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28 未練
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カロリーナが、エヴァンに嘘を伝えているかもしれないとわかっていたが、エヴァンは気にしていないようだった。だから、エヴァンがカロリーナの話を信じないのだと、勝手に思い込んでいたようだ。
さすがにもう、胸が痛むようなことはない。結局は恋人を信じるのは普通だと思う。けれど、あそこまであからさまにオレリアを敵対視しているのを見ていても、オレリアが嘘をついていると思われたくない。
「私の嘘の噂が流されていたのは、知っているでしょう? 彼女が噂を流したかどうかはわからないけれど、その発言を聞いている限り、彼女はなんでも私のせいにしたいみたい。エヴァン、悪いことは言わないから、彼女とは付き合いを改めた方がいいと思うわ」
「そんな、カロリーナは、そんなことしないよ。足が傷ついたのも本当だし、まだ痛がってるくらいなんだ」
傷の深さがどの程度かは知らないが、パーティでは普通に歩いていた。痛みの重さもわからないので、なんとも言えないが、直接毒を触った配送員ですら、かぶれの跡が残っているだけ。医療魔法士から治療を受けたはずなのに、カロリーナの傷がまだ痛むとは思えない。副大臣の養女ならば、屋敷に専属の薬学魔法士がいるだろう。
「エヴァン、彼女とは恋人同士ということで、いいのよね?」
「え? ……う、うん。だから、カロリーナが泣いているのが、気になって」
オレリアが問うと、エヴァンは少しだけ逡巡して見せて、恥ずかしそうに頷いた。反応はオレリアのように子供っぽく、恋愛初心者のような雰囲気はあるが、肯定はしている。エヴァンはカロリーナに、恋人として接しているのだ。
「彼女が、本当に、あなたとお付き合いしていると思っているのか、ちゃんと確かめた方がいいわ」
「なんで、そんなことを? もしかして、パーティで僕のことを恋人だって言ったって、本当なの?」
「なに、それ……」
「誤解されるって、嘆いていたんだ。そんなこと、オレリアが言うはずないって言ったんだけど、自分を信じてくれないのかって、泣いて」
そんなことまでカロリーナは嘘をついているのか。カロリーナの図々しさには呆れてしまう。すべて自分が行ったことを、オレリアがやったと言っているのかもしれない。パーティでの素行を考えれば、納得か。思った以上に厄介な人だったようだ。
「とにかく、泣いて、王宮にはもう行けないかもしれないって」
「はあ、もういいわ。彼女との付き合いを改めないと、あなたも大変なことになると思うわよ」
「どうして、そんなことを言うのさ」
珍しくエヴァンが苛立ちを見せたので、オレリアは口を閉じた。今のオレリアの言葉に、パーティでカロリーナを罵ったと信じたかもしれない。
「オレリアが、そんなこと言うなんて思わなかったよ!」
エヴァンが大声を上げる。もう、何を言っても納得しない、意固地さを感じた。
「エヴァン、冷静に考えろと言っているだけよ。彼女以外の意見も聞いた方がいいわ。特に、彼女から少し離れた人たちからね。とにかく、もう帰って、」
「また来たのか? 騎士は暇なのか?」
追い返そうとしたら、セドリックがやってきた。不機嫌に言い放ち、オレリアを背後に隠す。
守ってくれる態度に、どきりとした。同時に、安堵するものがあった。
セドリックは、ヒゲはなくなっているが、ボサボサ頭は復活だ。若干、局長だとわかりにくいが、前髪で目を隠しているので、ヒゲがないくらいに思われるだろうか。エヴァンはパーティでのセドリックを見ていないので、気付いていなそうだ。
「こんなに何度も仕事中に来るとは、迷惑だと思わないのか? オレリアは、君の恋人に非道な噂を流され、意味のわからない濡れ衣を着せられたんだ。パーティでは、大声で罪をなすりつけられそうになった。オレリアを陥れるような真似をしておいて、嘆いているだと? オレリアに会いにくる前に、向こうをなんとかしたらどうだ。オレリアに言いにくるのは、筋違いだろう」
「そんな。でも、カロリーナは、侍女を辞めさせられるかもしれないとも言っていて」
「自業自得だ。そもそも、彼女は侍女になれるような立場ではなかった。副大臣の養女となり、侍女になれる身分になりながら、未来の国の研究員を、悪様に言うような態度。嘘ばかりを並べて、迷惑ばかりかける。王女から侍女を辞めろと言われて当然だ。行こう。オレリア」
