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第四章 世界中が敵
第223話 1つの決着
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「デイジー!!」
勝ち目のない戦いを続けようとするデイジーに、ロヴェルの檄が飛ぶ。
「お前の個人的な感情で、仲間を危険に晒すつもりか!
目的を見失うな!
それではハキムと変わらんぞ!」
「…ぐっ…。」
悔しそうに下唇を強く噛むデイジー。
「ロック殿、お願いします!」
ロックは頷くと、分裂体をカシミールへと向かわせる。
デイジーは回復のために一旦退がった。
「デイジー…。
カシミール様も、弟子のお前が意地だけで無駄に死んでいくのを喜びはしないぞ。
カシミール様ならどうするか、それを考えるんだ。」
ロヴェルはデイジーにそう声をかけた。
「…はい。」
誰にも聞こえないような小さな声で返事をするデイジー。
「それじゃあ、あんたの相手は俺がするぜ。」
カシミールの相手をしていた分裂体はすぐに倒されてしまった。
フリーになったカシミールの相手を、ファルクが買って出た。
「ファルク殿、カシミール様は【剣神】スキルに加えて、力と素早さをそれぞれ50%UPするスキルと【急所攻撃】のスキルを持っております!」
ロヴェルがカシミールのスキル情報を伝える。
「わかった!
ありがとよ!」
カシミールは【剣神】という強力なユニークスキルを持ち、さらにスキルの保持数が4という強者であった。
ただ、【剣神】以外のスキルは★3。
今までのS級の基準であれば、それでも相当に強い部類に入ったが、ロックたちと比べるとその差は歴然。
★5の【全能の権化】、★4の【槍聖】【再生】【豪龍化】を持ち、レベルは上限の100、しかも【成長促進】で限界を突破したファルクの相手ではなかった。
唯一のS級魔族を倒されまいと、ヴァンパイアロードを筆頭に敵が助けに来ようとするが、他のメンバーや分裂体によって遮られた。
「元国王さんよ。
記憶は…戻らないのか?」
話しかけるのは最初だけ、そう決めていたが、身動きが取れなくなったカシミールを前に最後の言葉をかけたファルク。
「…ああ。
さっきまでみたいに混乱はしてないがな…。
ハキム…、あいつが後ろから仲間を狙って魔法を放ってきた。
あまりに予想外のことに、陣形が乱れ、なす術もなく倒された。
…それ以外のことは…、思い出せん。」
「あいつ…。
落とし前は、しっかりつけといてやる。
…弟子のことは、思い出せねえのか?」
「…申し訳ないが…、思い出せん。
だが、あの剣筋、間違いなく私の弟子なんだろうな。」
「…そうか。
せめてそのユニークスキル、あんたの弟子に譲ってやってくれねえか?」
「…スキルを?
…ああ、彼のスキルだった…な。
まさかスキルを奪えるとは…。
敗者の私に選ぶ権利などないだろう?
それに私の剣が後世に残ってくれるのは…、嬉しいよ。
剣を受け継いでくれる者にスキルを渡せるなら、ぜひお願いしたい。」
かつて戦ったA級魔族もそうだったが、死ぬ前になると魔王の支配力が弱まるのだろう。
生前の記憶や人格が少し戻っているようだ。
「ロック!
デイジー!」
ロックとデイジーを呼ぶと、ファルクはその場を離れた。
「…カシミール…様…。」
「私の弟子にしては、心が弱いな…。
体や技だけでなく、心を鍛えないと、真に強い者にはなれん。
大事なものを守れんぞ…。」
「…はい…!」
「声が…小さいな…。」
「はいっ!!」
「うむ…。
…私の…スキルを受け取ってくれるか…?」
「カシミール様の…?」
「ああ…。
君…、頼む…。」
カシミールは途切れそうな意識をなんとか保ち、ロックに頼んだ。
「わかりました…。
【スキルスナッチ】。」
カシミールの同意を得たことで、ユニークスキルである【剣神】を奪うことができた。
「【スキルギフト】。」
それをデイジーへ渡す。
「…こんな、こんなことが…。」
「…無事に…渡せたか…。
民を…、民を、頼んだ…。」
「カシミール様!!」
カシミールは息を引き取った。
デイジーは溢れそうになる涙を堪え、立ち上がった。
師匠の最後の教えを守るため。
大事なもの…、カシミールが大事にしていたサンジャータに住む人たちを守るため。
サンジャータを、世界を守るために命をかけている新しい仲間の力になるため。
新たな力を、目の前の敵にぶつけた。
「ま、まじで!?
