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その後と自業自得のキール
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祈健会当日。
用意された衣装でおめかしをした子どもたちに皆メロメロになった。
だって!本当に!!かわいいんですもの!!!
会が始まり、皆にぎゅーーーっと抱きしめられて、二人は大喜び。
さらに二人が大好きなかぼちゃのピューレがご飯にでてレジスはごろごろ転がりながら喜んだ。あああ、せっかくの洋服が……。でも、動き回るのも成長の証拠よ!とお義母さまが言うから好きにさせておく。
皆の笑い声と子どもたちの笑顔でとても和やかな雰囲気の中、家令が夫の帰宅を告げた。
キールは昨日から愛人と過ごしていた名残か、その表情にはどこか締まりのない、満足げな色が浮かんでいる 。
「やあ、遅くなってしまった。仕事が立て込んでいてね」
白々しい嘘を吐きながら部屋に入ってきた夫は、そこに座る父・クリストフの姿を見て、一瞬で顔を強張らせました。元騎士として名を馳せたお義父さまの眼光は、鋭い剣のように夫を射抜く。視線で人が殺せそう、というのはこういうのをいうんでしょうね。
「仕事、だと?」
お義父さまの地を這うような低い声が響きました。
「昨日、ここではない家に呼びつけられた馬車は、お前の仕事場とは全く違うところにお前を送り届けたと聞く。リコリスが命がけで産んだ双子のために、神の加護を祈るこの佳き日に、お前はどこで何をしていた?」
「それは……その……」
しどろもどろになるキールに、追い打ちをかけるようにお義母様が冷ややかな視線を送る。
「キール。」
お義母さまの声が静かに響きます。
「お前は私たちがリコリスさんに感謝すべきだとあれほど話していたのに、全く理解していなかったようね」
「父上、母上! 私はただ、ベルデ家の格を……!」
「格?生まれたばかりの子どもと妻を放って遊びまわっている男が何を言うの。あなたのいう格が爵位ならば、身の丈以上の支援をした結果伯爵になった自分の家は恥ずかしくないの?」
黙り込む夫。もともとベルデ家はお義母さまの系譜。実家への立て直しへの思いは一入だろう。
「……キール、領地に来い」
お義父さまが静かに言う。
「一から根性を叩き直してやる。二度とリコリスと子どもたちに、そのような腑抜けた顔を見せるな」
それから数カ月。
領地に連れていかれたキールは、お義父さまに死ぬほど働かせられているらしい。
「大丈夫。私は騎士だった。死ぬときはどの程度か熟知している」
ニコリ、ではなくニヤリと笑うお義父さま。
素敵!とっても悪役顔ですわ!
お義父さまたちはあの後からちょこちょここちらに遊びに来てくれる。
たくさん遊んでくれるので、子どもたちもお二人がとても大好き。
ユフィは一生懸命ハイハイして、レジスは一生懸命転がって近づく。この子は歩く気はないようで、最近は回転が速くなっている気がする。
さらに数週間後。今日は久しぶりに夫が帰ってくる日。いや、帰れる日だ。
領地ではお義父さまにしっかりと根性を叩き直されているようだけど、子どもたちとの日々が楽しすぎて正直出迎えるのもおっくうだ。まぁ、今日はお義母さまもいらっしゃるから、それだけは救いだ。
領地ではかなり頑張っているから優しくした方が?いや自業自得だしね。うん。
家令から夫たちが到着ユフィと一緒に出迎える。
「おか「いあっしゃいませー」……」
出迎えの挨拶をしようとしたら、ユフィの可愛い声が重なる。
声は可愛いけれど、内容は残酷だ。
確かに、赤ちゃんの頃から遊びまわっていたから接点はほぼなかったし、今はずっと領地だからユフィにとっては「知らないおじさん」よね……。
「おかえりなさいませ、旦那様」
気を取り直して一礼する。
「あ、ああ。父上は……あんなに容赦のない方だったのだな……。それより、その、子どもたちは……」
夫がユフィにおずおずと手を伸ばす。彼なりに、離れている間に子どもの尊さに気づいたのかもしれない。あるいは、先ほどの一言で、今更ながらに子どもと仲良くしたいと思ったのだろうか。
「ユフィーナ。パパですよ」
私の言葉にユフィが夫を見る。ちょうどその時、
「どうした、こんなところで立ち止まって。さっさと中に入らんか」
「じーじ!おかえいなさいー」
ぱぁぁぁ!と顔を輝かせてユフィがお義父さまを出迎える。
あ、夫が涙目ですわ。
そりゃあ自分は「いらっしゃい」でお義父さまは「おかえりなさい」だものね。
でもしょうがないわ、過ごした時間が違うもの!
夫はいわば「見習い家族」。時間と愛と、絆がないと家族にはなれないわ!
いま、ダイニングにはこの前レジスがクレヨンで描いた絵が飾られてある。
義両親、私、レジスとユフィ。そして乳母たち。
廊下には結婚して間もない時の肖像画が飾られてあるが、どこか冷たいそれとは違い、レジスの描いた絵は温かな家族の姿が表現されている。
「家族の肖像画」に、夫が入る日は来るのかしら。
それは今後の夫の活躍にご期待、ってね!
**********************
完結です。
よく舌足らずな子の描写として「です」が「でしゅ」になったりしますが、私の周りにはいないんですよね。
自分も含めて、特定の行が別の行に置き換わることが多いなぁと。
私が子どもの頃は、ら行がいえずあ行になってたんですよね。
さようなら、が「さようなあー!」みたいな。
なのでユフィもおなじくラ行がいえない子になりました。
レジス?肉体言語です。ジェスチャー!めっちゃ手足がわさわさするよ!
キールが「見習い家族」から昇格され、肖像画のはしっこに描かれる日はくるのか。
くるといいね?
