完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール

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1話

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 貧乏男爵家の四女に生まれた私、アンジュは家族からも殆ど忘れられた存在でした。
 そんな私に突然舞い込んだ結婚のお話、普通なら婚約してからの結婚となる筈なのにいきなり結婚ですか? その上、式も挙げずに書類上の手続きだけですか? 私は別に構いませんが。
 だって、私に拒否権はないのでしょ? 承知しております。

 別に家族に虐げられているわけでは無いんです。
 貧乏男爵家の四女なんてこんなものです。
 使用人だって三人だけしか居ません。
 執事のジョセフ、料理人のブルボン、メイドのマリアだけです。
 なので四女の私は家事全般こなせます。
 特にお料理の腕前は自分で言うのも憚られますが、かなり自信があります。
 それには理由があって、小さな頃から料理づくりに興味があった私はいつも料理人のブルボンの後をついて回っては一緒にお手伝いをさせてもらっていました。
 ブルボンは元々有名なお店のパティシエをしていましたがお菓子だけではなく色々なお料理全般に精通していました。そんなブルボンのことを私のお父様が気に入り、お店のオーナーが知り合いだったこともあり我が家に招き入れたのでした。
 因みに、その頃の我が家はそこそこ裕福だったそうです。
 今の様に貧乏になってしまったのはお父様が知人に騙されて領地の特産品を開発するという名目で建てた工場が、途中で頓挫したのがきっかけだったらしいです。
 そしてその後、起死回生を図るものの上手くは行かず今日に至った訳なのです。そして今は、地道に領地経営だけをしている様です。


 私達姉妹の長女は子爵家の三男様に婿養子に入って貰いました。
 次女は商家に嫁ぎました。
 三女は極上の美貌を持って生まれたので伯爵様に見初められ嫁ぎました。
 皆それなりに幸せに暮らしています。


 貧乏男爵家ですが四人共、学園には通わせてもらえました。
 皆さんは馬車で送り迎えですが私達は徒歩で通いました。
 私は先月十八歳になり、学園を卒業したばかりです。
 これで大好きな読書ともお別れね。
 学園の図書室には本当に沢山の本があったのに残念です。特にお料理の歴史や、レシピに関わる様々な知識が詰まった専門書も多数ありましたのに、それをまだ全て読破してないことだけが心残りです。

 え? 私のお相手は辺境伯様ですか? マイセン辺境伯領のエリック様? もちろん一度もお会いした事はありません。
 嫌な予感しかしないのですが。
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