あの人やられちゃったよ!?」
勝ち目のない戦いを続けようとするデイジーに、ロヴェルの檄が飛ぶ。
「お前の個人的な感情で、仲間を危険に晒すつもりか!
目的を見失うな!
それではハキムと変わらんぞ!」
「…ぐっ…。」
悔しそうに下唇を強く噛むデイジー。
「ロック殿、お願いします!」
ロックは頷くと、分裂体をカシミールへと向かわせる。
デイジーは回復のために一旦退がった。
「デイジー…。
カシミール様も、弟子のお前が意地だけで無駄に死んでいくのを喜びはしないぞ。
カシミール様ならどうするか、それを考えるんだ。」
ロヴェルはデイジーにそう声をかけた。
「…はい。」
誰にも聞こえないような小さな声で返事をするデイジー。
「それじゃあ、あんたの相手は俺がするぜ。」
カシミールの相手をしていた分裂体はすぐに倒されてしまった。
フリーになったカシミールの相手を、ファルクが買って出た。
「ファルク殿、カシミール様は【剣神】スキルに加えて、力と素早さをそれぞれ50%UPするスキルと【急所攻撃】のスキルを持っております!」
ロヴェルがカシミールのスキル情報を伝える。
「わかった!
ありがとよ!」
カシミールは【剣神】という強力なユニークスキルを持ち、さらにスキルの保持数が4という強者であった。
ただ、【剣神】以外のスキルは★3。
今までのS級の基準であれば、それでも相当に強い部類に入ったが、ロックたちと比べるとその差は歴然。
★5の【全能の権化】、★4の【槍聖】【再生】【豪龍化】を持ち、レベルは上限の100、しかも【成長促進】で限界を突破したファルクの相手ではなかった。
唯一のS級魔族を倒されまいと、ヴァンパイアロードを筆頭に敵が助けに来ようとするが、他のメンバーや分裂体によって遮られた。
「元国王さんよ。
記憶は…戻らないのか?」
話しかけるのは最初だけ、そう決めていたが、身動きが取れなくなったカシミールを前に最後の言葉をかけたファルク。
「…ああ。
さっきまでみたいに混乱はしてないがな…。
ハキム…、あいつが後ろから仲間を狙って魔法を放ってきた。
あまりに予想外のことに、陣形が乱れ、なす術もなく倒された。
…それ以外のことは…、思い出せん。」
「あいつ…。
落とし前は、しっかりつけといてやる。
…弟子のことは、思い出せねえのか?」
「…申し訳ないが…、思い出せん。
だが、あの剣筋、間違いなく私の弟子なんだろうな。」
「…そうか。
せめてそのユニークスキル、あんたの弟子に譲ってやってくれねえか?」
「…スキルを?
…ああ、彼のスキルだった…な。
まさかスキルを奪えるとは…。
敗者の私に選ぶ権利などないだろう?
それに私の剣が後世に残ってくれるのは…、嬉しいよ。
剣を受け継いでくれる者にスキルを渡せるなら、ぜひお願いしたい。」
かつて戦ったA級魔族もそうだったが、死ぬ前になると魔王の支配力が弱まるのだろう。
生前の記憶や人格が少し戻っているようだ。
「ロック!
デイジー!」
ロックとデイジーを呼ぶと、ファルクはその場を離れた。
「…カシミール…様…。」
「私の弟子にしては、心が弱いな…。
体や技だけでなく、心を鍛えないと、真に強い者にはなれん。
大事なものを守れんぞ…。」
「…はい…!」
「声が…小さいな…。」
「はいっ!!」
「うむ…。
…私の…スキルを受け取ってくれるか…?」
「カシミール様の…?」
「ああ…。
君…、頼む…。」
カシミールは途切れそうな意識をなんとか保ち、ロックに頼んだ。
「わかりました…。
【スキルスナッチ】。」
カシミールの同意を得たことで、ユニークスキルである【剣神】を奪うことができた。
「【スキルギフト】。」
それをデイジーへ渡す。
「…こんな、こんなことが…。」
「…無事に…渡せたか…。
民を…、民を、頼んだ…。」
「カシミール様!!」
カシミールは息を引き取った。
デイジーは溢れそうになる涙を堪え、立ち上がった。
師匠の最後の教えを守るため。
大事なもの…、カシミールが大事にしていたサンジャータに住む人たちを守るため。
サンジャータを、世界を守るために命をかけている新しい仲間の力になるため。
新たな力を、目の前の敵にぶつけた。
「ま、まじで!?
あの人やられちゃったよ!?」
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