特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第03章 -港町アクアポッツォ編-

†第3章† -03.5話-[カエルの孤島ーマリエル視点ー]

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「はいはーい!お待たせ致しました!
 ようこそいらっしゃいました姫様ご一行!」
「マリエル!」

 以前1日だけご一緒しただけだったけど、
 姫様は私の事を覚えていてくださった。

「わぁ!本当に姫様なんですね!
 3年ぶりですねぇ、本当にようこそいらっしゃいました」

 今回は王妃様は一緒ではないと聞いてはいましたが、
 もう1人で視察?と聞いたらおじいちゃんは、
 1人ではなかったよ、視察でもない。
 と答えてくれました。

「今回は視察じゃないと聞いてますが、
 少人数で動くなんて姫様迂闊では?」
「いまは国を回っててね、
 アクアポッツォを抜けると風の国に入る予定なの」
「えっ!?本当に何をしてるんですかっ!?」

 姫様はご自分の立場を本当に理解しているのでしょうか。
 アスペラルダの至宝とも言うべきお宝中のお宝の姫様は、
 どこの悪人も喉から手が出るほど欲しいはずです。
 それを国を回っている?少人数で?
 か弱い姫様にそんな事をさせるなんて、
 王様は何を考えているのでしょうか!

「聞いているんですかっ!?」
「聞こえてるわよ。護衛に頼りになる人がいるから大丈夫よ」
「護衛?そちらのメイドさん?それともそちらのおチビさん?」

 確かにどこか謎めいた雰囲気のあるメイドさんは実は戦えそうだし、
 謎の小さい女の子は多分精霊に属する子なんだと思うけど・・・。
 女の子だけのパーティじゃ不安だわ。しかも3人ぽっちじゃ。

「今はフラゲッタ退治に行ってるわ」

 この2人ではない第3者がいるらしい。
 流石に男性だとは思うけれど。

「・・・護衛って仕事を理解してます?」


 * * * * *
 久々の再開を祝ったあとは村を見て回りたいと言われたので、
 私が案内をする事になりました。やっ↑たぜ!
 何故かメイドさんも離れて森の中へと消えて行きました。
 あの人も従者じゃないのかな?

『せいれいがいるんでしょ~、どこ~?』
「えっと、姫様?どうします?」
「村を廻る時間はあるし、先に行きましょうか」
『わぁーい!ある、ありがと~!』

 謎の精霊は姫様に馴れ馴れしく抱きつき、
 姫様も嬉しそうな笑顔を浮かべています。
 姫様!甘いですよ!

「あ、こら!姫様に軽々しく触らない!」
「大丈夫ですよ、マリエル。
 この娘はお兄さんの契約精霊ですから、
 私の仲間、いえ、家族のようなものです」

 ズガーーーン!!!
 こんな小さな精霊が契約精霊!?
 そのお兄さんとやらが護衛を放棄して蛇退治に行ってる奴ですかっ!?
 それに・・・家族って。
 そこまで言える存在なんですか。

「マリエル?どうしたの?」
「いえ、自分が舞い上がっていたのを自覚しただけです」
「?」
『まりー、どっち~?』
「・・・こちらですよ」

 少し、いやかなりですね。
 姫様の友人という立場に優越感に浸っていたという事ですね。
 高嶺の花に近付く方法が発見されて、
 それを見付けたのが自分じゃない!
 そんな感じの心境です。
 負けた・・・負けました・・・、
 完全にな・・・。

 向かった先には沼で育った水精霊が沢山居り、
 小さい水精霊は真っ直ぐに輪の中に入っていきました。
 人見知りしない精霊ですね。
 よくよく見れば初めて沼の精霊以外を見ました。
 普段は亀や根魚の姿に進化するからあまり気にしませんでしたが、
 あの水精霊って喋るし人型だし、可愛いんですよね。
 ま、まぁ、時々ピンク色で中身が見えている謎の生き物に進化する個体もいるし、負けてないよね!

「アクアちゃんは今日はここにいますか?」
『うん!』
「私達は村を廻りますから、
 暗くなる前にさっきの家に戻ってくださいね」
『あーい!』

 水精霊と別れて今度こそ村の中を案内します。

「喋る精霊なのに子供みたいですね」
「まぁ、お兄さんとも出会って4ヶ月くらいですし、
 まだ1回しか進化してませんから・・・。
 あれ?浮遊精霊から加階してから進化なら2回かな?」
「へぇ・・・そうなんですね」

 出会って4ヶ月で浮遊精霊が2回も進化するわけないじゃないですかっ!
 騙されてますよ姫様っ!
 どんな言葉で騙したかは知りませんが、
 あんなお子ちゃま精霊が戦えるわけないでしょう!
 気づいて姫様っ!
 あの無邪気な笑顔を思い出してください!


