目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO

文字の大きさ
25 / 103

14 ー招待ー

しおりを挟む
 屋敷に戻ると、なぜかクラウディオが待っていた。つい身構えそうになるが、今の所悪いことはしていない。

 既にぐっすり眠ってしまっているアロイスを部屋に連れていくよう伝えて、フィオナは向き直った。するとクラウディオは少しばかりおののくような雰囲気を見せるのだが、初めて見た時の偉そうな雰囲気はどこにいったのだろうか。

(なんだか、怯えているみたいね……)

「なにか、ご用でしょうか」
「王よりパーティの招待がありましたので、お知らせに。……ドレスなどの買い物を済まされたのですか?」

 そう言いながら、リディとなぜかポールを連れていたのと、購入した荷物が見当たらないのを見て、クラウディオは不思議そうな顔をした。買い物になど行ってはいないが、街に行ったらセレスティーヌは買い物と決まっていたのだろう。

「ただの散歩です。ドレスは既にあるのでは? 私は必要ありません。それより、王からの招待とはどういうことでしょう」
「……いつもの催しです。年に一度の王族主催のパーティで、昨年も参加しました」
「そちらに、……サルヴェール公爵子息もいらっしゃる予定でしょうか?」
「それはなんとも言えません。前回サルヴェール公爵はいましたが。……お会いしたい理由でも?」
「前に声を掛けていただいたので、お会いしても驚かず挨拶しようと思っているだけです」

 適当な返答にクラウディオは表情を少しだけ曇らせる。印象が悪いのは間違いなさそうだ。

(エルネストも来るなら助かるんだけれど……)

「ドレスは、本当に必要ないのでしょうか?」
「あるもので足りるのであれば、それで構いません。無いようなら、リディと相談します」
「そうですか……」
「他に、なにか?」

 少々気落ちしているような表情が気になるが、セレスティーヌがドレスに気を向けないため不思議に思っているのだろう。

 ドレスを購入する店などセレスティーヌが懇意にしていたに違いない。親しくなくともセレスティーヌを知っている人と会うのは避けたいだけなのだ。フィオナはドレスの良し悪しが分からないので、パーティとなればリディに相談しなければならない。

 話がないのならば疲れたので部屋に戻りたい。そんな視線を向けたのだが、クラウディオはまだ話があると目の前に立ちはだかる。

「ダンスがあります」
「は?」
「王のパーティですので、ダンスを踊らなければなりません。練習が必要でしょう」

 まさかのダンス練習で、フィオナは口が開きっぱなしになった。
 ダンスの練習は何度かしたことがある。ただ、パーティで踊ったことは一度しかない。領主の息子に頼まれて相手をしたが、それだけで疲労困憊だった。
 セレスティーヌの体力なら問題なさそうだが、フィオナがしっかり踊れるかは不安がある。

「足を怪我する予定ですので、ダンスは踊れません」
「————なっ、なぜ、そうなるのですか!?」

 むしろなぜ怒った風に驚くのか。クラウディオはセレスティーヌに関わりたくないはずだ。足を怪我すれば事なきを得るだろうに。クラウディオはダンスを踊る必要性を説いた。

「王の前ですから、私たちがダンスを踊るのは当然ですし、あなたのご両親もいらっしゃるでしょう」
「では、欠席しましょう!」
「え、な、なにを言って……」

 セレスティーヌの両親のことなど頭から抜けていた。

 クラウディオならばそこまで接点を持たずに過ごせるが、両親となれば話が違う。会えば長く話すだろうし、話せば間違いなくおかしいと思われるだろう。それに、公爵に借金を背負わせ娘を嫁がせるような父親だ。他の面倒を持ち込まれても困る。

「私はその日体調を崩しますので、お一人で出席なさってください。ダンスも練習する必要はありませんね」
「なぜ、そんなことを」

 クラウディオはどうにも理解できないと顔を歪める。その顔をされる方がフィオナには理解ができなかった。クラウディオはセレスティーヌが参加しない方が良いのではないのか?

「あなたが楽しみにしていたパーティです」
「ですが、旦那様は興味ないのでしょう。なら、それで良いのでは?」
「————去年のことを、根に持っておいでで?」
「根に持つようなことをなさったんですか?」

 フィオナが問うと、クラウディオはぐっと口を閉じた。思い当たることがあるらしい。クラウディオはフィオナに食いつくのをやめて視線を床に下ろすと、黙りこくってしまった。

 罪悪感があるから、セレスティーヌを誘ったようだ。優しいというべきなのか、迷うところだ。

(その中途半端な優しさのせいで、セレスティーヌがいつまでもしつこく付き纏うような気もするのだけれど)

 セレスティーヌはクラウディオのどこが良かったのだろう。
 確かに顔は良いだろうし、セレスティーヌに散々迷惑を掛けられながら優しさを見せるのだから、そこに惹かれたのかもしれない。しかし、セレスティーヌがすがるのもそれが原因のような気もする。
 フィオナは、セレスティーヌの気持ちに共感できないが……。

「分かりました。出席はしますが、別行動をしましょう。念の為ダンスの練習はしておきますが、踊らないことを祈っています。もう、私には構わないで結構ですので」

 セレスティーヌには悪いが、これくらい言っておけばクラウディオも変に罪悪感を持ったりしないだろう。

 セレスティーヌの行動に振り回されて苦労したのだし、ここはもう興味がなくなったとアピールすればクラウディオも肩の荷が下りるはずだ。セレスティーヌが元に戻れば、彼女が少し苦労するかもしれないが、セレスティーヌも今までの行動を冷静に鑑みるべきだろう。

 部屋に戻ろうと踵を返すと、クラウディオはどこか暗い表情をフィオナに向けていた。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い! 声が出せないくらいの激痛。 この痛み、覚えがある…! 「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」 やっぱり! 忘れてたけど、お産の痛みだ! だけどどうして…? 私はもう子供が産めないからだだったのに…。 そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと! 指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。 どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。 なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。 本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど! ※視点がちょくちょく変わります。 ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。 エールを送って下さりありがとうございました!

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...