❲完結❳乙女ゲームの世界に憑依しました! ~死ぬ運命の悪女はゲーム開始前から逆ハールートに突入しました~

四つ葉菫

文字の大きさ
85 / 105

84.剣術大会①

しおりを挟む
今日は待ちに待った剣術大会日。
空は青々として澄みきって目に眩しいほどだ。朝から気温も上昇。そこに更に生徒の熱気も加わっているから尚更だ。熱く血が滾る剣術大会に相応しい絶好の日和だ。 
剣術大会は二日間にわたって開催される。一日目の今日は初戦から三回戦、敗者復活戦が行われ、明日は勝ち残った強い者同士が戦い、決勝まで行われる。生徒の保護者も観戦するから、注目の一大行事だ。
生徒たちは登校した瞬間から朝からきゃっきゃっわいわい。男子たちは朝から闘志を燃やし雄叫びをあげていたり、女子は女子で好きな男子に必勝祈願であるお守りをあげるために校舎内を駆けずり回っている。
そういえばゲーム内でもあったわね。ゲームの中では剣術大会が近づく時期にしか売っていない必勝祈願お守りがあって、それを剣術大会初日に攻略対象者の中からひとり選んであげることができるのだ。もちろん好感度が影響してくるから、プレイヤーのほとんどが攻略中の男子にあげていた。
そうすると、騎士服姿の攻略対象者が現れて受け取ってくれるのだ。
『騎士服姿』。そうここが重要だ。画面に現れたその姿に思わず鼻を押さえて呻き声を発した乙女たちのが続出したとか。 
正確には騎士じゃないから、本当は騎士服じゃないんだけど、ファンの間では騎士服の呼び名で通ってたから、騎士服でいいよね?
この騎士服姿がめっちゃ格好いいんだよね。詰め襟のデザインの、色は濃い緑を基調としていて、所々の優美でいてかつ凛々しい装飾の金色が混じった、それはそれは麗しい姿だった。攻略対象者の類稀なる美貌が合わさって、直視できない格好良さだった。
制服ではブレザー、騎士服では学ラン姿を楽しめるという、一粒で二度楽しめるようになっていて、お得感満載だった。制作会社様、本当いい仕事するよね。
あれこれと思い出していたら、教室の中はいつの間にか、クラスメートがほとんどいなくなっていた。
いけない。私も移動しなくちゃ。剣術大会はこの学園の敷地内にある円形闘技場で開催される。
歩いて十分というちょっと距離がある場所だ。
裏庭を通り過ぎて向かおうとしていたら――。

「カレン」

呼び止められ、振り返る。

「ユーリウス?!」

なに、めっちゃ格好いいんですけど!?
日差しを受けて、赤く輝く髪と、騎士服の優美さが合わさり、あまりの美しさと格好良さにユーリウス以外の景色は靄がかかっているように見える。

「ま、まだいたのね。ど、どうしたの?」

動揺を隠して、なんとか言葉を絞り出す。
ユーリウスが私の眼の前まで来て、ルビーのような赤い目でみおろしてくる。
当然、その端正な顔立ちを間近で見つめることになり――
この格好良さの前で、平常心を保つなんて無理!!

「な、な、ななに?」

「どこか、旅行に行きたい場所ってある?」

「へ?」

「ほら、明々後日から夏休みじゃん。時間もあるしせっかくだから、旅行しよ。カレンを四六時中、独占できるしさ。――っていうか、これからずっと俺のものになるのは変わらないんだけど」

後半は独り言みたいに呟く。

「な、なんで旅行?」

全身ハテナマークのまま尋ねる。
確かに二日間剣術大会が行われたあとは終業式で、明々後日からは夏休みだけど……。

「なんでって、そりゃ――」

「勝敗はまだ決まっていないぞ」

そのとき、がさりと茂みの奥からイリアスが現れた。

「イリアス!?」

うわ。イリアスもめっちゃ格好良いんですけど!? ユーリウスが甘美の毒がある格好良さとしたら、こっちはキラキラ王子様ね。
濡れたように輝く黒髪に、サファイアを嵌め込んだかのような青い瞳。ユーリウスは靄がかかっていたのに対し、こっちはキラキラ光るエフェクトがイリアスの周りだけ、舞っている。
イリアスが真っ直ぐユーリウスを見つめる。

「もう自分が勝ったつもりか?」

「俺が勝つんだから、当然だろ」

「今からそんな自信満々だと、負けたとき惨めだぞ」

「あんたこそ、いつまでその冷静な顔でいられるかな」

「明日になったら、全てわかることだ。まあ、既に決まっていることだが、明日まで期待させといてやる」

「俺も明日はあんたのための見舞いの花を用意しといてやるよ」

睨み合う両者。バチバチバチ。火花もとうとう可視化したみたい。私は両者から出る火花を見上げた。
イリアスが先に目をそらし、ため息を吐いた。

「ここでごちゃごちゃ言っててもしょうがない」

「だな。勝負は口じゃなくて、腕でするもんだ」

「勝負は明日」

「ああ」

「正々堂々と」

「敗者はあとを濁さず、潔くきっぱり諦めること。ルールはそれだけ」

「明日、楽しみだ」

「ああ。全力で行くぜ」

なに、この連帯感みたいな空気!? さっきまでお互いめちゃくちゃ火花散らしてたのに、今はふたりとも笑ってるわ! なに、もしかして友情が芽生えたの!? 
これ程熱くなって試合に対して語り合うなんて、やっぱり剣術大会って男子にとっては重要で欠かせないものなのね。体と体のぶつかり合いで、女子にはわからない意思疎通ができるんだわ。
今日の敵は明日の友って言うから、明日にはこのふたり、親友になってるんじゃないかしら。

