欠片の軌跡⑥〜背徳の旅路

ねぎ(塩ダレ)

文字の大きさ
70 / 137
第九章「海神編」

予想外の裏の顔

しおりを挟む
百戦錬磨の宰相の張り巡らされた想定を遥か彼方の斜め上をぶっ千切った俺の返答は、少しの間この国で最も厳重で厳格な判断頭脳をフリーズさせた。
その間にサクッと家の説明をする。

「……と、言う訳でして。家の補修を頼んだら、知らぬ間に物理的に隠れ要塞並みの強化がされておりました事、そこに偶然、家守りの精霊がついた事により、物理攻撃にも魔力攻撃にも非常に頑強な一般住宅が出来上がってしまった訳なんですよ。」

「ほうほう!確かにせっかく補修するならと!攻撃防御対策を施せと命じてはあったのだが!よもやその様な事になっておるとは!!」

「ありがとうございます。国王陛下。ですがたかだか一般住宅にあれはやり過ぎです。」

「良いではないか!そのお陰でこの計画を、リオに負担をかけずルーイも納得できる形で行う事が出来るのだから!!私もルーイの言う通り国王としてそうせねばならぬ事は理解していたが、リオは私の大切な息子の一人なのだ。代われるものなら代わりたいがそれもできぬと言うのに、側にいてやる事すら許されず、国の為に一人遠くに送る決断がどうしてもできずにいた。偶然が重なったとはいえ、礼を言う、サーク。」

「いえ、元々は国王陛下の計らいから導かれたものでございます。」

自分の務めも理解しているが親として非情な判断ができずにいた王様は、俺の家にライオネル殿下もとい海神を収容するという形に収まった事にとても安心した様子だった。
しかしこの辺で、フリーズが解け頭脳の処理速度が情報量に追いついてきたルードビッヒ宰相が再起動し始めた。
俯き加減で固まっていた顔が、ズモモモモ…ッという効果音がついているんじゃないかという感じで、重々しくゆっくりと王様の方に向けられる。

「国~王~陛~下~~っ!!」

「ヒッ?!ど?!どうした?!ルーイ?!」

「貴方は~!貴方という人はぁ~っ!!」

「ひいぃぃ?!」

「いつの間にその様な無駄遣いを?!」

「いや!サークの家の事は私のポケットマネーから出しておる!!」

「だからと言って!一家臣に国王がその様に湯水の様に金銭を使うなど!!示しがつかぬのがわからぬのですか?!」

「いや!サークは全然予算を使わぬのだ!!邸宅を買ってやると言っているのに!!大きな屋敷を建てる訳でもなく!!中古のこじんまりとした別荘だった建物を買ったのだぞ?!国王である私が個人的に褒美を贈ると言っているのに!それこそ示しがつかぬではないか!!」

「いや、国王陛下。俺、流れで貴族になっちゃいましたけど、基本的には庶民なんで。あの別荘でもかなり贈って頂くのにどぎまぎしたんですって!」

俺と王様のやり取りを見て、ルードビッヒ宰相はちらりとグレイさんを見た。
それに反応したグレイさんは、内ポケットから手帳を取り出すとルードビッヒ宰相に歩み寄り、中を見せている。

何だろう??
ここ、ちょっと阿吽の呼吸めいたものがある。

王様お花畑守り隊の狛犬コンビって事か??
立ち位置は狛犬でも、国家の毒蛇と正体を見抜かせない悪魔だけどさ。

考えてみれば南の国も西の国も、王様がこんなに脳天気なお花畑なんだから、色々回りくどい事をしなくても王様を丸め込んだって良かったはずなのだ。
あのグレゴリウス王太子なら、その方法を視野に入れなかった訳じゃないだろうし。

でも、それはできなかったのだろう。
政治的には毒蛇が目を光らせ、プライベートでは悪魔的な執事がガードしていた。
鉄壁すぎる守りを崩す事は難しく、それよりも王子達をターゲットにする方が容易かったのだろう。

ただし一番手に入れたかったライオネル殿下に限っては、世界屈指のアサシンが執事としてついていたり、鬼の黒騎士率いる警護部隊と俺といういきなり現れた想定外のジョーカーに阻まれたってとこなんだろう。

