私のための小説

桜月猫

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57話

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「さぁ!みんなが待ちに待った球技大会の日がやって来たよ!」

 始業のチャイムが鳴り終わったと同時に全校生徒を体操服姿で体育館に転移して集めたマスターはテンション高く叫びました。

「ちょっと待て、作者」
「なんだよ」

 待ったをかけられたマスターは不満げに公を見ました。

「なんだよじゃねーよ。なにが待ちに待った球技大会だよ。球技大会があるなんて俺達は知らねーぞ」

 全校生徒の声を代弁するような公の言葉に、全校生徒が頷いた。

「そりゃあ突発の思いつきなんだから、前もっての連絡があるわけないじゃん」

 あっけらかんと言うマスターの言葉に、公は何も言えなくなって額に手をあてました。

「というわけで始まりました球技大会!みんな盛り上がってるかー!」

 マスターがマイクを向けるとまばらながら「イェーイ」という声が返ってきました。

「ノリが悪いな~」

 マスターの言葉に公はため息を吐きました。

「仕方ねーだろ。戸惑ってるんだから」
「え~。球技大会なんて楽しいことをするのに戸惑うのか?」

 マスターは驚きの表情で全員を見ました。

「前もってやるってことがわかってればここまで戸惑わねーよ」

 公の言葉通り、みんなの反応が悪いのはいきなり球技大会が始まったためでした。なので、その戸惑いをこえると、みんなウキウキし始めました。

「それじゃあ再度聞くけど、みんなー!盛り上がってるかー!」
『イェーイ!』

 大多数の生徒からノリのいい返事が返ってきたのでマスターはご満悦の表情をうかべました。

「今日の球技大会の競技は鬼ごっこドッジだ!」

 鬼ごっこドッジがどんな競技かわからない全校生徒はざわざわとし始めました。

「鬼ごっこドッジのルールは基本鬼ごっこと同じで、鬼に捕まったら負けなんだけど、鬼はタッチするかわりにドッジボールの要領でボールを当てないといけない!もちろん、ドッジボールの要領で避けたり受け止めたらセーフ!だから、足が遅い人でも鬼から逃げようとせずにボールを避けるか受け止め続ければ逃げ切れるチャンスは十分あるよ!
 逃げれる範囲は学校の敷地内で、制限時間は放課後のチャイムが鳴る15時まで!お昼休憩はちゃんと取るから心配しないでね!
 あと、もし鬼に捕まったら場合、各学年の成績上位50人は鬼になるけど、それ以外の人は特別教室で苦手教科克服のための特別プリントをしてもらうから!」
『ブー!』

 ほぼ全員からのブーイングがおきました。

「ブーイングするなら夏休みの1日補習にするけど?」

 マスターがそう言った瞬間にブーイングが止み、静かになりました。

「簡単な話、時間内逃げ切ればいいだけなんだから。
 それじゃあ質問ある人」

 すると、蛙が手を上げました。

「はい、蛙」
「もし鬼のボールを受け止めた場合、ボールはどうすればいいんだ?」
「受け止めたボールは投げ捨てると鬼はその場に1分停止するし、ボールを投げ返して当てることが出来たら5分停止するよ。ただし、投げ返したボールを受け止められたらすぐに襲いかかってくるから気をつけてね。
 あと、避けたり、ボールを投げ捨てるか投げ返して当てた場合はボールは鬼の手元に自動で戻るようになってるからね。
 他に質問ある人」

 今度手を上げたのは壱だ。

「はい、壱」
「鬼は誰がするんだ?」
「鬼は俺と」

 マスターが手を叩くと、壇上に黒服の男女20人が現れたので、みんな驚きました。

「この20人。合計21人が最初の鬼だね」
「つまり、最大で171人まで鬼が増える可能性があるということか」
「そういうことだね」
「他に質問は?」

 次に手を上げたのは桜でした。

「はい、桜」
「あんたが変な力を使わないって保証は?」
「執筆しているロマの監視がついてるってのは保証にならないか?」
「そうね。ロマ頼める?」
≪任せてください。マスターの行動は逐一監視します≫
「それに、もし変な力を使ったら、その時はみんなにジュースをおごるさ」
『おぉー!』

 マスターの宣言に少しどよめきがおきました。

「他に質問ある人は?」

 雪が手を上げたした。

「はい、雪」
「特別教室はどこにあるんだい?」
「特別教室へは失格になると自動で転移されるぞ。だから、失格になったから鬼の邪魔をしようとしても無理だからな」

 その言葉を聞いた何人かは舌打ちをしました。

「やっぱりそう考えてるヤツがいたか。残念だったな~」

 マスターが挑発するようにニヤリと笑うと少しブーイングが返ってきました。

「他に質問ある人は?」

 他に手を上げる人はいませんでした。なので、マスターは時計を見ました。

「だったら、開始時間は10分後の8時50分から。それまでの間は自由。だから、とにかく遠くまで逃げてもいいし、見つからないような場所に隠れてもいいし、チームを組んでもいいし、作戦を考えてもいい。とにかく長く逃げ切るにはどうすればいいか考えろ。早くに失格になったら普段の授業と変わらないからな」

 マスターのその言葉にとりあえず全員は体育館から外へと出ていきました。

「どこに逃げるの?」

 薫は隣を走る公へ問いかけました。

「とりあえず、見通しのいい場所かな」

 公と一緒に走っているのは薫と牡丹。他のメンバーは近くに居なかったのでここにはいない。

「見通しのいい場所となると、やっぱり校庭とかかな?」
「それか、10分後にあえて体育館に戻るなんてのもありかもしれないよ」
「そこら辺は鬼の出方を見ながらかな」


          ◇


「さて、10分経ったし、行け」

 マスターの指示を受けて黒服達がボールを手に体育館を出ていきました。その姿を見送ったマスターは笑っています。

≪楽しそうですね、マスター≫
「楽しいに決まってるだろ。なんせ、俺が楽しむためにこの球技大会を始めたんだからな」

 マスターは壇上から降りると入り口の方へ行き、壁に寄りかかりました。

≪生徒達を探しに行かないのですか?≫
「うん。俺の予想が正しいならここで待っていると向こうから来るはずさ」

 それだけ言うと、マスターは黙りこんで気配を消しました。
 鬼の黒服達が出ていって1分後、4人の男子生徒が体育館に堂々と帰ってきました。

「飛んで火に入る夏の虫っと」

 そう言いながらマスターは次々ボールを4人に当てて失格にし、4人は特別教室へと転移されていきました。

「あ~あ。かわいそうに。開始2分と経たずに失格になって特別教室に行くなんて。これであの4人は普段通りの時間、勉強するはめになるのね」

 マスターは泣き真似をし始めました。

≪どうして生徒が帰ってくると思ったんですか?≫

 私が問いかけると、マスターは泣き真似を止めました。

「ドッジボールの要素が入っているとは言ってもこのゲームの基本は鬼ごっこだ。そしたら鬼はスタート地点である体育館にいても意味がない。なんせ、逃げている生徒を探しに行かないといけないからね。だからスタートと同時に鬼は体育館からいなくなる。そして、いなくなった鬼がすぐに体育館に戻ってくるとは考えにくい。そう考えれば、最初のうちは体育館は安全な場所になる。
 そう考える生徒が少なからずいると思ったからここで待っていたら見事に予想が的中したわけさ」
≪なるほど≫
「さてと、あと何人帰ってくるかな~」

 マスターはまた静かに気配を消して生徒達が体育館に帰ってくるのを待ち始めました。
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