「じゃあ、俺は一足先に会場に向かうけど、逃げずに来いよな」

「吐かせ」

「それじゃ、カレン、どこ行きたいか考えといて」

ユーリウスがウインクを飛ばして、去っていく。
あとに残された私たちは――。

「…………」

「…………」

イリアスは黙って立ち尽くしているけど、その背からなんだか冷たいオーラが仄かに漂っている気がする。
お、怒ってる? な、なんで。私、イリアスから告白されて、悪女脱したはずよね。
汗をたらりと流したところで、イリアスが静かに口を開いた。

「おい」

「は、はい!」

「あの男に付いていくなって言ったよな」

へ? 記憶を探った私は、入学初日の言葉を思い出す。ああ、そういえば、ユーリウスに付いていくなって言われた気がする。
でも、今回は付いていったわけじゃなくて、たまたまここで会っただけ――。
そう言おうとイリアスを振り仰いだ私は固まってしまった。

「――ッ!?」

イリアスが怖い顔をして、私に迫ってきていたからだ。

「な、なに、」

私は尻込みして、後ろに下がってしまう。
でも、逃げることは叶わなかった。
トンっと、背中に壁がぶつかったからだ。
あとにさがれなくなってしまった私にイリアスが近づいてくる。

「言ったよな。もし付いていったら、お仕置きだって」

私は追い込まれた兎のようにぷるぷると震えだした。
な、なに、やっぱりあの告白は嘘だったのね。
私が油断したところを仕留める罠だったのね!?
それに気づかず、まんまとハマるなんて、末代までの恥。卑怯者め!!
イリアスの影が顔にかかったところで、私は恐怖で目をぎゅっと瞑った。
――叩かれるっ!
そう思ったところで、チュッと、軽い音が自分のおでこから発せられた。それと一緒に押し付けられた軽い感触も離れていく。

「ほえっ?」

私は目を開けて、おでこを押さえた。
眼の前には顔を赤くしたイリアスの表情が。

「お仕置きだ」

ちょっと睨みつけるように言う。でも頬が赤いから、怒っているというより、照れてる?
今のはキス?
私はイリアスの表情を見て、確信する。
でも、自分でやっといて、照れないでくれます!?
こっちまで恥ずかしくなってくるんですけど!?
私の顔も釣られて、赤くなる。
イリアスがすっと体を離した。顔を赤くさせたまま、横を向く。

「お前のために頑張るんだからな。目にしっかり焼き付けとけよ」

私のおでこをこつんと指で押してから、去っていく。照れ隠しなのか、最後までこっちを見なかったけど、その顔が赤いのは誤魔化しようがなかった。

「……あ、甘いわ……」

まだ恥ずかしさで頭が追いつかないまま、ぼうっとして呟く。
少しの間その場に突っ立っていた私はようやく立ち直ると、闘技場へ行こうと歩き出した。
そのとき――。

「いたいた、カレン!」

オレンジ色の頭が飛び込んできた。




しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸
恋愛
 仕事帰りのある日、居眠り運転をしていたトラックにはねられて死んでしまった主人公。次に目を覚ますとなにやら暗くジメジメした場所で、自分に仕えているというヴィンスという男の子と二人きり。  彼から話を聞いているうちに、なぜかその話に既視感を覚えて、確認すると昔読んだことのある児童向けの小説『ララの魔法書!』の世界だった。  その中でも悪役令嬢である、クラリスにどうやら成り代わってしまったらしい。  混乱しつつも話をきていくとすでに原作はクラリスが幽閉されることによって終結しているようで愕然としているさなか、クラリスを見限り原作の主人公であるララとくっついた王子ローレンスが、訪ねてきて━━━━?!    原作のさらに奥深くで動いていた思惑、魔法玉(まほうぎょく)の謎、そして原作の男主人公だった完璧な王子様の本性。そのどれもに翻弄されながら、なんとか生きる一手を見出す、学園ファンタジー!  ローレンスの性格が割とやばめですが、それ以外にもダークな要素強めな主人公と恋愛?をする、キャラが二人ほど、登場します。世界観が殺伐としているので重い描写も多いです。読者さまが色々な意味でドキドキしてくれるような作品を目指して頑張りますので、よろしくお願いいたします。  完結しました!最後の一章分は遂行していた分がたまっていたのと、話が込み合っているので一気に二十万文字ぐらい上げました。きちんと納得できる結末にできたと思います。ありがとうございました。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

処理中です...