あの日、北京の街角で

ゆまは なお

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第21章-4

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 耳元でささやく声が、祐樹をそそのかす。
 ここに落ちておいでと誘っている。
 それはものすごく強い誘惑だった。
「……こまる」
 拒否できない祐樹は、どうにか言葉を探しだした。
 それを聞いた孝弘は、じゃあやめないと耳のふちに口をつけながらささやいた。

「嫌ならそう言えよ。だったらやめる」
 でないとやめてあげられない、などと耳のしたのくぼみをなめて上目づかいに見上げてくる。
 嫌じゃないから困っているというのに。
 そんなことは先刻承知で、この男は迫ってくるのだ。獲物を狙う肉食獣のような眼で自分をねだる孝弘に、祐樹は音を上げた。
 本気を出した孝弘を、どう頑張っても拒める気がしなかった。流されているとわかっているけれど、自分だって欲しかったのだ。
 こんなふうに誘われて切り捨てられるほど祐樹の意志は強くなかった。

「いいよ、しても」
 まだすこしためらいながら言うと、孝弘はうれしそうに笑って、祐樹のシャツを開いた。
 鎖骨に口づけて、下りてきた唇に胸の先を口に含まれた。
 乳首をこねるように舌を押しつけられて、びくっと肩がはねる。
「キスだけって言わなかった?」
 すねた口調でなじると「どこにとは言わなかったでしょ」としゃあしゃあと答えて、肋骨のうえを唇でたどる。
 悪びれない返事に、思わずくすりと笑みがこぼれた。降参だと思う。
このぶんでは前回同様、体中に口づけられそうだ。

「いいだろ、ここ。こないだも気持ちよかったよな?」
 気持ちがほぐれているのを自覚した。触れられて体が悦んでいる。もっととさらに先をねだっている。この手がくれる快楽を覚えていて、祐樹だって求めている。 
 もういいか、意地を張らなくても。
 正直に、あんなにも真っ直ぐ好きだと孝弘は言ってくれたのだから。それだけで、祐樹はとても嬉しかった。満足だった。
だから、一度だけだ。こんな機会はそうそうない。

「いいよ。好きなようにして」
 孝弘が顔をあげて、言葉の意味を確かめるように祐樹の眼を間近にのぞきこんできた。欲に濡れた強い眼差しが、喜びにきらめいている。
「祐樹が好きだ」
 手管もなにもない子供のようにシンプルな、まっすぐに胸に届く告白だった。
「いっぱい触りたい」
 熱い手が腰を抱き寄せた。

 素直にベッドに押し倒されて、お互い服を脱がせあう。
 ホテルのオレンジっぽい照明のなかで、孝弘のしっかりと筋肉をまとった上半身が浮かび上がる。
 その体に欲情するのを、はっきりと感じた。好きだと思う。
 ベッドに横たわり、お互いあちこち触りあって、口づけあった。手のひらから気持ちが伝わるような感じがして、あっという間に体が熱くなる。

 祐樹は体を起こすと、孝弘のうえに体を重ねた。
 見下ろすと孝弘は楽しむような顔で目を細めて祐樹を見ていた。
「重い?」
「全然」
 祐樹が上半身をすこしそらして卑猥な動きで腰を押しつけて欲望を擦りあわせるように動くと、孝弘がぐっと息をつめた。
 困ったような顔をするのがかわいい。
「祐樹、エロすぎる」
 もっと困らせてみたくて、さらに下に移動して、口に含むとそれはぐぐっと質量を増した。

 孝弘が上半身を起こして、祐樹を熱のこもった眼でじっと見ている。
 深く咥えこんでちらりと見上げると、視線が合った途端、片手で顔をおおって眉間にしわを寄せた。
 孝弘の快楽をこらえる表情、短い息遣いに祐樹も興奮が増していく。
 丁寧に舌を這わせ、見せつけるようにゆっくりとしゃぶると、徐々に舌先にぬめりを感じるようになってくる。

「も、いいよ」
 ぐいっと引き上げられて、体を入れ替えられた。
「想像以上にエロくて積極的で、最高」
 熱い吐息とともに耳元でささやいてきて、昂った祐樹の性器を手のなかに包みこんだ。
 どんな想像をしてたんだか。まあどんなのでもかまわないけど。
 思ったのは一瞬で、そのあとは孝弘の手と口に翻弄された。
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