何かおっかないルードビッヒ宰相も、色々恐怖でしかないグレイさんも、国王陛下お花畑親衛隊の二大巨頭だと思うとちょっと可愛い。

俺がそんな事を考えている中、ふむふむと手帳を見ていたルードビッヒさんの顔が途中から険しくなる。
そしてまた、ギロンッという感じで王様を睨んだ。

「陛下~っ!何ですか?!この!!不動産購入費の十倍近い修繕費は~っ!!」

「だから!サークがちっとも予算を使わぬから~!!それらを合計したって!貴族としてそれなりの土地を買って貴族邸宅を建て内装を整えるのに比べたら!全然、費用がかかっておらぬだろう?!そもそもこれは私のポケットマネーなのだ!どう使っても良かろう!国の予算には手をつけておらぬのだから!!」

おっかない国家の毒蛇も、王様のお花畑の前ではデフォルトされて何かメルヘンに見える。
何気に苦労してるんだな、ルードビッヒ宰相……。
俺は内心、同情してしまった。

「あ~、申し訳ございません。国王陛下、並びにラティーマー宰相。その件は後でじっくり話し合われてはいかがでしょうか??」

状況をみかねたコーディ書記長が半笑いでそう声をかけた。
さっきまでフリーズしていた為に現状を確認し損ねたルードビッヒ宰相は、コーディ書記長の言葉にハッとして周囲を見る。

その瞬間、皆がサッと視線を反らせた。
我々は何も見ておりません、と言った状況だ。

宰相も分が悪いと読み取り、咳払いをすると何事もなかった様に椅子に座り直した。

「……失礼。だが、私はアズマ男爵の住居にライオネル殿下をお連れする事に納得はしておらぬ。建物の物理的強度はわかった。だが、それで殿下の中のモノに本当に耐えられるとは思えぬ。もしも耐えきれぬ場合、この王宮都市が甚大な被害を受けるのだぞ?!だいたい、お主の家は住宅街にあるのだろう?!もしもの事があったらどうする?!そこに住む国民に避難勧告でも出すのか?!」

いきなり仕事モードに戻ったルードビッヒ宰相は、そう話を振って来た。
確かに俺も住宅街にあるってのは若干、気になっていたんだけどさ。
家守りの精霊であるカレンがいるから、海神の魔力は否定されるはずなのだ。
だがそこを絶対かと言われると俺にだって不安はある。

「ひとまず、家守りの神様のお力については、私が保証致しますよ。宰相様。」

どう説得するか考えを巡らせていると、義父さんが穏やかな口調でそう言った。
視線を向けると、ニコッと笑って頷いてくれる。

良かった。
ここは俺がカレンの能力について説明しても疑念を振り払うには至らないが、精霊の専門家である義父さんが話してくれればかなり払拭されるはずだ。
俺は少し安堵して息を吐いた。

「家守りの神様というものはとても変わった性質があります。普段はそこにいても何もできないのです。」

「何もできない?」

「はい。何もできません。ただいるだけです。家を守るという事に限りなく特化している為に、その他の能力がないのです。」

義父さんの話に皆が耳を傾けている。
俺はその間に次に来るであろう質問の答えを用意する為に動いた。

手元にあった書類の端を切り取り、丸めた。
それを魔力で制御しながら指でパチンッと弾く。

コロコロと転がったそれは、ちょうどギルとイヴァンの席の前で止まった。
二人がそれに気づき、俺の方を見る。
俺は黙ってじっと二人の顔を見つめた。

言いたい事に勘付いた二人は、軽く頷いた後、顔を見合せ小声で話し合いをはじめる。
それを見届けると、俺はこの計画に他にどこか穴がないか頭の中で確認していく。

そんな中、義父さんの説明は続いていた。

「……その最たるものが、敷地内、特に家における魔力の選別と否定です。家守りの神様はその家を守る為に、家に害を与える魔力を否定する事ができます。」

「魔力の否定とは?効果の打ち消しの事かね?」

「いいえ、効果の打ち消しではありません。魔力そのものを否定します。熱い場合に冷やす事で打ち消して無かった事にする様な原理ではなく、火をつけようとした燃料及び炎そのものを無かった事にすると言った性質のものです。」

「……え?!そんな事、魔力の真理的にあり得ないよ?!おじさん?!」

思わず漏れたアレックの言葉に、俺は思わず笑った。
そりゃな?魔力を使うもの、それを学んだものにしてみたら、ありえない話だから驚くよな~。
俺もはじめ、何それって思ったし。
ここが王様もいる会議の場だと言うのに素っ頓狂な声を上げたアレックに、義父さんは優しく笑いかける。

「うん。いい質問だね、アレック君。家守りの神様はね、家を守る為にその家の中だけと言う限った範囲内だけだけど、その真理を少しだけ曲げる事が許されているんだよ。」

「うっそ!!そんな事できるの?!あり得ないよ!!」

「それができるのが家守りの神様の特性なんだよ。とてもとても貴重な神様で、元々中央王国を中心に存在した神様だから、私も出会えてちょっとワクワクしたんだ。カレンはとても可愛い良い子だし、東の国でもこのタイプの家守り様はもういらっしゃらないからね。」

確かにな。
俺も何となく東の国の家守りと王国の家守りが違う事は知っていたけど、ここまで違うと思わなかったからびっくりしたし。

ふと見ると、アレックが義父さんの話に夢中になっているのを困った顔で黒猫キーホルダーが見上げている。
構われるとぴぃぴぃ鳴くのに、自分以外の精霊の話に夢中になられてショックだったみたいだ。
必死になってアレックの指を掴んで引っ張っている。

何だかんだ人工精霊の方もアレックに懐いているみたいだ。
なのにそれを、無意識なのかアレックが振り払う。
うぅ、無慈悲だ……。
俺は苦笑して転がってきたぬいぐるみを手で受け止めると、置いてあったコーヒシュガーの氷砂糖を摘んで渡してやった。
黒猫キーホルダーはスンスン拗ねながら氷砂糖を抱えている。

とはいえすっかり甘い味を覚えちゃったんだなぁ~。
ちょっと面白い。
そんな中、アレックは話に夢中だ。

「え??東の国だと家守りの精霊はタイプが違うの??」

「うん。東の国では家守り様は今でも結構いるんだけど、魔力を否定する能力を持っているタイプでなく魔力を家に呼び込むタイプだね。だから東の国では家守りの神様とは少し区別してワラシ様もしくはオマモリ様と呼ばれているよ。この神様は正確に位置づけるならサークの家にいる様な家守り様の亜種にあたり、力が少し弱いと考えられているんだ。だから家の中とは言えども、守る為に魔力を否定する事、つまり魔力の真理を曲げる事を許されていないんだ。その代わり常に自然界の魔力を引き寄せる。それによってその家では願いが叶いやすくなったり、所有地が豊作に見舞われたりするから、結果的に富を得る事ができたりする。」

「え?!何それ?!メチャクチャ良いんだけど?!そいつ!!自然魔力を引き寄せてくれるなら!連れて歩けばダンジョンでも魔力切れとか防げて最強なんだけど?!」

「ふふふ、残念ながらワラシ様たちは家守り様だからね。家の外には出れないんだよ。」

「ん~なんだよ~。そう都合よくいかないのかよ~。」

「こら、アレック。話がズレちゃってるだろうが。」

流石に脱線がすぎるので俺は話を止めた。
そして拗ねて氷砂糖を抱えている人口精霊を前に置いてやる。

アレックは黒猫キーホルダーに触ろうとしたが、ぷんっとばかりにそっぽを向かれ、頭に疑問符を浮かべてそれを見ている。
なんか面白い事になってきてるな、この二人。

「ええ……父からの話の通り、我が家にいる家守りの精霊は家を守る為に選別的な魔力の否定、いわば魔力的治外法権を持っています。それは精霊本人に確認済みです。」

「……だがそれは外部からの攻撃に対してであろう?家の中のモノにも効果があるのか?」

「家守りの精霊の魔力の否定の力は『家を守る』為のものです。ですから攻撃が中でも外でも『家、もしくは敷地内』と言う条件と『家を守る為』と言う条件さえ当てはまれば施行可能です。」

「その力はライオネル殿下の中のモノにも通用するのかね?!」

「確認は取れていませんが、使用される魔力の否定は相手の強さには関係ないと思います。」

「だが絶対とは言い切れないのだな?」

「未確認ですので。」

俺は嘘は言わなかった。
こういう時、条件が悪いからと言って誤魔化さない方がいい。
俺はそう答え、じっとルードビッヒ宰相の目を真っ直ぐ見つめた。
宰相は黙って俺を見返していたが、やがて言った。

「……お前の中での確証はどの程度だ?」

「八割は堅いかと。」

「そうか……。」

ルードビッヒ宰相は腕組みをしたまま目を閉じた。
恐らく自分の感情はさておき、全ての情報を総合的に比較して、どの選択が王様そしてこの国にとって一番有益であるかを考えているのだ。

そして目を開く。

けれど何も言わぬままテーブルに肘をつき、神経質そうにトントントンッと指で音を立てている。
視線は明後日の方を向き、何も言わない。

どういう事だ??

