目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO

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31③ ー薬ー

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 エルネストに協力者がいる。しかも、研究所に入られる魔法師か、それに準ずる力を持つ者。

(エルネストを助けるとしたら、どういう人がいるんだろう)

「誰か、思い付く方はいますか?」
「分かりませんね。エルネスト様と親しい者か、もしくは同じ利益を得られる者か。デュパール公爵夫人に確認すると良いと思います」

 それしかないか。ノエルはこちらでも調べると約束してくれる。

「とにかく、エルネスト様は、その魔法使いから魔法陣や薬について聞いたのでしょう。そして、エルネスト様はあなたの体を使い、魔法陣でなにかを召喚し求めたということで間違いありません。それが確実に行われるかはともかく、それを目的としたと考えるのが妥当です」

 当初から考えていたとおり、エルネストはセレスティーヌを陥れ、クラウディオに不幸をもたらすつもりだったわけである。

「クラウディオへの憎しみってとこかしら……。比べられた腹いせ? セレスティーヌならば犠牲になっても良いと言うより、役立ちそうだったから使ってみたって感じ?」
「ずいぶん達観して仰るんですね」
「そりゃ、ふかんで見ませんと! 分からないことが多いでしょう? ここは外から見て考えなければ」

 呟いたつもりはなかったのだが声に出ていたらしい。軽く返して、フィオナはこれからどうするかを思案した。
 エルネストの望みはクラウディオへの恨みを晴らすことで、王の後継者となる邪魔な存在を消したかったのか。もしくは父親からの命令か。

 どうしてセレスティーヌが倒れたかは分かった。それらは想像通りで、犯人もはっきりした。
 だとして、どうする?
 夢を再び見て、ヴァルラムと共にいるセレスティーヌと話をし、体を元に戻す方法を問うしかないのか。

(その時、私は……)

 考えて、大きくかぶりを振る。そも、この体はフィオナの体ではない。乗っ取っている事態おかしいことなのだから、持ち主に返すことが道理だ。

 たとえ、フィオナに戻る体がなくとも————。

「封印された魔法使いが誰なのか、ご存知ですか?」

 ふと、ノエルに問われて、フィオナは顔を上げた。
 絵本の題材になった人物。資料に名前は載っていなかった。あとはノエルの言っていた話しか聞いていない。

「有名な方なんですか?」
「有名ですね。王族ですから」
「王族!? 大国の王族が悪い魔法使いなんですか!?」
「それは大国の話です」
「どういう意味ですか? 悪事を働いた人じゃないんですか? 悪魔とまで言われた」
「違います。それは大国の話です」

 何が違うのか。ノエルは同じことを口にする。そうして、カバンから表紙が絵の書物を取り出した。どうやら絵本のようだ。

「魔法陣が誰を呼び出すものなのか、事実を知れば、エルネスト様も魔法陣をあなたに教えなかったでしょうね」

 なんのことだろう。
 フィオナは渡された絵本を手に刷る。ぺらりとページをめくると、アロイスが持っていた絵本だと気付いた。
 ただ、アロイスが持っていた絵本に比べて絵が明るい。黒に塗られたものではなく、影などが薄い黒で塗られている程度で、全体的に明るくて見やすく描かれている。


『強い魔法使いがいた。魔法使いは人々に頼まれて、化け物と戦った』

 冒頭は同じ。文章はそっくり同じではないが、内容は似たような話だ。
 しかし、読み進めていると、話が少しだけ変わっていた。

『魔法使いは、自分の力だけでは倒せないから、力を貸してほしいと、みんなに頼んだ。
 そこには魔法使いだけでなく、たくさんの騎士もいた。

 みんな、力を貸してくれ。
 強い魔法使いがお願いすると、他の魔法使いも、騎士も、みんなで力を合わせて化け物をやっつけようとした』


「それでも、化け物を倒すことができずに、とうとう強い魔法使いは、その命と引き換えに、化け物を封印することにした」

 フィオナの知っている、物語だ。

「これは、これはどこで手に入れたんですか!?」
「最近国交が行われるようになった、遠い地にある、ナーリア国の話です」

 ナーリア国はフィオナが住んでいたオリシス国の隣にある国だ。フィオナの国と隣同士なため、絵本の内容が同じなのか。

「その絵本の魔法使いの人物ですが、大国の王弟になります」
「王弟? 王弟がモデルなんですか!? え、じゃあ、稀代の天才って魔法使いが、王弟ってことに?」

 ノエルは頷く。王弟が魔法使いだった。では、ブルイエ家に封印されたのが王弟なのか?

(————、え、ちょっと待って、ということは……?)

「この国、シューラヌ国では、絵本の魔法使いは悪に描かれています。しかし、ナーリア国では魔法使いは善に。どうしてだと思います?」

 なぜなのか。問われてよく分からずに、フィオナは首を傾げる。
 フィオナの国でも魔法使いは善だった。だがこの国では悪で、最後には旅人である王に封じられてしまう。

「……王に陥れられたってこと、ですか?」
「その通りです。我が国シューラヌ国は大国の中心部に近い場所を国としています。ですから、思想などは大国のものを継いでいることが多い。かわってナーリア国は大国の端の方にできた国です。大国が滅びた後できた国が、大国の元王に慮る必要はありません。史実に近い絵本を描けたのでしょう」
「だから、この国にある絵本は、あんなに暗いんですか?」

「王の愚行を正直に描けずに、あのような暗い絵本にしたのでしょう。あの絵本の最後のページを覚えていますか?」
「食事のシーンですよね。真っ暗で、みんな静かに食事をしていて、外に鎖をつけて嘆いている魔物がいる」

 あの絵本は風刺に近いのか。まだ大国が滅びる前で、王やその一族が存命だった頃描くとしたら、事実は描けない。そのためあのように黒の多い描き方にし、幸福ではないように見せたのだ。
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