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13章:君が欲しいと言える喜び
おまけ1:報告
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ファウストに食事を作り、薬を飲ませた。長くまっとうに食事をしていなかったことから心配したが、しっかり完食してしまった。そして逞しくも直ぐに寝入った。よほど疲れたのかもしれない。
同時にあの人は精神面が安定すれば何も恐れる事はないのではないかと思う。安心して寝入った顔を思いだし、ランバートは笑みを浮かべた。
その足で、ランバートはアシュレーの部屋へと向かった。そこには案の定師団長が勢揃いだ。
「ランバート、ファウスト様は?」
心配そうなウェインが問いかけてくる。それに、緩く笑って頷いた。
「食事も完食して、薬も飲んで眠りました。もう心配ないと思います」
「よかったぁ」
心底安心したという様子の人に、ランバートは心から笑う。
「その様子なら、丸く収まったな」
「はい。本当に、お手数をかけました」
「構わない。だが、まさか一週間も粘るとは思わなかった。もう少し早く陥落すると思ったんだが」
アシュレーは苦笑している。これにはランバートも苦笑が漏れた。
アシュレーとの一週間は気が紛れたが、やはり違った。というか、疲れた。なんだかんだで遊ばれた。不意打ちで耳に息を吹き込まれたり、恥ずかしい事を言われたり。その度に反応するのが腹立たしくもあった。
だが、この人なりに気を紛らわせてくれたのだと思うと文句もない。こんな痴話喧嘩のようなものに付き合ってくれたのだから。
「お、よかったな」
「ふふっ、本当に。ファウスト様はどのように口説かれたのでしょうか」
とても楽しそうにオリヴァーが言う。けれどその言葉に、ランバートは体がカッと熱くなる。思いだしたのだ、色々と。
真っ直ぐに見つめて言われた「愛している」という言葉や、「抱きたい」と言われた言葉。あの鋭さのある瞳に見つめられると、どうにも心臓が煩くなる。
カッと顔が熱くなる。同時にとても恥ずかしくて、言葉が継げなくなる。そのうちに顔を見せる事もできなくなって、片手で隠すけれど意味があまりない。
「あらあら、これはまた愛らしい」
「思いっきり惚気だね」
オリヴァーとウルバスに微笑ましい表情で言われると余計にいたたまれなくて、ランバートは逃げたい気持ちで一杯だった。
「さて、これで一つ懸案事項が解決した。ランバート、あの方のケアを任せる」
「あぁ、はい」
「ケアと言いますか……人身御供?」
「その言い方は止めて下さい」
生け贄にされたような気分だ。
「それにしても、いいなー。恋人ができるって、やっぱりこの世の春なんだろうなぁ」
うっとりとウェインが言う。ランバートとオリヴァーの視線が、自然とアシュレーへと向かった。
「なんだ?」
「いえ、なんでも」
「ふふっ、こっちも本当に困ったさんです」
アシュレーと時間を共にしていると、ふと気づいたのだ。視線がウェインに向かう回数が多い。妙に構いたがる。しかも一番嫌がる子供扱いで。拗ねたように怒る顔を見て楽しげにしたり、それでもご機嫌を取れるツボを知っていたり。だからこそ、分かったのだ。
「どうしたの?」
「いいえ、何でもありません」
この恋は実るのか? とも思うが、とりあえずアシュレーは今が楽しそうだし、ウェインは全く気づいていないので問題なしとした。
「ねぇ、二人でどこか行かないの? 恋人になったならさ、旅行とか行きたいでしょ」
「ファウスト様の誕生日って、確か十月だったね。二人で過ごさないのかい?」
「あ……」
正直その辺をあまり考えていない。とりあえず気持ちを伝えて、受け入れられた事に満足してしまった。
そしてハタと気づく。ランバートは、お付き合いの仕方がわからない。
「おや、どうしました?」
「あの……お付き合いとか、その……デートって、どうしたらいいのでしょうか?」
「「……は?」」
師団長一同、固まりました。
ランバートは素直に、今まで本気のお付き合いをしたことがないこと。先の事などノープランである事を伝えた。何か特別にしなければならないのかと頭を巡らせるが、よく分からないままだ。
「お前、二十歳の初恋は遅すぎるだろう」
「ファウスト様だってそうだ。今年で二十七だから、遅すぎるな」
「初々しいのですね。甘酸っぱいお付き合い、もどかしい感じがたまりませんね」
「オリヴァー、また病気出てるよ」
そんな風にからかわれるが、反論のしようもない。すっかりしょげた。
「あまり、特別なんて意識しなくていいんじゃないのかな?」
ウルバスがはにかみながらそんな事を言う。頼りなく見れば、彼も小さく頷いてくれる。
「一緒に食事したり、同じ時間を過ごしたり。今まで通りでいいと思うんだ。たまには特別に旅行に行ったり、いいレストランで食事なんてのもいいけれど」
「それでいいんでしょうか?」
「後はまぁ、夜の勝負だな」
グリフィスの一言が、またランバートを焦らせた。ただこっちは実際問題があって、時間の猶予もない。
冷や汗が出る。サラッと、遠出がしたいと言われた。多分あの口振りだと旅行だろう。近場で行く気なんだ。あまり気にもせず、それを受けてしまった。
あの人の体力って、どのくらいだろう。保つのか?
「あ? どうした?」
青い顔をしてワナワナしているランバートを全員が見る。その目の前で少し泣きそうになりながら、ランバートは頭を下げた。
「グリフィス様、俺に体力トレーニングつけてください。ファウスト様が復活するまでにお願いします」
「あぁ……おう、そうだな。そのくらいしか助けられんか」
「お願いします。本当にお願いします。生死かかってそうです」
「そんなに飢えてたのかあの人!」
随分とギラギラと、飢えた獣のように見たあの視線と色香のある「抱きたい」という言葉に、ランバートはしばし怯えながら時間外トレーニングを重ねる日々を送るのでした。
同時にあの人は精神面が安定すれば何も恐れる事はないのではないかと思う。安心して寝入った顔を思いだし、ランバートは笑みを浮かべた。
その足で、ランバートはアシュレーの部屋へと向かった。そこには案の定師団長が勢揃いだ。
「ランバート、ファウスト様は?」
心配そうなウェインが問いかけてくる。それに、緩く笑って頷いた。
「食事も完食して、薬も飲んで眠りました。もう心配ないと思います」
「よかったぁ」
心底安心したという様子の人に、ランバートは心から笑う。
「その様子なら、丸く収まったな」
「はい。本当に、お手数をかけました」
「構わない。だが、まさか一週間も粘るとは思わなかった。もう少し早く陥落すると思ったんだが」
アシュレーは苦笑している。これにはランバートも苦笑が漏れた。
アシュレーとの一週間は気が紛れたが、やはり違った。というか、疲れた。なんだかんだで遊ばれた。不意打ちで耳に息を吹き込まれたり、恥ずかしい事を言われたり。その度に反応するのが腹立たしくもあった。
だが、この人なりに気を紛らわせてくれたのだと思うと文句もない。こんな痴話喧嘩のようなものに付き合ってくれたのだから。
「お、よかったな」
「ふふっ、本当に。ファウスト様はどのように口説かれたのでしょうか」
とても楽しそうにオリヴァーが言う。けれどその言葉に、ランバートは体がカッと熱くなる。思いだしたのだ、色々と。
真っ直ぐに見つめて言われた「愛している」という言葉や、「抱きたい」と言われた言葉。あの鋭さのある瞳に見つめられると、どうにも心臓が煩くなる。
カッと顔が熱くなる。同時にとても恥ずかしくて、言葉が継げなくなる。そのうちに顔を見せる事もできなくなって、片手で隠すけれど意味があまりない。
「あらあら、これはまた愛らしい」
「思いっきり惚気だね」
オリヴァーとウルバスに微笑ましい表情で言われると余計にいたたまれなくて、ランバートは逃げたい気持ちで一杯だった。
「さて、これで一つ懸案事項が解決した。ランバート、あの方のケアを任せる」
「あぁ、はい」
「ケアと言いますか……人身御供?」
「その言い方は止めて下さい」
生け贄にされたような気分だ。
「それにしても、いいなー。恋人ができるって、やっぱりこの世の春なんだろうなぁ」
うっとりとウェインが言う。ランバートとオリヴァーの視線が、自然とアシュレーへと向かった。
「なんだ?」
「いえ、なんでも」
「ふふっ、こっちも本当に困ったさんです」
アシュレーと時間を共にしていると、ふと気づいたのだ。視線がウェインに向かう回数が多い。妙に構いたがる。しかも一番嫌がる子供扱いで。拗ねたように怒る顔を見て楽しげにしたり、それでもご機嫌を取れるツボを知っていたり。だからこそ、分かったのだ。
「どうしたの?」
「いいえ、何でもありません」
この恋は実るのか? とも思うが、とりあえずアシュレーは今が楽しそうだし、ウェインは全く気づいていないので問題なしとした。
「ねぇ、二人でどこか行かないの? 恋人になったならさ、旅行とか行きたいでしょ」
「ファウスト様の誕生日って、確か十月だったね。二人で過ごさないのかい?」
「あ……」
正直その辺をあまり考えていない。とりあえず気持ちを伝えて、受け入れられた事に満足してしまった。
そしてハタと気づく。ランバートは、お付き合いの仕方がわからない。
「おや、どうしました?」
「あの……お付き合いとか、その……デートって、どうしたらいいのでしょうか?」
「「……は?」」
師団長一同、固まりました。
ランバートは素直に、今まで本気のお付き合いをしたことがないこと。先の事などノープランである事を伝えた。何か特別にしなければならないのかと頭を巡らせるが、よく分からないままだ。
「お前、二十歳の初恋は遅すぎるだろう」
「ファウスト様だってそうだ。今年で二十七だから、遅すぎるな」
「初々しいのですね。甘酸っぱいお付き合い、もどかしい感じがたまりませんね」
「オリヴァー、また病気出てるよ」
そんな風にからかわれるが、反論のしようもない。すっかりしょげた。
「あまり、特別なんて意識しなくていいんじゃないのかな?」
ウルバスがはにかみながらそんな事を言う。頼りなく見れば、彼も小さく頷いてくれる。
「一緒に食事したり、同じ時間を過ごしたり。今まで通りでいいと思うんだ。たまには特別に旅行に行ったり、いいレストランで食事なんてのもいいけれど」
「それでいいんでしょうか?」
「後はまぁ、夜の勝負だな」
グリフィスの一言が、またランバートを焦らせた。ただこっちは実際問題があって、時間の猶予もない。
冷や汗が出る。サラッと、遠出がしたいと言われた。多分あの口振りだと旅行だろう。近場で行く気なんだ。あまり気にもせず、それを受けてしまった。
あの人の体力って、どのくらいだろう。保つのか?
「あ? どうした?」
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