恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~

凪瀬夜霧

文字の大きさ
116 / 167
9章:帰りたい場所

おまけ2:復活を祝して

しおりを挟む
 ファウスト達に呼び出しを受けた翌日の安息日、ランバートは早朝訓練もそこそこに連れ出された。向かったのはルカの店。割られたショーウィンドーは綺麗に修復されている。

「ルカ」
「兄さんいらっしゃい!」

 ファウストが裏口を叩くと直ぐに中から明るい青い瞳が覗き、扉が開く。ダイニングキッチンは見慣れたものより華やいでいた。

「あの」
「ランバートさんも入って! ほら、早く!」
「あの、わっ!」

 背中を押されて中に入ると、パーティーの準備は整っていた。料理が並び、花も飾って。

「座って」
「あの、でも俺は」

 邪魔なんじゃないか。そう思ってしまう。気持ちの面で後ろめたさや不安は消えたものの、後ろ向きな気持ちはそう簡単に切り替わらない。ルカには大変な光景を見せてしまった。怖くないのだろうか。

「ランバートさん」

 心持ちピシッとしたルカが、腰に手を当てて少し怒った顔をしている。ランバートの服を引いて眉を寄せる姿は、ファウストが説教をする前に似ている。

「一度しか言わないから、ちゃんと聞いてね」
「え? はい」

 自然と背が伸びて居住まいを正した。

「僕はランバートさんに感謝してる。助けてくれて有り難う」
「そんな、俺……」
「話はまだ終わってない!」
「はい!」

 クワッと言われてしまい、思わず返事。その様子を、後ろでファウストが笑って見ている。

「ランバートさんのこと、怖いとか思ってない。僕はランバートさんの優しさを知ってる。僕は優しいランバートさんが本当だと思ってるから、怖くない。申し訳ない顔なんてして欲しくない。僕に対して、ランバートさんは何一つ謝る事なんてない」

 きっぱりと言われた言葉が嬉しく響く。ここ最近、申し訳ないとか、身の振りばかり考えていたから余計にだ。

「僕は誰に何を言われても、ランバートさんの味方だよ。ランバートさんは僕の恩人で、僕の友達で、僕のお兄さんだから」
「有り難う、ルカさん……ん?」

 最後の「お兄さん」は、どういう意味だろう。

「ルカ」
「と言うことで兄さん、早くランバートさんと仲良くしてね。僕はランバートさんならいつでもお兄さんって呼べるから」
「おい、ルカ!」

 不意打ちを食らったファウストが声を大きくして、せっせと準備をしているレオとルカが笑う。置いて行かれたランバートはオロオロと見回すしかなかった。

「さぁ、今日は全部お終いのパーティーだよ。僕も明日からお店再開するから、再出発おめでとうパーティーもね!」
「俺も再出発。明日からまた、修行させてもらうんだよリフ」
「レオくんは筋がいいと思うよ。覚えもいいし、僕にはないフレッシュな感覚を持ってる」

 側に来たレオが自慢するように胸を張る。その姿が可愛くて、ランバートも笑った。

「さぁ、リフも座って!」
「あっ、こら!」
「兄さんもね」

 レオに背を押されて椅子に座らされ、隣にファウストも座る。ファウストの前にはルカが、ランバートの前にはレオが座って、グラスを持って乾杯をした。
 温かな食卓は楽しい話と美味しい食事で賑わう。最初遠慮がちだったランバートも、徐々に前と同じように笑った。隣の人はその様子に、どこか安堵したようだった。
 食事が片付いて、食後のケーキも食べ終えて、ファウストが片付けを申し出た。一度見た事のある紺色のエプロン姿でテキパキと仕事をする背を見ながら、やっぱり見慣れないなと苦笑した。

「ランバートさん、これ」

 そう言ってルカが出してきたのは黒い箱だ。中身は香水だろうが、それにしては大きい。首を傾げながら箱を開けると、中には二つの香水が収まっていた。

「二つ?」

 一つは以前にお願いしていたものだろう。透明なガラスに金の装飾がされ、月の形にカッティングされた栓をした香水瓶からは確かに、試作に近い爽やかでどこか甘い香りがした。
 だがもう一つは覚えがない。透明なガラス瓶はこの店の物で間違いがないが。
 確かめると、不思議な香りがした。植物性なのだろうが、花などのフローラルな感じはしない。清涼感のある感じだろうか。だがその奥には微かに甘さもある。使った事のないタイプだ。

「それ、俺が作ったんだ」
「レオが?」

 照れたように言ったレオがおずおずと頷く。そばかすのある頬を僅かに赤くして。

「リフに、つけて欲しいなって思ってさ。これでも頑張って作ったんだぞ」
「そっか」

 なんだかくすぐったくて笑う。少量を取ってつけてみると、シトラス系とは違う爽やかさと清涼感が広がる。悪くない感じだ。

「俺、ここで頑張ってみる。ルカさんにいつか一人前って認めてもらえるようになってみせる。そうしたら、俺がリフの香水を作るんだ。つけて、くれるか?」
「勿論!」

 オレンジの髪をくしゃくしゃと撫でる。今からその日が楽しみで、思わず頬が緩む。レオの作った香水が、動くとフワフワと香った。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました

水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。 新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。 それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。 「お前は俺の運命の番だ」 彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。 不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!

めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。 目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。 二度と同じ運命はたどりたくない。 家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。 だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。

処理中です...