皆よくわからなくて困惑した。
今まで何でもスパスパ竹を割るように話を進めてきたルードビッヒ宰相のその対応に俺は首を捻る。

俺の家に託すのが良くないと思ったなら、はっきりそう言ってくるだろう。
なのにそれをしない。
それともその為の反発材料を頭の中で探しているのか??
いや、そんなすぐに出てこないような不確実な反発材料なら、この人は用いないだろう。

何しろこの人は、確実な一撃で有無を言わさずトドメを刺すタイプの人だ。

自分も突っ込まれるかもしれない不確実な材料で、ネチネチじわじわ時間稼ぎをするような人じゃない。
判断するに満たないなら、無駄に時間を使わず決断の時を改める手法に出るはずだ。

なら何だ??
どうしちゃったんだ??
ルードビッヒ宰相??

議論をする事でだいぶこの人の事がわかってきたのだが、これは全くわからない。
俺にはデータ不足だ。
他の皆も困惑し、顔を見合わせている。

そこに笑いを堪えるような咳払いが響いた。
見るとコーディ書記長が何かを堪えたような強張った顔をしている。

「んんっ。失礼。……ラティーマー宰相が気になっていられるのは、やはりアズマ男爵の邸宅が住宅街にあるからでしょうか??」

そして声を抑えてそう言った。
声を抑えているのは、多分笑いそうなのを堪えているんだ。
だって後半、ちょっと声が震えてた。

ルードビッヒ宰相はそんなコーディ書記長を物凄く嫌なものを見るように睨んだ。
そしてプイッと視線をそらす。

え??

待って??
何それ?可愛い??

いやいやいやいや?!
相手は王国の毒蛇!何かの気の迷いだ!!
怖いはあっても!可愛い訳がないだろう!!
ラティーマー家きってのヘビ顔だぞ?!

……いや?でも??
別に蛇も可愛いって言えば可愛いんだよな??
蛇を可愛くないと固定するのはおかしいよな??
トカゲだって可愛い顔してるし??

混乱のあまり動物トークが俺の脳内に混線。
同時にブホッと誰かが吹き出すのが聞こえた。
びっくりして顔を上げると、グレイさんが「失礼……。」と小さく謝ってくる。

あんたか~い!今!吹き出したの!!
さっきから変顔したり!何してんですか!!

でも、え??
どういう事??

ルードビッヒ宰相の変な態度と周りのおかしな反応に困惑が隠しきれない。
微妙な雰囲気で過ぎていく不思議な時間。
俺達は困って顔を見合わせた。

う~ん??
とりあえず状況を整理しよう。

何となくコーディ書記長のツッコミ(?)の感じから、ルードビッヒ宰相は多分、総合的に考えて俺の家にライオネル殿下を連れて行くのが一番安全だと判断したのだと思われる。

だったらそこから先は??
ルードビッヒ宰相の頭の中でそれが一番良いと結論が出たが、それをサクッと宣言できない理由って何だ??

ルードビッヒ宰相の立場で考えてみよう。

物理兼魔力防御の観点から、王宮都市からできる限り距離を取る事によって得られる安全と行うリスクを鑑みて、むしろ俺の家にライオネル殿下を連れて行く方がこの国と王様にとって有益だと結論は出た。

だがそこで別の問題に直面した。
俺の家が高位住宅街にあるという事だ。

うちの周辺は上流から中級階級くらいの富裕層の多い住宅街で、貴族の邸宅もいくつかある。
俺のうちはその外れに位置しているが、もしもの事を考えたらそれらの人々をどうするかと言う問題が起きてくる。

安全を最優先にして考えれば、周辺住民を避難させておく事になる。
だがここで問題になるのは、それなりにお金持ちのお宅が多いって事だ。
俺の家は区画の隅にあるけれど、中心部は貴族の家も多くある様な場所だ。
他は貴族でなくともそれなりの財のある裕福層。
何らかの理由をつけて避難させるとしても必ず文句が出るし、その文句を親しくしている貴族や商人に話す事も考えられる。

そうなると話を聞きつけた者の中に、妙な探りを入れてくる者が出てくる事は当然の事。
まぁグレイさんもいるからそう簡単に機密が外に漏れる事はないだろうが、もしもという可能性は高まる。

またお金持ちと言うのは不思議なもので、お金にうるさい……いや、しっかりしている。

だから避難指示だけでも下手をすると保証金や損害賠償、慰謝料みたいな金銭を要求される可能性も出てくる。
また避難させるとしても、彼らの生活スタイルに合ったそれ相応のクオリティーの避難場所を用意しなければならない。

