」

一気に陣形が崩れたところで、ハンナの【神速】を使って目的の敵の背後に移動する。

敵が気付いた時には、もうスキルを奪い終わっていた。


「やっぱり!」

ロックが奪ったのは、【神の恩寵】スキル。

範囲内にいる仲間のMPを回復してくれるスキルだ。

魔族とモンスターが侵攻してきた際には本陣に1人はこの使い手がいて、かなりお世話になった。

「ハンナさん、ティナとミラのところへ!」

「あいよ!」


「ティナ、ミラ!」

「ロック!」

「どうしたの!?」

「【神の恩寵】スキルを奪った!
 どちらかに渡したいんだけど…。」

顔を見合わせる2人。

「私がもらうわ。」

そう言ったのはティナだった。

「私の攻撃力じゃステータスを上げても今の戦いじゃ役に立てない。
 それなら…、回復でみんなを支えるわ!」

以前ティナは攻撃手段がないことでずいぶん悩んでいた。

自分が役に立っていないと感じていたのだ。

口には出さなかったが、今もそう思っていたのかもしれない。

ロックはその姿をずっと見ていたため、【神の恩寵】を渡すことを一瞬躊躇った。

だが、迷いのないティナの目を見て、言う通りにすることにした。

「ありがとう、ロック。」

ティナもロックの気持ちがわかったのだろう。

お礼を言って、スキルを受け取った。

そして、【全能力50%UP】と入れ替えた。


「もしかして【神の恩寵】奪われた!?
 も~~、最悪なんだけど!!」
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