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2話
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デイビス視点
いつも一緒にいるルナ嬢が、ある日、決意の籠もった眼差しで、私に話しがあると言う。
「実はデイビス様、私に王太子殿下と婚姻せよと王命が下りました」
それを聞いた私は一瞬、何を言っているのかと、頭の中が真っ白になってしまった。
王命? 頭の中で繰り返す。
それは絶対断れない決定事項ではないか! 私は思わず
「それで何と返事を?」
何と間抜けなことを聞くのかと冷静になった時に思った。
答えなど一つしかないのに。
何でどうしてルナ嬢なんだ! そう心の中で叫んだが、虚しいだけだった。
わずかな沈黙の後、冷静になりきれないまま思わず
「私も王宮に上がろう、父上の補佐として」
と言うと、彼女は凄く嬉しそうに
「それは本当ですか?」
と聞いてくる。
「必ずだ、絶対に上がってみせる。だから待っていてくれ」
そう言い残して、父上の元に向かった。
そしてその途中、いつだったかルナ嬢を屋敷まで送った帰り道、ルナ嬢のお父上に偶然会って
「いつも済まないね」
と言われた時に
「いえ、自分が好きでやってるだけなので」
と返したら何かを察した様な笑顔を向けられたなと、懐かしく思い出していた。
屋敷に帰り、出迎えた執事に「父上はお帰りか?」
と聞いたが、未だだと言われたので、着替えてから暫く待った。
そういえばいつも帰りは遅かったなと思い、いつも通り母上と先に食事をしていたら、途中で父上が帰って来て一緒に食事に加わった。
そして私は
「話しがあります」
と言うと、父上が
「ルナ嬢のことか?」
と聞いてきた。
思わず
「どうして分かるのですか?」
と聞くと
「先日、陛下から相談されたからな、まあ相談というよりはもう決められていた様だがな」
と言い、項垂れた私に
「それでお前はどうしたいのだ?」
と言うので、自分の思っている事を全て話した。
ルナ嬢にいつか気持ちを伝えようと思っていたこと、そしてそれが叶わないのなら、せめて側にいて、手助けをしたい。
その為にも父上の補佐をしながら王宮に上がりたいと。
父上は腕組みをしながら、じっと考えている。
母上はもう既に知っていたようで、涙目で只、黙っていた。
そして暫くの沈黙の後
「側にいたい気持ちは分かったが、お前は嫡男なんだぞ、この公爵家はどうするのだ?」
と、当然のことを言われた。
両親には申し訳ないが
「私はルナ嬢と一緒になれないのなら、他は考えられません。
だから縁戚から養子でも取ってもらえれば」
と返した。
二人共、黙ったままでいる。
私はそのまま席を立った。
父上と母上は、追っても来ない。
多分二人共、今の私には何を言っても無駄だと思っているのだろう。
いつも一緒にいるルナ嬢が、ある日、決意の籠もった眼差しで、私に話しがあると言う。
「実はデイビス様、私に王太子殿下と婚姻せよと王命が下りました」
それを聞いた私は一瞬、何を言っているのかと、頭の中が真っ白になってしまった。
王命? 頭の中で繰り返す。
それは絶対断れない決定事項ではないか! 私は思わず
「それで何と返事を?」
何と間抜けなことを聞くのかと冷静になった時に思った。
答えなど一つしかないのに。
何でどうしてルナ嬢なんだ! そう心の中で叫んだが、虚しいだけだった。
わずかな沈黙の後、冷静になりきれないまま思わず
「私も王宮に上がろう、父上の補佐として」
と言うと、彼女は凄く嬉しそうに
「それは本当ですか?」
と聞いてくる。
「必ずだ、絶対に上がってみせる。だから待っていてくれ」
そう言い残して、父上の元に向かった。
そしてその途中、いつだったかルナ嬢を屋敷まで送った帰り道、ルナ嬢のお父上に偶然会って
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「いえ、自分が好きでやってるだけなので」
と返したら何かを察した様な笑顔を向けられたなと、懐かしく思い出していた。
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そういえばいつも帰りは遅かったなと思い、いつも通り母上と先に食事をしていたら、途中で父上が帰って来て一緒に食事に加わった。
そして私は
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と言うと、父上が
「ルナ嬢のことか?」
と聞いてきた。
思わず
「どうして分かるのですか?」
と聞くと
「先日、陛下から相談されたからな、まあ相談というよりはもう決められていた様だがな」
と言い、項垂れた私に
「それでお前はどうしたいのだ?」
と言うので、自分の思っている事を全て話した。
ルナ嬢にいつか気持ちを伝えようと思っていたこと、そしてそれが叶わないのなら、せめて側にいて、手助けをしたい。
その為にも父上の補佐をしながら王宮に上がりたいと。
父上は腕組みをしながら、じっと考えている。
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そして暫くの沈黙の後
「側にいたい気持ちは分かったが、お前は嫡男なんだぞ、この公爵家はどうするのだ?」
と、当然のことを言われた。
両親には申し訳ないが
「私はルナ嬢と一緒になれないのなら、他は考えられません。
だから縁戚から養子でも取ってもらえれば」
と返した。
二人共、黙ったままでいる。
私はそのまま席を立った。
父上と母上は、追っても来ない。
多分二人共、今の私には何を言っても無駄だと思っているのだろう。
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