セドリックはオレリアを促す。エヴァンは言葉を失ったように、口を閉じて、その場に立ち尽くしていた。
「助かりました。ありがとうございます」
「いや、たいしたことじゃない。それより、その、あいつに未練はないのか?」
「そんなの、まったくありません! もう昔の話です。それに、何も知らないとは言っても、まだ彼女を庇うくらいですよ?」
「それもそうだな。それより、君の寮の部屋に、毒を置いた犯人がわかった。あの騎士だった」
オレリアを執拗に犯人に仕立てようとした騎士。
あの金髪の騎士が、オレリアを陥れようとした。
金髪の騎士は、オレリアと同じ魔法学院に通っていたことがあり、魔法は使える。ただ、学院でそこまでの成績を残せず、なんらかの魔法士になる夢を捨て、騎士になった。
そのため、学院のことも、寮のことも熟知していたそうだ。寮の管理人を半ば脅してオレリアの部屋に行き、調査で手にしていた毒を置いた。それを、さも今見つけたかのようにしたのだ。
「ただ、犯人に仕立てただけで、配送員との関わりはない。君を陥れたかっただけのようだ」
「どうして、そんなことを」
「それはまだわからない。毒は配送員が残した毒を使ったようだが、何の恨みなのか、まだなにもわかっていない。成績不振で卒院することができなかったから、研究員を目の敵にしていたみたいだが。医療魔法士にも態度が悪いのは有名だったそうだ」
「そんなことで、私を陥れようと? カロリーナを庇っていたように思えましたけれど」
「それについても、これから調べられるだろう。配送員との繋がりはわかっていないし、単独なのか、協力なのかもわからない。なんとも言えないな」
パーティで、セドリックから叱咤されたという噂が流れたため、毒で殺されそうになった王女の侍女から、セドリックのパートナーを罵った女となり、噂話の矛先はカロリーナに変わった。今はカロリーナの方が悪役だ。侍女をクビになったため、その噂も信ぴょう性が増したのだろう。
けれど、毒を盗んだ配送員と、オレリアを犯人に仕立てようとした、金髪の騎士、その二人の繋がりは見えない。配送員は、毒の入った処理物の開封について、見知らぬ人に魔法を解除してもらったと証言した。しかし、その相手は、金髪の騎士ではないことはわかっている。
結局その後も、配送員と金髪の騎士の繋がりはわからないまま、二人の事件は個別に行われたとして、処理されることになった。
そうして、処理物を開けた人間が見つからないまま、日々が過ぎていったのだ。
さすがにもう、胸が痛むようなことはない。結局は恋人を信じるのは普通だと思う。けれど、あそこまであからさまにオレリアを敵対視しているのを見ていても、オレリアが嘘をついていると思われたくない。
「私の嘘の噂が流されていたのは、知っているでしょう? 彼女が噂を流したかどうかはわからないけれど、その発言を聞いている限り、彼女はなんでも私のせいにしたいみたい。エヴァン、悪いことは言わないから、彼女とは付き合いを改めた方がいいと思うわ」
「そんな、カロリーナは、そんなことしないよ。足が傷ついたのも本当だし、まだ痛がってるくらいなんだ」
傷の深さがどの程度かは知らないが、パーティでは普通に歩いていた。痛みの重さもわからないので、なんとも言えないが、直接毒を触った配送員ですら、かぶれの跡が残っているだけ。医療魔法士から治療を受けたはずなのに、カロリーナの傷がまだ痛むとは思えない。副大臣の養女ならば、屋敷に専属の薬学魔法士がいるだろう。
「エヴァン、彼女とは恋人同士ということで、いいのよね?」
「え? ……う、うん。だから、カロリーナが泣いているのが、気になって」
オレリアが問うと、エヴァンは少しだけ逡巡して見せて、恥ずかしそうに頷いた。反応はオレリアのように子供っぽく、恋愛初心者のような雰囲気はあるが、肯定はしている。エヴァンはカロリーナに、恋人として接しているのだ。
「彼女が、本当に、あなたとお付き合いしていると思っているのか、ちゃんと確かめた方がいいわ」
「なんで、そんなことを? もしかして、パーティで僕のことを恋人だって言ったって、本当なの?」
「なに、それ……」
「誤解されるって、嘆いていたんだ。そんなこと、オレリアが言うはずないって言ったんだけど、自分を信じてくれないのかって、泣いて」
そんなことまでカロリーナは嘘をついているのか。カロリーナの図々しさには呆れてしまう。すべて自分が行ったことを、オレリアがやったと言っているのかもしれない。パーティでの素行を考えれば、納得か。思った以上に厄介な人だったようだ。
