戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん

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第18話 影の会議と姉妹の帰還

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王都・軍本部、戦術局地下会議室──

そこは、帝国軍の歴史において“敗北”が語られることを許された、数少ない場所だった。
かつて戦況が最も悪化した時代にのみ使われた“非公開”の会議室。
今、その静寂の中に、軍の上層部数名が集い、重く沈黙していた。

「……完全に、舐められているな」

最初に言葉を発したのは、オルフェン将軍だった。
硬く握られた拳が、机に置かれた書類の上でわずかに震えている。

「ラル=クローディア……いや、違うな。あの四人。セリナ=エーデルバルト、ミア=ノルド、エリス=グレイア、リーナ。
あいつらは、もはや我々の手には負えん」

苛立ちと、悔しさが滲んだ声。

「あの女たちは、命令では動かん。
 我々が用意した戦場を、ラル=クローディアという“鍵”で開けようとしたが──逆に、こちらの首が締まっただけだ」

一人の将官が、ため息混じりに言った。

「そもそも、ラル=クローディア本人をあのまま放置したのが失敗だった。
奴は既に一線を退いていた。ならば、“排除”すべきだったのではないか?」

その言葉に、会議室の空気が一気に重くなる。

「……待て。その選択肢は危険すぎる」

別の高官が即座に否定する。

「あの四人は、“ラル=クローディアに対する脅威”には過剰に反応を見せる。
軍が直接手を下すなどすれば……間違いなく、全員が敵になる。
個別では制御可能だとしても、“一体化”した今の状態では……最悪、“国家反逆レベル”の暴発を招くぞ」

「……」

しばし、沈黙。

だが、その空白を割るように、オルフェンが低く呟いた。

「……では、我々が“最終手段”として頼るべきは、ヴァルステッド姉妹か」

オルフェン将軍の言葉に、会議室の空気が張り詰める。
その名を出すだけで、場の緊張が増す。それほど、彼女たちは“強すぎる”。

「だが、クロエ=ヴァルステッドは軍規を盾に上層部にも牙を剥く。妹のルナに至っては、何を考えているかすら読めん……」

将官たちが慎重な目配せを交わす中、重厚な扉が静かに開かれた。

「それでも──私たちに頼るしかないという判断を下されたのでしょう?」

クロエ=ヴァルステッドが、漆黒の軍服を纏い、まっすぐな足取りで会議室へと入ってくる。

その背後から、ルナ=ヴァルステッドが柔らかく微笑みながら続く。

「ねえ、将軍さまたち。わたしたちって、そんなに信用されてないの? ちょっと、しょんぼりしちゃうなぁ」

会議室内の視線が、二人に集中する。
だが、クロエはそれに一切動じることなく、整った所作で一礼した。

「作戦概要は把握しております。ラル=クローディア、および随伴する元特務部隊構成員3名と従者1名の再帰属計画──
……妥当な作戦です」

その語調は、協力的で、理知的。
まさに“戦術指揮官”としてのクロエの顔だった。

「ただし、彼らを“脅し”や“利権”で縛るのは、逆効果でしょう。
それが通じる相手なら、とっくに軍に戻ってきています」

「ラルを中心に据えた懐柔策……つまり、“情”を使う作戦よね?」

ルナがにこりと微笑みながら口を挟む。

「だったら、わたしたちが動くのが一番。“ラルのこと”は、誰よりもよく知ってるし──ふふ、今でも彼のこと、ぜ~んぶ覚えてるよ」

「……では、君たちに任せる」

オルフェン将軍は静かに言った。

「軍が直接動けば、警戒を強めるだろう。君たちは民間の立場を装い、接触の機会を作ってくれ。
ラル=クローディアに対しても、だが──あくまで“彼を中心とした周囲”を、切り崩すのが最優先だ」

「了解しました」

クロエが即答する。

「彼の再帰属は、私にとっても……望むところですので」

「うん♪ がんばるよ。お姉ちゃんと二人で、“ラルを取り戻す作戦”──成功させるから、見ててね?」

二人の口調は、終始穏やかで協力的だった。

クロエ=ヴァルステッドとルナ=ヴァルステッド──
最強と名高い姉妹が、再び表舞台に姿を現した。

その微笑は穏やかで、所作は礼儀正しかったが……
その瞳の奥に宿る“何か”が、会議室の空気を凍らせる。

――だが、彼女たちの本当の目的を知る者は、まだいない。
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