まあ何かって言うとお金がかかるのだ。
そして若干、面倒くさい立ち位置の相手達なのだ。

ある意味お金があれば魚心水心で問題解決できるのだが、すでに予算は仮想精神空間装置とマダムへのリース料でカツカツだからそんなに予算に余裕はない。
だからと言って下手に国家予算にしわ寄せが行けば、この一部しか知らないライオネル殿下の件が露呈しかねない。

うわ……なるほど……。
これ、結論は出てるのに道がない……。

いくら非情な判断ができるラティーマー宰相でも判断に困る。
サクッと見捨てる判断をするには、住んでいる層が社会に対しての影響力が大きすぎる地域だ。
行くも地獄、戻るも地獄……。
避難指示を出せばこの秘密が危険に晒され、黙って行って失敗した場合、国家的危機に陥る。

かと言って、この案より安全な策が見いだせない。
駄目だと否定する材料もなければ代案もない。
議論を先延ばしにすれば、王と王国を危険に晒す時を悪戯に伸ばすだけだとわかってる。

良いも悪いも答えられない。
そういう状況だ。

「おい、サーク??何でお前まであのオッサンみたいになってるんだよ??」

「……ハッ!!」

いつの間にかテーブルに肘をつき、頭を抱えていた俺をツンツン突きながらアレックが言った。
しまった。
何を考えているか知ろうとして、ルードビッヒ宰相に同化してしまった。

だがこれでわかった。

恐らくルードビッヒ宰相が結論が出たのに結論が出せない理由。
それは俺の家に連れて行くのが一番安全だと納得してしまったけれど、違う意味で俺の家の場所が悪すぎてゴーサインも出せないのだ。

ライオネル殿下の一件は隠したいが、住民の安全を優先すれば機密情報が危険に晒され、おまけに下手をするとかなりの予算を要する。
だが機密保持を優先させれば、住民に物凄く危険なものがそこにある事を黙っておく事になる。
何事もなく終われば良いが、もしもの事があった場合、国への信頼が失墜しかねる程の案件だ。

それにライオネル殿下を連れて行くのだ。
つまり王族が一人そこに来る。
秘密裏に連れて行った場合、住宅街の中で警護をどうするかと言う問題が出てくる。

俺は顔を上げ、ギルとイヴァンを見た。

二人は俺に頷く。
俺もそれに返す。

とりあえずその部分はこっちも予測済みだ。
今の迷えしルードビッヒ宰相の助け(?)になるかはわからないが、一応説明した方が決断がしやすいだろう。

妙な雰囲気をあまり気に求めず、ギルがいつも通りの無表情で挙手をし、発言の許可を求めたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

氷の支配者と偽りのベータ。過労で倒れたら冷徹上司(銀狼)に拾われ、極上の溺愛生活が始まりました。

水凪しおん
BL
オメガであることを隠し、メガバンクで身を粉にして働く、水瀬湊。 ※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 過労と理不尽な扱いで、心身ともに限界を迎えた夜、彼を救ったのは、冷徹で知られる超エリートα、橘蓮だった。 「君はもう、頑張らなくていい」 ――それは、運命の番との出会い。 圧倒的な庇護と、独占欲に戸惑いながらも、湊の凍てついた心は、次第に溶かされていく。 理不尽な会社への華麗なる逆転劇と、極上に甘いオメガバース・オフィスラブ!

年下幼馴染アルファの執着〜なかったことにはさせない〜

ひなた翠
BL
一年ぶりの再会。 成長した年下αは、もう"子ども"じゃなかった――。 「海ちゃんから距離を置きたかったのに――」 23歳のΩ・遥は、幼馴染のα・海斗への片思いを諦めるため、一人暮らしを始めた。 モテる海斗が自分なんかを選ぶはずがない。 そう思って逃げ出したのに、ある日突然、18歳になった海斗が「大学のオープンキャンパスに行くから泊めて」と転がり込んできて――。 「俺はずっと好きだったし、離れる気ないけど」 「十八歳になるまで我慢してた」 「なんのためにここから通える大学を探してると思ってるの?」 年下αの、計画的で一途な執着に、逃げ場をなくしていく遥。 夏休み限定の同居は、甘い溺愛の日々――。 年下αの執着は、想像以上に深くて、甘くて、重い。 これは、"なかったこと"にはできない恋だった――。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...