「とにかく、泣いて、王宮にはもう行けないかもしれないって」
「はあ、もういいわ。彼女との付き合いを改めないと、あなたも大変なことになると思うわよ」
「どうして、そんなことを言うのさ」
珍しくエヴァンが苛立ちを見せたので、オレリアは口を閉じた。今のオレリアの言葉に、パーティでカロリーナを罵ったと信じたかもしれない。
「オレリアが、そんなこと言うなんて思わなかったよ!」
エヴァンが大声を上げる。もう、何を言っても納得しない、意固地さを感じた。
「エヴァン、冷静に考えろと言っているだけよ。彼女以外の意見も聞いた方がいいわ。特に、彼女から少し離れた人たちからね。とにかく、もう帰って、」
「また来たのか? 騎士は暇なのか?」
追い返そうとしたら、セドリックがやってきた。不機嫌に言い放ち、オレリアを背後に隠す。
守ってくれる態度に、どきりとした。同時に、安堵するものがあった。
セドリックは、ヒゲはなくなっているが、ボサボサ頭は復活だ。若干、局長だとわかりにくいが、前髪で目を隠しているので、ヒゲがないくらいに思われるだろうか。エヴァンはパーティでのセドリックを見ていないので、気付いていなそうだ。
「こんなに何度も仕事中に来るとは、迷惑だと思わないのか? オレリアは、君の恋人に非道な噂を流され、意味のわからない濡れ衣を着せられたんだ。パーティでは、大声で罪をなすりつけられそうになった。オレリアを陥れるような真似をしておいて、嘆いているだと? オレリアに会いにくる前に、向こうをなんとかしたらどうだ。オレリアに言いにくるのは、筋違いだろう」
「そんな。でも、カロリーナは、侍女を辞めさせられるかもしれないとも言っていて」
「自業自得だ。そもそも、彼女は侍女になれるような立場ではなかった。副大臣の養女となり、侍女になれる身分になりながら、未来の国の研究員を、悪様に言うような態度。嘘ばかりを並べて、迷惑ばかりかける。王女から侍女を辞めろと言われて当然だ。行こう。オレリア」
セドリックはオレリアを促す。エヴァンは言葉を失ったように、口を閉じて、その場に立ち尽くしていた。
「助かりました。ありがとうございます」
「いや、たいしたことじゃない。それより、その、あいつに未練はないのか?」
「そんなの、まったくありません! もう昔の話です。それに、何も知らないとは言っても、まだ彼女を庇うくらいですよ?」
「それもそうだな。それより、君の寮の部屋に、毒を置いた犯人がわかった。あの騎士だった」
オレリアを執拗に犯人に仕立てようとした騎士。
あの金髪の騎士が、オレリアを陥れようとした。
金髪の騎士は、オレリアと同じ魔法学院に通っていたことがあり、魔法は使える。ただ、学院でそこまでの成績を残せず、なんらかの魔法士になる夢を捨て、騎士になった。
そのため、学院のことも、寮のことも熟知していたそうだ。寮の管理人を半ば脅してオレリアの部屋に行き、調査で手にしていた毒を置いた。それを、さも今見つけたかのようにしたのだ。
「ただ、犯人に仕立てただけで、配送員との関わりはない。君を陥れたかっただけのようだ」
「どうして、そんなことを」
「それはまだわからない。毒は配送員が残した毒を使ったようだが、何の恨みなのか、まだなにもわかっていない。成績不振で卒院することができなかったから、研究員を目の敵にしていたみたいだが。医療魔法士にも態度が悪いのは有名だったそうだ」
「そんなことで、私を陥れようと? カロリーナを庇っていたように思えましたけれど」
「それについても、これから調べられるだろう。配送員との繋がりはわかっていないし、単独なのか、協力なのかもわからない。なんとも言えないな」
パーティで、セドリックから叱咤されたという噂が流れたため、毒で殺されそうになった王女の侍女から、セドリックのパートナーを罵った女となり、噂話の矛先はカロリーナに変わった。今はカロリーナの方が悪役だ。侍女をクビになったため、その噂も信ぴょう性が増したのだろう。
けれど、毒を盗んだ配送員と、オレリアを犯人に仕立てようとした、金髪の騎士、その二人の繋がりは見えない。配送員は、毒の入った処理物の開封について、見知らぬ人に魔法を解除してもらったと証言した。しかし、その相手は、金髪の騎士ではないことはわかっている。
結局その後も、配送員と金髪の騎士の繋がりはわからないまま、二人の事件は個別に行われたとして、処理されることになった。
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