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それぞれの幸せを求めて③ ※後半カイン視点
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「……という話をしてきたよ」
「慰謝料をはらうようになって、我が国からは最小限に、あちらからシェリーには最大限で話をしてくれたのよね?」
「もちろん」
にこにこにこにこ。
やはりこの兄妹の血はつながっているなぁと実感。
でも、慰謝料が入るのはありがたい。心配をかけた分、少しでも家の役に立てるなら嬉しい。本当にマリアとカイン様には感謝してもし足りない。
「改めまして、カイン殿下、マリアクレイズ王女様。この度はご厚情を賜り幸甚の至りです」
立ち上がり、心からの感謝を込めて最高(※自分比)のカーテシーをする。少しでもこの気持ちが伝わると嬉しい。
「どういたしまして。といっても、こちらもマリアのやらかしをフォローしただけだから、いい方は悪いけどついでのようなものだから気にしないでくれ」
「そうよ。さぁ、顔をあげて。良かったわねお兄様、マリアの可愛いつむじが見られて。どうせ頭が上がらなくなるのは兄様なのだからもう二度と見られない光景よ」
「えっ」
体を起こすと笑顔の二人が私を見ていた。
ああ、本当に私は幸せ者だ。
「今回、お二人には感謝してもしきれません。今、これだけ心穏やかに過ごせているのはお二人のお力によるものです」
「ふふ、親友を守るのは当然よ!」
「でもね、マリア。あの時、マリアが来てくれて泣きそうなほど嬉しかったの。何かお礼がしたいわ。といっても、香水とかを贈るくらいしかできないから、代わり映えしないのだけど」
我が家が誇れるのは香水やお香など香りを専門とする事業。だから誕生日とかに何度も贈っているものだから、お礼としては弱いかもしれない。でも、自信をもって一国の王女に贈ることができるのはこれしかないの……。
「今はラベンダーの季節なので、リネンにつけるものはどうかな。よく眠れるようになるから私も使っているの」
「シェリーと同じならそれがいいわ!でも、お兄様と同じは嫌だから、お兄様の香水はドクダミで作ってくれる?」
「まって? お兄ちゃんが臭くなるよ!?」
「既にうさん臭いのですからあんまり変わりませんわ」
「うーん。上手くいくか分からないけど、マリアのリクエストなら頑張って作るね」
「頑張るところ間違えないで欲しいな!」
え、でもマリアの希望なら叶えたいしなぁ。
イチからの研究になると時間がかかる=マリアとの時間が減ると分かったマリアによって却下となった。でも確かに、香水というより殺虫剤ができそうよね……。
他に何かいいもの考えよう!
「さて、今後についてなんだけれど」
紅茶を一口飲んで、カイン様がにこやかに話し始める。
さすがね、所作がこの上なく美しいわ!
「王家と話は付けたけれど、しばらく社交界は騒がしいだろう。シェリス嬢も無責任な噂が耳に入るのは嫌だろうし、ここは落ち着くまで我が国に来ないか?」
え、私がマリアの国に?
「良い案ね!さっそく手配しましょう!」
マリアが嬉しそうに抱き着いてくる。
「コルベイン伯爵に話は通してある。伯爵はシェリル嬢次第と言っていたよ。少しでも離れるのは寂しいが、娘の気持ちを最優先にしたい、と。……愛されているね」
「はい、自慢の家族ですわ。では、お願いいたします。よろしくね、マリア」
「ええ!」
にこにこと笑うマリアは本当に可愛い。
よーし!そうと決まれば準備ね! 何を持っていこうかしら? マリアの好きなおやつは絶対準備しなくちゃ!
