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誤解がとける
ユフィーナはお義父さまに、ジストはお義母さまに抱っこされてニッコニコ。
でも、なんでだろう。
言葉はまだしゃべれないはずなのに、二人の背後に
「権力者、ゲットだぜ☆」
の文字が見える気がする!
子どもたちと遊んでいたら、あっという間に時間は過ぎる。
夕食を三人でとり、今は食後の紅茶で一息を入れている最中。
やおら、姿勢を正したお義父さまとお義母さまが揃って頭を下げられた。
「改めて、我が伯爵家を立て直す手伝いをしてくれてありがとう。更に、あんなに可愛い孫たちに会わせてくれて感謝しかない」
「男爵家にお世話にならないと駄目なような我が家に嫁いできてくれてありがとう。リコリスさんならもっと条件の良い婚姻を出来たでしょう?伝統しか取り柄のない我が家ですから、貧乏くじを引かされたと思われていても仕方ないと思っているの」
え?
思っていた反応と違う。
子どもたちへの対応はとても優しかったので、「卑しい男爵家でも孫を生んだことは褒めてやる!」くらい言われるかなと思っていたのだけど……。
夫が再三再四言っていた「両親が男爵家からの嫁は恥といっていた」というのはなんなか。
……それとなく聞いてみよう!
「いえ、国に尽くす忠臣であるベルデ家に嫁げて光栄ですわ。ですが、慣例を破るかたちで男爵家を娶ることになり、伯爵家に恥をかかせたのではと心配だったのです。キール様はそうお考えのようだったので……。ですので、嫁いできてよかったと言っていただけますと気持ちが軽くなりますわ」
「いや、逆だ。高位貴族は下の者の模範となるべき存在。それなのに、男爵家の支援がないと家を立て直せないとは非常に恥ずかしいことだ」
あーーー。納得。そういうことね。
恥は恥でも「男爵家を嫁に貰ったこと」じゃなくて「男爵家に頼らないといけない自分たち」ということか。
え、すごくまともな考え方だし、どうしてそんな誤解をした夫よ。
……まぁ、彼自身の偏見で解釈がねじ曲がったんだろうな。はぁ。
「リコリスさんと実家の方々のおかげで人も物資もうまく流れるようになったわ。クラヴィ商会はすごいわね、私達があれほど頭を悩ませていた問題をすぐさま解決するのだから」
お義母さまが言うのは「職人問題」だ。領地の主な産業は鉱石の加工なのだが、頑固な親方が多いので、叱責に耐えかねてやめる新人が続出。なかなか技術が若い人に伝承されずにいた。
また、職人は無茶な要求を当然のようにしてくる“お貴族サマ”を疎んでいることが多い。
そこでうちだ。お父様はそういう人たちと仲良くなるのが非常にうまい。
「貴族の社交場がダンスホールなら、庶民の社交場はビアホールだ」
という父の行動力と人脈は本当にすごい。アルコールの強さだけがウリの粗悪なエールだって一緒に飲むし、何なら歌う。そういうところで仲良くなり、愚痴を聞き出し、対応するのだ。今回もそこで培った人脈が大いに発揮された形となったので、誇らしい限りだ。
「こんなに良くしていただいているのに、キールときたら……」
お義母さまが情けない、とため息をつく。
「家令から、キールの行動は聞いている。必要最低限の仕事しかせず、遊び惚けていると」
お義父さまの怒気がすごい。
「領地が手を離せずに、なかなか愚息に対応できずに申し訳ない」と再度頭を下げられる。
「ベルデ家は立て直しつつあるとはいえ、まだ財政的に豊かとはいえない。また、子どもが生まれたならその子たちが不自由ないようにするべきで、遊ぶ金など1ギルたりともないはずだ」
うん、それは本当にそう思う。
もちろんある程度のお金は動かしてもいいけれど。あなたの実家を立て直している状況なの分かってる?と言いたい所がたくさん。
「今考えているのは、キールを領地に連れ帰って一から叩き直すことだ。もちろん労働もしてもらい、そこで得た金銭は、リコリスさんの渡す形にしたい。リコリスさんならきちんと家のため、子どもたちのために使ってくれるだろうからな。……愚息と違って」
今後の方針を話した後、話題は自然と子どもたちの話に移る。
二人ともキリっとした表情は変わらないものの、雰囲気が一気に柔らかくなる。
無表情。本当にこの夫婦は表情筋があまり仕事をしないようだ。
お義母さまに一緒にカフェに行きましょうといわれて二倍に膨れ上がったガイドブックを見た時は笑ってしまった。
“いちごが好きなら”“チョコレートが好きなら”と、私の好みを優先させようとしてくれているのも付箋を見ればわかる。
ああ、とても優しい人だ。こんな素敵な人が私の「おかあさま」なのね。
行きたいカフェ、子どもたちのベビー服を依頼するブティック……
お義母さまがたくさん提案してくれた。乳母たちとは違う、対等な立場で子どもたちのことを心から愛する姿勢。
これが母親……いや、家族か。
少しふわふわした気持ちのまま、この日はぐっすり眠れた。
でも、なんでだろう。
言葉はまだしゃべれないはずなのに、二人の背後に
「権力者、ゲットだぜ☆」
の文字が見える気がする!
