ジャンヌ・ダルクがいなくなった後

碧流

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新雪のような美しい少女

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皆の前に呼ばれた侍女のお仕着せを着た少女は、10歳になるかならぬかの年の頃でありながら、堂々としていた。

跪き頭を垂れる少女に、
「ジャネット」
シャルルは呼びかけた。

「楽にして良い。」

その言葉で顔を上げた少女の顔を見て、一堂「おお…」と声を上げた。
青白い肌、金髪碧眼が美の基準とされる中で、彼女のダークブラウンの髪と瞳は基準から外れている。
しかし、基準など気にならないほど彼女は美しかった。

化粧も何もしていないだろうに、
健康的な白い肌に薔薇色の頬
桜色の艷やかな唇

そしてシャルルへの情熱を隠そうともしない、魅力的な大きなブラウンの瞳。

あと2年も経てば、周りの男性は放っておかないだろう。
いや、すでに、ジャネットを食い入る様に見つめている中年の貴族もいる。

まっさらな誰の手垢もついていない新雪のようなジャネット。

マリーは眩しくて、そっと目を逸らし、隣のシャルルを盗み見た。

あれほどの熱視線を浴びながら、顔色一つ変えていない。

…私の気の所為だったのかしら…シャルル様に近寄る女性がいなかったから、神経質になりすぎたんだわ…

そう思っても、シャルルから少女を離す機会を逃そうとは思わなかった。

それほど少女は美しい。
シャルルへの思慕を隠そうとしない強い意志を宿った瞳。

…叶わない

思わず思って、心の中で自分を叱咤した。

弱気になってはならない。私は正当なシャルルの妃。それは何人にも奪われない。

それに、私もシャルル様をお慕いしてるもの。

扇を持った手に思わずぐっと力を入れた。
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