***************************
話すスピード、抑揚、高さ。周りが聞き取りやすいように常に意識をしろ。
話し方。威圧感を与えぬように、けれど舐められないように気をつけろ。
好きな食べ物は悟られないように。バレたらそれに毒を盛られる可能性が上がる。
身なりには気をつけろ。王族としての品位を保ちつつ、無駄に華美なのは必要ない。あくまで税金であることを忘れるな。
友人は選べ。ただし、派閥や爵位には重々配慮白しろ。
小さい時から叩き込まれる内容。
「カイン」ではなく「皇太子」としての振る舞いを常に求められる日々。
意識がある時は常に気をはらねばならない。
その点、マリアと一緒にいるのは非常に心地よい。
あの子は基本的にシェリス嬢かそれ以外かで分けている。
それ以外には毛ほども興味がない。だからこそ、私がきちんとしていようが気を抜いていようが全く気にしないのだ。
シェリス嬢もまた変わった子だ。
マリアの親友というのは彼女が思う以上に力がある。
王族と仲が良いと、その兄弟とも縁ができやすい。むしろそれが目的で近づく女性のなんと多いこと。
マリア以外の妹の“友人”は、妹をダシにしてなんとか王子たちと縁を繋ごうと必死な女性ばかり。王子も、仲の良い友人だと思っていたら妹をゴリ押しされるなんてこともザラにある。
正直、面倒なことこの上ないが、仕方のないことだとは思っている。
しかし、シェリス嬢にとって私は、どこまでいっても「親友のお兄さん」でしかない。
親友の家族だから仲良くするけれど、そこに媚は一切ない。
もしシェリス嬢が他の女性のような打算的な行動をとる人物ならば、マリアはあそこまで傾倒しなかっただろう。
きちんとした感謝をして、それだけ。
脱水症状になった時に水を与えられたとしよう。命の恩人だと感謝をしても、その後与えられるのが泥水だったとしたら。距離を取るのが普通だし、そのあたりの引き際はきちんと弁えている子だ。
しかし、シェリス嬢はそうではなかった。マリアを、ただの友人として扱うのだ。
例えマリアが王女じゃなくても、なんなら自分より下の身分でも今と同じように笑いかけるだろう。彼女が好きなのは”マリアクレイズ“という人間なのだから。
だからこそ、思い出ではなくシェリス嬢の存在そのものがマリアにとっての宝物となったのだろう。
打算の中で生きている私達のような者からしたら、この上なく心惹かれる存在だ。
私にとっても大切な存在となるかは……これからのお楽しみ、だな。
____________________________
アベル(シェルス兄) 「やだああああ!妹に変なのがちかづいてるううううぅ!」
「慰謝料をはらうようになって、我が国からは最小限に、あちらからシェリーには最大限で話をしてくれたのよね?」
「もちろん」
にこにこにこにこ。
やはりこの兄妹の血はつながっているなぁと実感。
でも、慰謝料が入るのはありがたい。心配をかけた分、少しでも家の役に立てるなら嬉しい。本当にマリアとカイン様には感謝してもし足りない。
「改めまして、カイン殿下、マリアクレイズ王女様。この度はご厚情を賜り幸甚の至りです」
立ち上がり、心からの感謝を込めて最高(※自分比)のカーテシーをする。少しでもこの気持ちが伝わると嬉しい。
「どういたしまして。といっても、こちらもマリアのやらかしをフォローしただけだから、いい方は悪いけどついでのようなものだから気にしないでくれ」
「そうよ。さぁ、顔をあげて。良かったわねお兄様、マリアの可愛いつむじが見られて。どうせ頭が上がらなくなるのは兄様なのだからもう二度と見られない光景よ」
「えっ」
体を起こすと笑顔の二人が私を見ていた。
ああ、本当に私は幸せ者だ。
「今回、お二人には感謝してもしきれません。今、これだけ心穏やかに過ごせているのはお二人のお力によるものです」
「ふふ、親友を守るのは当然よ!」
「でもね、マリア。あの時、マリアが来てくれて泣きそうなほど嬉しかったの。何かお礼がしたいわ。といっても、香水とかを贈るくらいしかできないから、代わり映えしないのだけど」
我が家が誇れるのは香水やお香など香りを専門とする事業。だから誕生日とかに何度も贈っているものだから、お礼としては弱いかもしれない。でも、自信をもって一国の王女に贈ることができるのはこれしかないの……。
「今はラベンダーの季節なので、リネンにつけるものはどうかな。よく眠れるようになるから私も使っているの」
「シェリーと同じならそれがいいわ!でも、お兄様と同じは嫌だから、お兄様の香水はドクダミで作ってくれる?」
「まって? お兄ちゃんが臭くなるよ!?」
「既にうさん臭いのですからあんまり変わりませんわ」
「うーん。上手くいくか分からないけど、マリアのリクエストなら頑張って作るね」
「頑張るところ間違えないで欲しいな!」
え、でもマリアの希望なら叶えたいしなぁ。
イチからの研究になると時間がかかる=マリアとの時間が減ると分かったマリアによって却下となった。でも確かに、香水というより殺虫剤ができそうよね……。
他に何かいいもの考えよう!
