家族の肖像~父親だからって、家族になれるわけではないの!

みっちぇる。

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Side 義両親

 Side クリストフ

 クリストフ=ベルデ。
 どんな強敵にあってもひるまず剣をふるい続けた私が。
 現在、小さな天使相手に固まってしまっている。

 キールが生まれたのは隣国と戦争が起こった直後だった。
 戦争で父を失い、自らも戦地へ赴きながら爵位の継承や後処理で多忙を極めた。
 遠征に次ぐ遠征、書類に追われ王宮で寝泊まり。妻子のいる領地どころか王都のタウンハウスにすら帰れていなかった。
 出来る限り手紙を出し、家や妻、子どもの様子をうかがっていたものの、ようやっと領地に戻れるようになったときには既にキールは6歳。「お帰りなさい、お父様」と立派に言える年で、ちゃんと人間だった。

「あらあら、ユフィはおじい様が好きなのね」
 リコリスさんがベビーベッドから孫娘を持ち上げる。その間、じっと孫娘の目線は私から動かない。
 そっと、ふとももに乗せられる孫娘。
 は?なんだ?軽すぎないか内臓はつまっているのか?綿とかじゃないよな?
 孫娘が自分の足の上でもぞもぞし、大きな目でにこにこと見上げてきているからである。
 未知との遭遇の瞬間である。
 ああ、大丈夫か?私の顔、怖くないだろうか。泣かないのか?
 ああ、そんなに見上げたら首が折れないのか?大丈夫なのか??
「なんだこの生き物は!骨は?骨はあるのか!?ふにゃふにゃだぞ!?」

 ――混乱の極みである。

 うーぁ、うーぁ、と手を伸ばしてくる。反射的にそっと手を伸ばすと、指を握る手は驚くほど小さい。
 五本まとめても自分の小指の一関節より小さいのではないか?という手で、一生懸命。
 そのまま口元に持っていかれ、唾液でべたべたになる。
 普通なら汚いと思う行為だが、不思議と心が温かくなった。

 もちろん、小さな子どもを見たことがある。
 しかし、大柄長身の立派な体躯、鋭い目線、眉間に刻まれた深い皺により、子どもは自分を見たらとりあえず泣く。逃げる。だから自分もできるだけ近づかないようにしている。
 だからこそ、こんな風に近づかれ、にこにこ笑いかけられることなんてなかったのである。

 孫とは、こんなに可愛いものなのか!



 Side アリディー
 クリストフの妻にしてキールの母、アリディー。
 こちらも平常心ではいられていない。

 ずっと。
 ずっとずっとずっとずーーーーーっと。
 孫が生まれてからずっと会いに行きたいと思っていたのだ。
 しかし周りから「首が座るまで行ってはダメ」「産後のきつい時に姑が来るとか鬱」といわれまくり、我慢していたのだ。
 そんな時にリコリスさんから「今度祈健会をするので、ぜひお越しください」と連絡があった。
 キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
 待ってました!!とばかりに喜び勇んで飛んできた。
 孫ズの好みが分からないので、リコリスさんと一緒に服を買いまくるのだ。おもちゃも見たい。
 リコリスさんの妊娠が分かってから、自分の服飾予算から少しずつためた孫用へそくりを放出する時!
 もちろん、一番の功労者は産んでくれたリコリスさんなのだから、彼女を一等甘やかさなくてはいけない。自分のアフタヌーンスイーツをずっと削って用意したお小遣い、王都の美味しいスイーツ店もガイドブックで予習済み。準備は万端である!

 キールが生まれた時は戦争中で節制をしなければいけなかった。でも、今は落ち着いていて物資も戦前の水準に戻っている。
 新婚家庭に、妊婦に、干渉はしてはいけないと我慢していたが、嫁も孫も着飾りたくて仕方ない。孫が双子、しかも男女とか最高か!うちの嫁GJ!と脳内はそればかりである。

 タウンハウスに到着し、子どもたちのプレイルームに通されると、眼前には楽園が広がっていた。
 並んだベビーべッドにいる可愛い天使たちと目が合う。え、この子たち、尋常じゃなく可愛いわね????うちの嫁女神だったの?女神だから天使が生まれたのね?アリディー納得!

 ユフィーナちゃんはな・ぜ・か夫を気に入ったらしく、リコリスさんにベビーベッドから出してもらうとあっち!あっち!というように夫を指さし、夫の足の上で上機嫌に笑っていた。

 キィ!羨ましい!

 ジスト君はでん!とベビーベッドに座ったまま動かない。大物の予感がするわね!
 リコリスさんが手を伸ばしても、イヤイヤと首を振り、ベッドから出ようとしない。
 リコリスさんは「緊張しているのかもしれませんね」と言っているけれど、もしかして嫌われた……?
 私、ツリ目であまり表情が変わらないから怖がられやすいのよね……。いやでももっとコワモテの夫はユフィーナちゃんに気に入られている。
 何が悪いのかしら……としょんぼりしちゃう。
 抱っこしたいけれど、無理やりしたら嫌われるものね。これは時間をかけてお近づきにならなくては!
 ふんす!と拳をにぎりしめて気合を入れる。
 ……?
 視線を感じる。振り返ればジスト君と目が合う。
 すすす、と左に行けば、ジスト君の目も私を追ってくる。
 これは興味を持ってもらえているのでは!?
 ゆっくりベビーベッドに近づく。ジスト君の目は私から動かない!
 じーっと目をみつめられ、ちっちゃな手が私の眼もとに伸びてくる。
 ジスト君の目は、私と同じ琥珀色。キースは夫と同じ青、リコリスさんは綺麗な赤だから、隔世遺伝で私の色が出たらしい。
 自分と同じ色が珍しいのか、一生懸命手を伸ばしてくる。
「リコリスさん、抱っこしてもいいかしら?」
「もちろんです」
 細心の注意をはらって抱き上げる。今回はイヤイヤはせず、おとなしく私の腕におさまった。
「ジストはお義母さまにそっくりですね」
 確かにレジス君は目の色だけでなく、ツリ目なところも似ているのだ。
 でもリコリスさんの大きな目も引き継いでいるから、きつさは感じない。

 ぺち、と小さなもみじの手が目元にあたる。
 そして、ジスト君の顔がふにゃりと笑う。

「まぁまぁまぁ!!!!!!まぁまぁまぁまぁまぁ!!!!!!かーわーいーいー!」
 天使よーーーーー!
 私がばぁばですよーーーー!人間でごめんなさいねぇぇぇ!!!
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