子どもたちと遊んでいたら、あっという間に時間は過ぎる。
夕食を三人でとり、今は食後の紅茶で一息を入れている最中。
やおら、姿勢を正したお義父さまとお義母さまが揃って頭を下げられた。
「改めて、我が伯爵家を立て直す手伝いをしてくれてありがとう。更に、あんなに可愛い孫たちに会わせてくれて感謝しかない」
「男爵家にお世話にならないと駄目なような我が家に嫁いできてくれてありがとう。リコリスさんならもっと条件の良い婚姻を出来たでしょう?伝統しか取り柄のない我が家ですから、貧乏くじを引かされたと思われていても仕方ないと思っているの」
え?
思っていた反応と違う。
子どもたちへの対応はとても優しかったので、「卑しい男爵家でも孫を生んだことは褒めてやる!」くらい言われるかなと思っていたのだけど……。
夫が再三再四言っていた「両親が男爵家からの嫁は恥といっていた」というのはなんなか。
……それとなく聞いてみよう!
「いえ、国に尽くす忠臣であるベルデ家に嫁げて光栄ですわ。ですが、慣例を破るかたちで男爵家を娶ることになり、伯爵家に恥をかかせたのではと心配だったのです。キール様はそうお考えのようだったので……。ですので、嫁いできてよかったと言っていただけますと気持ちが軽くなりますわ」
「いや、逆だ。高位貴族は下の者の模範となるべき存在。それなのに、男爵家の支援がないと家を立て直せないとは非常に恥ずかしいことだ」
あーーー。納得。そういうことね。
恥は恥でも「男爵家を嫁に貰ったこと」じゃなくて「男爵家に頼らないといけない自分たち」ということか。
え、すごくまともな考え方だし、どうしてそんな誤解をした夫よ。
……まぁ、彼自身の偏見で解釈がねじ曲がったんだろうな。はぁ。
「リコリスさんと実家の方々のおかげで人も物資もうまく流れるようになったわ。クラヴィ商会はすごいわね、私達があれほど頭を悩ませていた問題をすぐさま解決するのだから」
お義母さまが言うのは「職人問題」だ。領地の主な産業は鉱石の加工なのだが、頑固な親方が多いので、叱責に耐えかねてやめる新人が続出。なかなか技術が若い人に伝承されずにいた。
また、職人は無茶な要求を当然のようにしてくる“お貴族サマ”を疎んでいることが多い。
そこでうちだ。お父様はそういう人たちと仲良くなるのが非常にうまい。
「貴族の社交場がダンスホールなら、庶民の社交場はビアホールだ」
という父の行動力と人脈は本当にすごい。アルコールの強さだけがウリの粗悪なエールだって一緒に飲むし、何なら歌う。そういうところで仲良くなり、愚痴を聞き出し、対応するのだ。今回もそこで培った人脈が大いに発揮された形となったので、誇らしい限りだ。
「こんなに良くしていただいているのに、キールときたら……」
お義母さまが情けない、とため息をつく。
「家令から、キールの行動は聞いている。必要最低限の仕事しかせず、遊び惚けていると」
お義父さまの怒気がすごい。
「領地が手を離せずに、なかなか愚息に対応できずに申し訳ない」と再度頭を下げられる。
「ベルデ家は立て直しつつあるとはいえ、まだ財政的に豊かとはいえない。また、子どもが生まれたならその子たちが不自由ないようにするべきで、遊ぶ金など1ギルたりともないはずだ」
うん、それは本当にそう思う。
もちろんある程度のお金は動かしてもいいけれど。あなたの実家を立て直している状況なの分かってる?と言いたい所がたくさん。
「今考えているのは、キールを領地に連れ帰って一から叩き直すことだ。もちろん労働もしてもらい、そこで得た金銭は、リコリスさんの渡す形にしたい。リコリスさんならきちんと家のため、子どもたちのために使ってくれるだろうからな。……愚息と違って」
今後の方針を話した後、話題は自然と子どもたちの話に移る。
二人ともキリっとした表情は変わらないものの、雰囲気が一気に柔らかくなる。
無表情。本当にこの夫婦は表情筋があまり仕事をしないようだ。
お義母さまに一緒にカフェに行きましょうといわれて二倍に膨れ上がったガイドブックを見た時は笑ってしまった。
“いちごが好きなら”“チョコレートが好きなら”と、私の好みを優先させようとしてくれているのも付箋を見ればわかる。
ああ、とても優しい人だ。こんな素敵な人が私の「おかあさま」なのね。
行きたいカフェ、子どもたちのベビー服を依頼するブティック……
お義母さまがたくさん提案してくれた。乳母たちとは違う、対等な立場で子どもたちのことを心から愛する姿勢。
これが母親……いや、家族か。
少しふわふわした気持ちのまま、この日はぐっすり眠れた。
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