9 / 42
9話
しおりを挟む
私はその後、別宅に戻り昨日のお掃除の続きを始めました。
まずは寝具のお洗濯をし、お料理も直ぐに出来るように片付けました。
そうしていると、あっという間に辺りは暗くなっていたので今朝、市場で買ったお野菜や調味料などを使いスープを作り、頂いたパンと合わせて夕食にしました。
幸いここでの暮らしは、お掃除さえすれば生活に必要な物は一通り揃っていました。
さあ、明日からは新しい生活が始まるわ、私は自分に気合いを入れてから用意しておいたお湯で湯浴みをして眠りについたのでした。
そして次の日の朝、目が覚めると昨夜の残りのスープとパンで朝食を取り、パン屋さんへと向かいました。
そういえば本宅からは何も言ってきませんね。やはり忘れられてる様ですね。でしたら、このまま働いても問題は無さそうですね。
パン屋さんに着くと早速新しいエプロンを渡され、女将さんに一から接客の仕方や、パンの並べ方などを教わりました。
そしてそんな中で、私は女将さんにパンの値段も覚えた方が良いのか聞くと、女将さんに驚いたように聞かれました。
「アンジュちゃん、もしかしてあんた、計算とか出来るのかい?」
「はい、多分一通りは出来ると思います」
そう答えたらとっても驚かれていた。
そういえば、一応男爵家とはいえ貴族の端くれ、学園にも通わせて貰っていたので、読み書きや計算、マナーなどは学んできたのです。
この当時は確かに平民の識字率はとても低く、学べる場所は殆どありませんでした。
女将さんはニッコリと笑顔を向けながらおっしゃいました。
「どうやらアンジュちゃんは訳有りのようだね、初めて会った時から普通の平民とは違う気はしてたんだけどね」
それでも深くは詮索されずに却って、何でもこなしてくれるから助かるよと言ってくださいました。
その後、半月程してから女将さんは産気付かれて、すぐ近くにある自宅へと戻りました。
自宅には女将さんのお母様が手伝いに来てくれているそうです。
それから、二日掛かって漸く元気な可愛い女の子が産まれました。
しかし、かなりの難産だったので予定より長く、自宅で休まなければならないということです。
それなので、私は当初の約束よりも長く働けることになりました。
お優しいご主人は暇さえあれば女将さんの元へ顔を出しています。
ーーーー
その後、働いていくうちに、私はふと、学園で読んでいた本の中にあったアップルパイを、料理人のブルボンに頼んで一緒に作った事を思い出していました。
私はそれとなく、ご主人に提案してみました。
「こちらのお店のパイ生地はとても美味しいので、いつものミートの代わりに、りんごを砂糖で煮た物をいれたらデザートとして美味しく頂けるのではないですか?」
「そうか、それは確かに試してみたいな」
そして私は、ブルボンと試行錯誤しながら割り出したりんごを煮込む時間や、砂糖の量などを思い出しながらご主人にそれを伝えました。
初めて焼き上がったアップルパイを、いよいよ二人で試食しました。ご主人はまず一口頬張りました。
「これはいける、早速商品として売り出そう」
そう言ってからご主人は、そのアップルパイを持って女将さんに直ぐに食べさせてあげたいと自宅へと駆け出して行ったのでした。
そんなお姿がとても微笑ましく思え『ああ本当に奥様を愛しておられるのだわ』と、とても羨ましく思いました。
いつの日か、私にもそんな方ができたらいいのにと、叶わない夢を抱いてしまいました。
『存在すら忘れられているこの私が、可笑しな望みだわ』と思わず苦笑してしまいました。
まずは寝具のお洗濯をし、お料理も直ぐに出来るように片付けました。
そうしていると、あっという間に辺りは暗くなっていたので今朝、市場で買ったお野菜や調味料などを使いスープを作り、頂いたパンと合わせて夕食にしました。
幸いここでの暮らしは、お掃除さえすれば生活に必要な物は一通り揃っていました。
さあ、明日からは新しい生活が始まるわ、私は自分に気合いを入れてから用意しておいたお湯で湯浴みをして眠りについたのでした。
そして次の日の朝、目が覚めると昨夜の残りのスープとパンで朝食を取り、パン屋さんへと向かいました。
そういえば本宅からは何も言ってきませんね。やはり忘れられてる様ですね。でしたら、このまま働いても問題は無さそうですね。
パン屋さんに着くと早速新しいエプロンを渡され、女将さんに一から接客の仕方や、パンの並べ方などを教わりました。
そしてそんな中で、私は女将さんにパンの値段も覚えた方が良いのか聞くと、女将さんに驚いたように聞かれました。
「アンジュちゃん、もしかしてあんた、計算とか出来るのかい?」
「はい、多分一通りは出来ると思います」
そう答えたらとっても驚かれていた。
そういえば、一応男爵家とはいえ貴族の端くれ、学園にも通わせて貰っていたので、読み書きや計算、マナーなどは学んできたのです。
この当時は確かに平民の識字率はとても低く、学べる場所は殆どありませんでした。
女将さんはニッコリと笑顔を向けながらおっしゃいました。