用意された衣装でおめかしをした子どもたちに皆メロメロになった。
だって!本当に!!かわいいんですもの!!!
会が始まり、皆にぎゅーーーっと抱きしめられて、二人は大喜び。
さらに二人が大好きなかぼちゃのピューレがご飯にでてレジスはごろごろ転がりながら喜んだ。あああ、せっかくの洋服が……。でも、動き回るのも成長の証拠よ!とお義母さまが言うから好きにさせておく。
皆の笑い声と子どもたちの笑顔でとても和やかな雰囲気の中、家令が夫の帰宅を告げた。
キールは昨日から愛人と過ごしていた名残か、その表情にはどこか締まりのない、満足げな色が浮かんでいる 。
「やあ、遅くなってしまった。仕事が立て込んでいてね」
白々しい嘘を吐きながら部屋に入ってきた夫は、そこに座る父・クリストフの姿を見て、一瞬で顔を強張らせました。元騎士として名を馳せたお義父さまの眼光は、鋭い剣のように夫を射抜く。視線で人が殺せそう、というのはこういうのをいうんでしょうね。
「仕事、だと?」
お義父さまの地を這うような低い声が響きました。
「昨日、ここではない家に呼びつけられた馬車は、お前の仕事場とは全く違うところにお前を送り届けたと聞く。リコリスが命がけで産んだ双子のために、神の加護を祈るこの佳き日に、お前はどこで何をしていた?」
「それは……その……」
しどろもどろになるキールに、追い打ちをかけるようにお義母様が冷ややかな視線を送る。
「キール。」
お義母さまの声が静かに響きます。
「お前は私たちがリコリスさんに感謝すべきだとあれほど話していたのに、全く理解していなかったようね」
「父上、母上! 私はただ、ベルデ家の格を……!」
「格?生まれたばかりの子どもと妻を放って遊びまわっている男が何を言うの。あなたのいう格が爵位ならば、身の丈以上の支援をした結果伯爵になった自分の家は恥ずかしくないの?」
黙り込む夫。もともとベルデ家はお義母さまの系譜。実家への立て直しへの思いは一入だろう。
「……キール、領地に来い」
お義父さまが静かに言う。
「一から根性を叩き直してやる。二度とリコリスと子どもたちに、そのような腑抜けた顔を見せるな」
それから数カ月。
領地に連れていかれたキールは、お義父さまに死ぬほど働かせられているらしい。
「大丈夫。私は騎士だった。死ぬときはどの程度か熟知している」
ニコリ、ではなくニヤリと笑うお義父さま。
素敵!とっても悪役顔ですわ!
お義父さまたちはあの後からちょこちょここちらに遊びに来てくれる。
たくさん遊んでくれるので、子どもたちもお二人がとても大好き。
ユフィは一生懸命ハイハイして、レジスは一生懸命転がって近づく。この子は歩く気はないようで、最近は回転が速くなっている気がする。
さらに数週間後。今日は久しぶりに夫が帰ってくる日。いや、帰れる日だ。
領地ではお義父さまにしっかりと根性を叩き直されているようだけど、子どもたちとの日々が楽しすぎて正直出迎えるのもおっくうだ。まぁ、今日はお義母さまもいらっしゃるから、それだけは救いだ。
領地ではかなり頑張っているから優しくした方が?いや自業自得だしね。うん。
家令から夫たちが到着ユフィと一緒に出迎える。
「おか「いあっしゃいませー」……」
出迎えの挨拶をしようとしたら、ユフィの可愛い声が重なる。
声は可愛いけれど、内容は残酷だ。
確かに、赤ちゃんの頃から遊びまわっていたから接点はほぼなかったし、今はずっと領地だからユフィにとっては「知らないおじさん」よね……。
「おかえりなさいませ、旦那様」
気を取り直して一礼する。
「あ、ああ。父上は……あんなに容赦のない方だったのだな……。それより、その、子どもたちは……」
夫がユフィにおずおずと手を伸ばす。彼なりに、離れている間に子どもの尊さに気づいたのかもしれない。あるいは、先ほどの一言で、今更ながらに子どもと仲良くしたいと思ったのだろうか。
「ユフィーナ。パパですよ」
私の言葉にユフィが夫を見る。ちょうどその時、
「どうした、こんなところで立ち止まって。さっさと中に入らんか」
「じーじ!おかえいなさいー」
ぱぁぁぁ!と顔を輝かせてユフィがお義父さまを出迎える。
あ、夫が涙目ですわ。
そりゃあ自分は「いらっしゃい」でお義父さまは「おかえりなさい」だものね。
でもしょうがないわ、過ごした時間が違うもの!
夫はいわば「見習い家族」。時間と愛と、絆がないと家族にはなれないわ!
いま、ダイニングにはこの前レジスがクレヨンで描いた絵が飾られてある。
義両親、私、レジスとユフィ。そして乳母たち。
廊下には結婚して間もない時の肖像画が飾られてあるが、どこか冷たいそれとは違い、レジスの描いた絵は温かな家族の姿が表現されている。
「家族の肖像画」に、夫が入る日は来るのかしら。
それは今後の夫の活躍にご期待、ってね!
**********************
完結です。
よく舌足らずな子の描写として「です」が「でしゅ」になったりしますが、私の周りにはいないんですよね。
自分も含めて、特定の行が別の行に置き換わることが多いなぁと。
私が子どもの頃は、ら行がいえずあ行になってたんですよね。
さようなら、が「さようなあー!」みたいな。
なのでユフィもおなじくラ行がいえない子になりました。
レジス?肉体言語です。ジェスチャー!めっちゃ手足がわさわさするよ!
キールが「見習い家族」から昇格され、肖像画のはしっこに描かれる日はくるのか。
くるといいね?
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