 * * * * *
 その後も事ある事に姫様の口からは、
 お兄さんの単語が飛び出してきました。

 野菜農園を案内した時も。

「ここが私達が栽培している野菜農園になります」
「結構な広さですね」
「毎日食べますから。
 ここだけでなく他にいくつかありますよ。
 流石に私達だけでは苦労が多すぎるので、
 水精霊に手伝って貰うこともありますよ」

 すれ違う村の女性達に姫様の案内をしている事を説明している間に、
 姫様は農園の一部を眺めていました。

「どうしましたか?」
「これってなんていう野菜ですか?」

 指を差されていたのは、
 野草の1種でした。
 育ちが早いので種さえ確保しておけば、
 1ヶ月で食べられる野草です。

「これはハーフパススという野草ですね。
 葉っぱが程々に大きいので食卓の1品を増やすのに一役買います。
 元々はパススというもっと大きな野草だったんですけど、
 受粉の時に何かが混ざって小さい種が出来たんです」
「へぇ、ここでも栽培してるなら、
 やっぱり安全なんですね」
「食べた事があるのですか?
 野草ですよ?」
「最近朝食にお兄さんが出してましたから。
 パンに挟むとシャキシャキしてて美味しかったんです」

 野草を姫様に?
 怒りを通り越して呆れに近い感情に支配されましたが、
 想像したら結構美味しそうだったのが悔しい。
 今度食べてみよ。

 他にも夕御飯をどうするかとおじいちゃんに聞かれた時も。

「数日お世話になると思いますから、
 あまり負担は掛けたくありませんし、
 今回はあくまで寄り道に近いですから、
 普段食べている物をお願いします」
「わかりました、娘には伝えておきますぞ・・・」
「ちょ、いいんですか、おじいちゃん!?」
「うむ。
 先程ムコ殿の所へ案内に出していたタユタナが戻ってな、
 水無月さんというのじゃが儂らの食生活に理解があるそうじゃ」
「お兄さんが言うなら何の問題もありませんね」
「姫様ぁ~・・・」

 お兄さんとやらを基準に物を決めないで下さいよぉ!
 私達の食生活には姫様が食べ物の認識が出来ない物があるんです!
 流石にヤバいんですよぉ!!


 * * * * *
『ある~、ますたーがそろそろ戻るって~』
「あら、もう6匹討伐したんですか?」

 ・・・冗談でしょ?

『うんう、2ひきたおしたけどおもってたのとちがうって』
「姫様の護衛が帰ってくるんですか?」

 確か到着は昼頃で、
 そのあと1人別れてタユタナさんと行ったんでしたか?

「本当に1人でフラゲッタを相手に戦ってるんですね」
『ひとりじゃなくてふたりだよ~!』
「あぁ、クーちゃん・・・でしたか?
 それでも、パーティじゃないのにもう2匹とは凄いですね」

 本当だったらね!

「そうなの?」
「フラゲッタは弱点らしい弱点もなくて、
 魔法も初級しか持っていない場合はかなり苦戦するんです。
 剣も皮で受け止められるから、打撃武器か、
 もしくは中級以上の攻撃魔法がないと厳しいんですよ」

 だからパーティでも苦戦するし、
 半日程度で2匹というのは俄に信じられませんね。
 余程、契約精霊がすごいんですね!

「とりあえず、晩御飯は一緒に食べられそうですね」
「・・・姫様、本当にいいんですか?」
「もう!何度目も言ってるけど、
 今回は王族としてではなく、
 ただの客人として来ているんだから、
 普段の物を頂くのは当然でしょ」
『すききらいはだめなの~』
「そういうことでは・・・」

 ないんですよぉ~!!!
 好き嫌いとは普通の食材の話であって、
 私達のそれは世間一般的には普通じゃないんですぅ~!

 出迎えに村の入口まで行くと水精霊の娘が言い出したので、
 姫様も行く事になりました。
 当然、一目噂のお兄さんとやらの査定をしようと私も付いていきますよ、行く行く。

『おかえり~』
「ただいまアクア」
『ただいま戻りました』

 どうやら水精霊が抱き着いた男性が噂のお兄さんのようですね。
 肩に乗っている小さな猫が契約精霊でしょうか?
 小さいのにすごい力を秘めているんですね、わかります。

「おかえりなさい、お兄さん。
 予想よりお早いおかえりですね」
「ただいま、アルシェ。
 いやぁ、予想以上に敵が弱いのとクーの資質がね」
「まぁ、晩御飯もそろそろ出来ますし、
 その時にでも話してくださいよ」
「わかった。
 で、そちらの娘は?」

 おっと、初顔合わせですねお兄さん(怒)!
 私は貴方を認めていませんからね!
 知識があろうと理解があろうと、
 姫様の友人として見極めさせてもらいますよ!

「彼女が前に話した幼馴染のマリエルです」
「カエル妖精のマリエルです。
 村長の孫にあたりますが姫様と同い年なので敬語などはいりません」
「ん、よろしくマリエル。
 俺は水無月宗八、この娘がクーデルカだ」
『よろしくお願いします』
「こ、こちらこそよろしくお願いします」

 団体行動も出来ないし、
 姫様の護衛もすっぽかすので、
 自分勝手な奴だと思っていたんですけど、
 意外と人当たりの良い人柄に少し拍子抜けしました。


 * * * * *
「水無月さん、昆虫食に理解があると聞いてますが?」
「食べる機会は少ないけどね。
 一応、知識としては色んな物があると知ってはいるよ」
「姫様はそこを理解していません」

 だから、止めてね。
 私達じゃ聞いてもらえないから。
 護衛ならわかりますよね?姫様に虫はダメだって。

「え?アルシェがいるならそこは避けるんじゃないのか?」
「いえ、姫様は普段の食事を御所望されました」

 頭を抱えてる。
 そこは理解しているみたいですこし安心した。
 元はと言えば貴方が理解を示したからなんですから、
 責任を取ってくださいよ!
 そのまま、姫様を止める方向でお願いします!

「まずいですよね?
 あ、味は美味しいですよ!」
「いやわかってるから。
 状況がってことでしょ?」

 顎に手をやり、何やら思案顔をしたあと、
 落ち着き払った顔で言い放つ。

「行ってから決めようか」
「水無月さん・・・」

 ダメだこいつ、早くなんとかしないと。

「大丈夫だよ、いざとなれば目隠しをして食べさせればいいから」
「私は水無月さんと姫様の関係を護衛としてしか聞いてませんが、
 そんな適当で大丈夫なんですか?
 この村でも姫様とは別行動だったようですし」
「危険が迫っても何も出来ずにって事にはならないし、
 アルシェに対処出来ない敵が出た場合は俺に連絡してくるから。
 今回の訪問について何か聞いてる?」
「王族としてではなく、
 アルカンシェとして来ていると」

 確かに姫様は聡明で優しいお方ですけど、
 それが通じるわけないでしょうがっ!
 何事にも例外はありますが、
 姫様に虫は有り得ない!

「じゃあそれが答えだよ。
 実際は君に会いたかったってのもあるんだよ」




「え?」トゥンク




「話には聞いてたからね。
 訪問出来そうであれば遊びに行こうと話してたんだよ」
「そ、そうなんですね。
 ま、まぁ、今は晩御飯もありますし、
 話はここまでとしましょう」

 嬉しい!姫様は私に会うために島を渡ってきてくれたんですね!
 はぁ~友人としてこれほど嬉しい事はありませんよ!
 3年ぶりに近くに寄ったから会いたいだなんて!

 問題の夕食は姫様のメイドさんが虫を選定し、
 殻を剥いたりして食べるタイプを剥いてから姫様に渡していました。
 もちろん、直接吸い出したりする物はさり気なく姫様の死角に移して。
 その吸うタイプの虫は水精霊ちゃんがガツガツ食べていましたが・・・。


 * * * * *
 ドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 そして、夜はこれである。

「きゃー!姫様ぁーーーー!!」
「いや、良く見ろ。
 回避し続けているぞ」
「私には早すぎて分からないけど、
 ちょっとフラフラしてきたわ」

 お母さん!
 それストレスで足が震えてるからだよ!
 姫様に何かあったら私どうなるの!?

「あ、武器を出しましたよ!
 あれは槍ですかね?巧みに操って弾き飛ばしてますよ!」
「あれはかなり訓練したのだろうな」

 ベイカー町長もなんで普通に観戦してるの!?
 あと、お父さんは解説者みたいな立ち位置辞めて!

「ウルミナ。
 気配で水無月さんの位置はわかるか?」
「さっきから探ってはいるんだけどね、
 ずっと移動してるから掴めないわ」
「私には全く分からないんですが、
 速度はどのくらいですか?」
「あっちに移動したと思ったら、
 あちらから足音がするってのが、
 この広場の周りで起こってますよ」

 指差しながら説明をするお父さんと同意見で、
 本当に位置の特定が出来ない。
 なのに姫様への氷の塊攻撃は、
 姫様を狙って撃たれ続けている。
 あの太さなら少し動けば避けられると思いますが、
 自分と同程度の長さの氷の塊に狙われるなんて恐ろし過ぎです。

「・・・姫様綺麗だね」

 お母さんの言葉が耳に残る。
 確かに避けたり弾いたりする姫様の動きは、
 踊っているかのような魅力があった。
 その芸術的な動きも数分経つと精細を欠き始め、
 槍はいつの間にか消えて、
 回避のみの動きに変わっていた。

 チラリとメイドさんに目を向けてみると、
 真剣な眼差しで姫様を見ていました。
 その目は何を考えているのかわかりませんでしたが、
 何か大事な事を想っている・・・。
 そう、感じました。

「《シャドーバインド》」

 詠唱が耳元で聞こえ、
 ハッとした時には、
 姫様は影から出てきた手のような何かに動きを抑え込まれていました。
 その直後に・・・

「ギブアップです!」

 姫様がギブアップと言った途端、
 そこら中に刺さった氷の塊は水へと変わり、
 空に出現して今まさに姫様を穿とうとした氷も水へと変わり、
 姫様は頭から水浸しになってしまいました。

「姫様ぁーーーー!!」
「ウルミナ、風呂の準備を」
「すぐに取り掛かるわ。
 ほら、マリエル!手伝って頂戴!」

 そのままお母さんに手を引かれて、
 私は家の中に連れていかれました。
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