私のための小説

桜月猫

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117話

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「あれ?」

 目の前に座っている白父を前に公は首を傾げた。

「どうかしたのかい?」

 状況がわからずに首を傾げた白父。
 すると公は額に手を当てた。

「大丈夫かい?」
「えぇ。体調が悪いわけじゃないですから。いつも通り、作者のムチャに振り回されただけですから」
「それは災難だったね」

 白父は苦笑した。

「はい。それに中途半端で放り出してきましたし」

 でも、公だって熱くなってたじゃないか。

「あぁ~。なんであんなに熱くなってしまったんだろうか………」

  公は落ち込んでいた。
 すると、話し合いの間遠くに控えていた夢と舞が近づいてきて公の両サイドに座ると抱きついた。

「お兄ちゃん。気にしたら負けだよ」
「そうですわよ、お義兄さま。お義兄さまが落ち込む必要なんてないのですから」
「ありがとう」

 2人に励まされた公は笑顔になった。

「仲いいんだね」
「私もこんな兄妹がほしいな~」

 白父が微笑ましく、白は羨ましそうに公達のスキンシップを見ていた。

「さっき白父さんが言っていた通り、お兄ちゃんと結婚したら、私達とも義姉妹になれるよ、白お姉ちゃん」

 お姉ちゃんという呼ばれ方に白はグラッとくるものがあった。

「ただし、そのためには色々と障害がたくさんありますわよ」

 夢の言葉に白は白父を睨み付けた。

「おやおや。私は彼なら夫にすることを反対することはないから好きにするといい」

 あっさりと結婚まで許可した白父に公は唖然としていた。

「そういえば、お母さんは?」

 白がそう聞くと、白父は冷や汗を流しながら視線を反らした。

「社長と奥様は今ケンカ中です」
「ケンカ?」
「萌香!」

 白父が慌てて萌香を止めようとしたが、萌香は止まらずにさらに話を続けた。

「はい。お嬢様が家出した原因は社長にありますので、社長がお嬢様を連れ戻すまでは口もきかないと言って、お嬢様が家出してから今日まで1度も口をきいていません。
 さらに、今回のお嬢様を連れ戻しにいくとなった際も、『私は家で白が帰ってくるのを待っています。もちろん、あなたが1人で行って責任をもって確実に白を連れて帰ってきてくれますよね?もし、連れて帰ってこれなかったら………』という紙を笑顔で突きつけていました」

 萌香によって全てを暴露された白父は恥ずかしそうに両手で顔をおおっていた。

「お父さん」

 話を聞いた白は白父を呆れた様子で見ていた。

「なんだい?」

 顔をおおったまま返事をする白父。

「お母さんから私を確実に連れて帰ってきてと言われてたのにあんな風に強気にでてきたの?」
「しょうがないだろ。私としても譲れないものだったんだからな」
「じゃあ、もし公が居なくて話がまとまらなくて私が帰らないって言ってたらどうしてたの?」
「それは………」

 白父がまた視線を反らしたので白はため息を吐いた。

「なにも考えてなかったんだ」
「そんなわけじゃ………」
「じゃあどうしたの?」
「萌香にとりあえず説得してもらって、とりあえず家に帰ってきてもらおうと思ってたな」

 その考えに白はまたため息を吐いた。

「萌香さんの説得で私が家に帰ったところで、結局お母さん怒るよね」
「やっぱりそうか~」

 白父は頭を掻いた。

「よかったね。公が話し合いに参加して間を取り持ってくれて」
「本当だな。公君あらためてありがとう」

 白父が頭をさげた。

「いえ。俺がややこしくした一因でもあるのでお礼は必要ないですよ」

 笑顔でそう言う公を見て、白父はうんうんと頷いていた。

「あ~、でも帰ったら今回の話し合いのこと全部お母さんに話すけどね」

 白のその一言に白父は固まり、顔を白くした。

「そ、それは………」
「例え私が黙っていたとしても萌香さんが全部報告するでしょうし」

 白父はバッと振り返って萌香を見つめた。

「はい。奥様からはあったことを全て報告するように言われています。なので、全て録音させていただいています」

 そう言って萌香はポケットから取り出したのはボイスレコーダーを取り出した。

「なっ!」
「あ~あ。これでお父さん確実にお母さんに怒られるよ」

 すると、白父はソファーにもたれかかって真っ白に燃え尽きてしまった。

「しかし、お父さんが障害にならないとなると、障害となるのは………」

 白の視線をうけた薫は公のもとにくると後ろから抱きつき、挑発的な微笑みを白に向けた。
 その微笑みにムカッときた白は少し薫を睨みかえした。

「私以外にも障害はたくさんある。けど、それを気にするってことは、白もまんざらでもないんだ」

 薫の言葉にハッとした白は顔を少し赤くすると公を睨み付けた。

「これはそんなんじゃないんだからね!勘違いしないでよね!」
「ツンデレさんだ~」
「ツンデレですわね」

 舞と夢にツンデレと言われた白はさらに顔を赤くして公を鋭い視線で睨み付けた。
 その光景を眺めながらニコニコしている萌衣のもとへ萌香がやって来た。

「なにかしら?」
「近いうちに1度協会のほうに戻ったほうがいいのではないですか」
「協会、ですか」

 萌衣はどこかめんどくさそうにしていた。

「できれば行きたくはないのですけどね」
「ですが、噂はメイド達の間ではだいぶ広がっていますし、協会のほうにも噂は広まっているでしょうから、こちらから行かなくてもそのうち向こうからくるでしょう。そうなると、公様にも迷惑がかかるのではないですか?」

 そのことも理解している萌衣の表情は難しいものだった。

「そこまでして行きたくないのですか?」
「もちろん」

 間髪入れない萌衣の返事に萌香はため息を吐いた。

「そもそも、野良メイドになる時に協会を抜けるとちゃんと言ってきたはずなのに」
「『そんなの認められるか!』って会長怒ってたじゃないですか」
「そんなの知らないわ」
「知らないって」

 萌香は額に手をあてて呆れていた。

「知らないものは知らないのよ」
「萌衣さんが知らなかったとしても、協会のほうはそう遠くないうちに動き出すと思いますよ」
「困ったわね」

 言葉とは裏腹に全く困った様子ではない萌衣に萌香はなにを言ってもムダだと諦めた。

「とりあえず、忠告はいたしましたので」
「えぇ。ありがとう」

 そうして2人は会話を終わらせると、公達のほうへ視線を向けるのだった。
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