「どうやらアンジュちゃんは訳有りのようだね、初めて会った時から普通の平民とは違う気はしてたんだけどね」
それでも深くは詮索されずに却って、何でもこなしてくれるから助かるよと言ってくださいました。
その後、半月程してから女将さんは産気付かれて、すぐ近くにある自宅へと戻りました。
自宅には女将さんのお母様が手伝いに来てくれているそうです。
それから、二日掛かって漸く元気な可愛い女の子が産まれました。
しかし、かなりの難産だったので予定より長く、自宅で休まなければならないということです。
それなので、私は当初の約束よりも長く働けることになりました。
お優しいご主人は暇さえあれば女将さんの元へ顔を出しています。
ーーーー
その後、働いていくうちに、私はふと、学園で読んでいた本の中にあったアップルパイを、料理人のブルボンに頼んで一緒に作った事を思い出していました。
私はそれとなく、ご主人に提案してみました。
「こちらのお店のパイ生地はとても美味しいので、いつものミートの代わりに、りんごを砂糖で煮た物をいれたらデザートとして美味しく頂けるのではないですか?」
「そうか、それは確かに試してみたいな」
そして私は、ブルボンと試行錯誤しながら割り出したりんごを煮込む時間や、砂糖の量などを思い出しながらご主人にそれを伝えました。
初めて焼き上がったアップルパイを、いよいよ二人で試食しました。ご主人はまず一口頬張りました。
「これはいける、早速商品として売り出そう」
そう言ってからご主人は、そのアップルパイを持って女将さんに直ぐに食べさせてあげたいと自宅へと駆け出して行ったのでした。
そんなお姿がとても微笑ましく思え『ああ本当に奥様を愛しておられるのだわ』と、とても羨ましく思いました。
いつの日か、私にもそんな方ができたらいいのにと、叶わない夢を抱いてしまいました。
『存在すら忘れられているこの私が、可笑しな望みだわ』と思わず苦笑してしまいました。
4,424
あなたにおすすめの小説
事情があってメイドとして働いていますが、実は公爵家の令嬢です。
木山楽斗
恋愛
ラナリアが仕えるバルドリュー伯爵家では、子爵家の令嬢であるメイドが幅を利かせていた。
彼女は貴族の地位を誇示して、平民のメイドを虐げていた。その毒牙は、平民のメイドを庇ったラナリアにも及んだ。
しかし彼女は知らなかった。ラナリアは事情があって伯爵家に仕えている公爵令嬢だったのである。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに
有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。
選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。
地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。
失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。
「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」
彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。
そして、私は彼の正妃として王都へ……
婚約破棄された公爵令嬢は心を閉ざして生きていく
おいどん
恋愛
「アメリアには申し訳ないが…婚約を破棄させてほしい」
私はグランシエール公爵家の令嬢、アメリア・グランシエール。
決して誰かを恨んだり、憎んだりしてはいけない。
苦しみを胸の奥に閉じ込めて生きるアメリアの前に、元婚約者の従兄、レオナールが現れる。
「俺は、アメリアの味方だ」
「では、残された私は何のためにいるのですか!?」
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
余命わずかな私は、好きな人に愛を伝えて素っ気なくあしらわれる日々を楽しんでいる
ラム猫
恋愛
王城の図書室で働くルーナは、見た目には全く分からない特殊な病により、余命わずかであった。悲観はせず、彼女はかねてより憧れていた冷徹な第一騎士団長アシェンに毎日愛を告白し、彼の困惑した反応を見ることを最後の人生の楽しみとする。アシェンは一貫してそっけない態度を取り続けるが、ルーナのひたむきな告白は、彼の無関心だった心に少しずつ波紋を広げていった。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも同じ作品を投稿しています
※全十七話で完結の予定でしたが、勝手ながら二話ほど追加させていただきます。公開は同時に行うので、完結予定日は変わりません。本編は十五話まで、その後は番外編になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる