目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO

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30② ー調べ物ー

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「クラウディオには……」
「言いません。あれは機密情報です」

 そう言われて安堵するが、挑戦的に物を言ってくるのであまり喜べない。

(疑ってるなあ。なにを調べているのか、気になって仕方ないってかんじだわ)

 とはいえ、すべてを話すことは難しい。素知らぬふりをしてエルネストが読んでいた資料をぱらぱら確認するが、特に気になることは載っていない。ただの大国の歴史だ。
 前にクラウディオに見せてもらったものとは違うので、別の資料である。

「大国の歴史って、誰でも学ぶんですか?」
「そうですね。この国は元は大国の中心部でしたし、ある程度の歴史は学ぶものです。今の王も大国時代の王族の血は引いてますから」

 大国は滅びてしまったが、内戦でいくつもの国ができただけ。中心部は大国のままなところがある。その歴史を学ぶのは当然か。資料が少ないのは王宮も攻撃されたからだろう。

 他の資料を見せてもらいながらうろうろしたが、クラウディオはまだ囲まれたままだった。アロイスはクラウディオの胸に顔をうずめたままなので、嫌がっているのかもしれない。時折クラウディオがアロイスの顔を覗きこんで、大丈夫か確認している。

(あれなら平気ね。アロイスは無視されていると思わないし……)

 あのくらいの小さな子供は、気にされていないと思うと喚くことがある。自分を見てほしいというアピールをするのだ。
 まだまだ甘えん坊のアロイス。放っておくとこの静かな書庫で大泣きするだろう。

「バラチア公爵が子供の世話など、世紀末ですね」
「……クラウディオのこと、嫌いなんですか?」
「とんでもない。努力を惜しまぬ人物です」

 その割には座った目で見ているのだが。いや、ただ寝不足なだけだろうか。前回会った時よりクマがはっきりしている。
 ノエルの話を聞きつつ、クラウディオとアロイスを確認しつつ、資料を探していると、さっきより増えていたクラウディオを囲む人たちの中にこちらを睨みつける人がいた。

「……あの方は、女性の魔法使いさんですか?」
「ご存知ないわけないですよね? あの方に噛みついているのを見たことあります」
「噛みついた相手覚えていないので」
「……」
「……」
「私はそろそろ戻りますので、ご自由に見学なさってください。また今度伺いますね」

 ノエルはにっこり嘘くさい笑顔をして、書庫を出て行った。

(ばれたかしら、あれ)

 どっと冷や汗が流れてきそうになる。セレスティーヌが別人であることを、決定打にしただろうか。
 クラウディオはまだ囲まれており、女性はクラウディオと話しつつも、こちらに気付くと睨みつけてくる。

(セレスティーヌ。あの女性に何をしたのよ)

 彼女は誰ですか。とクラウディオに聞きたいところだが、セレスティーヌは知っている人で、しかも噛みついたようでは聞くに聞けない。
 そう思うと、クラウディオに関わる人たちを全く知らないことに気付かされる。

(いや、知ってどうするのよ。この体はセレスティーヌのもので、彼女に返すんだから)

「セレスティーヌ? お待たせしました」
「は! もうよろしいんですか!?」
「すみません。後から後から寄ってきたので。もう大丈夫です」

 クラウディオは塩対応をしていたようだが、次々に人が来るので逃げられなかったようだ。真面目な魔法についての問いなどをされて、律儀にしっかり答えていたらしい。
 そんな真面目なところも笑ってしまう。

 クラウディオがフィオナに謝る後ろで、先ほどの女性がフィオナを横目で睨みながら踵を返した。

「どうかされましたか?」
「いえ……」
「あ、あの女性は、討伐を一緒にしたことがある人で、前に説明しましたが……。教員を任されたそうです。その報告をしてきただけで」
「へー。そうなんですか」
「……」
「? どうかされましたか?」
「いえ、彼女とは何もありませんから」

 そんなことは気にしていないのだが、クラウディオは違う意味でフィオナがあの女性を見ていると勘違いしたらしい。急いで否定されて、フィオナもその意味を察する。

「えーと。疑ってないので大丈夫です!」
「……」

 別に彼女がクラウディオとどうこうあったのか、気になったわけではない。その意味で否定して見せたが、クラウディオはしょんぼりとした顔を見せた。

「昔はあれでしたが、今は、疑っていません!」
「そうですか」

 言い換えるとクラウディオはすぐに安堵してみせる。嫉妬に燃えるセレスティーヌは定期的にあったようで、そうでないセレスティーヌはおかしいのだろう。

(あちこち威嚇した方がいいのかしら。どれだけ周囲に喧嘩売ってたのよ、セレスティーヌは)

 セレスティーヌは気が弱い方だと聞いていたのに、クラウディオに近付く女性たちには容赦がない。
 人とは違う執着心を持って、そんなことで人から騙されてしまう女性。
 理解し難いと言ったら怒られるだろうか。

 フィオナにはそれほどの執着する心を、理解できないでいた。
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