「さて、今後についてなんだけれど」
紅茶を一口飲んで、カイン様がにこやかに話し始める。
さすがね、所作がこの上なく美しいわ!
「王家と話は付けたけれど、しばらく社交界は騒がしいだろう。シェリス嬢も無責任な噂が耳に入るのは嫌だろうし、ここは落ち着くまで我が国に来ないか?」
え、私がマリアの国に?
「良い案ね!さっそく手配しましょう!」
マリアが嬉しそうに抱き着いてくる。
「コルベイン伯爵に話は通してある。伯爵はシェリル嬢次第と言っていたよ。少しでも離れるのは寂しいが、娘の気持ちを最優先にしたい、と。……愛されているね」
「はい、自慢の家族ですわ。では、お願いいたします。よろしくね、マリア」
「ええ!」
にこにこと笑うマリアは本当に可愛い。
よーし!そうと決まれば準備ね! 何を持っていこうかしら? マリアの好きなおやつは絶対準備しなくちゃ!
***************************
話すスピード、抑揚、高さ。周りが聞き取りやすいように常に意識をしろ。
話し方。威圧感を与えぬように、けれど舐められないように気をつけろ。
好きな食べ物は悟られないように。バレたらそれに毒を盛られる可能性が上がる。
身なりには気をつけろ。王族としての品位を保ちつつ、無駄に華美なのは必要ない。あくまで税金であることを忘れるな。
友人は選べ。ただし、派閥や爵位には重々配慮白しろ。
小さい時から叩き込まれる内容。
「カイン」ではなく「皇太子」としての振る舞いを常に求められる日々。
意識がある時は常に気をはらねばならない。
その点、マリアと一緒にいるのは非常に心地よい。
あの子は基本的にシェリス嬢かそれ以外かで分けている。
それ以外には毛ほども興味がない。だからこそ、私がきちんとしていようが気を抜いていようが全く気にしないのだ。
シェリス嬢もまた変わった子だ。
マリアの親友というのは彼女が思う以上に力がある。
王族と仲が良いと、その兄弟とも縁ができやすい。むしろそれが目的で近づく女性のなんと多いこと。
マリア以外の妹の“友人”は、妹をダシにしてなんとか王子たちと縁を繋ごうと必死な女性ばかり。王子も、仲の良い友人だと思っていたら妹をゴリ押しされるなんてこともザラにある。
正直、面倒なことこの上ないが、仕方のないことだとは思っている。
しかし、シェリス嬢にとって私は、どこまでいっても「親友のお兄さん」でしかない。
親友の家族だから仲良くするけれど、そこに媚は一切ない。
もしシェリス嬢が他の女性のような打算的な行動をとる人物ならば、マリアはあそこまで傾倒しなかっただろう。
きちんとした感謝をして、それだけ。
脱水症状になった時に水を与えられたとしよう。命の恩人だと感謝をしても、その後与えられるのが泥水だったとしたら。距離を取るのが普通だし、そのあたりの引き際はきちんと弁えている子だ。
しかし、シェリス嬢はそうではなかった。マリアを、ただの友人として扱うのだ。
例えマリアが王女じゃなくても、なんなら自分より下の身分でも今と同じように笑いかけるだろう。彼女が好きなのは”マリアクレイズ“という人間なのだから。
だからこそ、思い出ではなくシェリス嬢の存在そのものがマリアにとっての宝物となったのだろう。
打算の中で生きている私達のような者からしたら、この上なく心惹かれる存在だ。
私にとっても大切な存在となるかは……これからのお楽しみ、だな。
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アベル(シェルス兄) 「やだああああ!妹に変なのがちかづいてるううううぅ!」
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